映画『ちはやふる 下の句』〜前編を忘れないうちにどうぞ〜

 

競技かるたを題材にした『ちはやふる 上の句』から1ヶ月後に公開された『ちはやふる 下の句』を鑑賞しました。

小泉徳弘監督、広瀬すず、野村周平、真剣佑らが出演。

 

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都大会を突破した瑞沢高校かるた部は全国大会へ向かいます。その一方で千早(広瀬すず)、太一(野村周平)の幼なじみである新(真剣佑)は、かるたを辞めると宣言。かるたクイーン(女子個人戦日本一)の詩暢(松岡茉優)を絡めながら競技者たちの個人にフォーカスする描写が多くなっていきました。

 

回想シーンはありません

 

前編からの引き継ぎですが、本編は『上の句』を観ていることが大前提になります。
前編の回想シーンはほぼなく、その分『下の句』自体のエピソードに時間を割いています。

 

これから観ようと考えている方は『上の句』から連続して『下の句』を観ていただけるとより楽しめるかと思います。
『上の句』の熱量と真っ直ぐさを保ったまま、絆の強くなった瑞沢かるた部を描いています。

 

 

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▲かるたを辞めると言う新に会おうと福井まで来た太一と千早。往復新幹線で日帰りとはなかなかリッチ。 (C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 

『ちはやふる 結び』への繋ぎの部分も含めつつ、基本的には前後編で一作を完結。前編の鮮烈な印象に比べるとやや劣るものの、こちらも素晴らしい作品でした。

 

 

それでは、『ちはやふる 下の句』の感想を綴っていきます。
ネタバレが多くなりますので未見の方はご注意ください!

 

太一、成長したなぁ……(涙)

 

クイーン・詩暢に対して頭がいっぱいになり、一人で抱え込んでしまう千早にスポットが当たりがちですが、実はこの作品は太一の成長を描いた映画だと思います。

 

太一は前編でも才能と結果の面で悩んでいましたが、後編でも自らの実力、新との差について悩み、苦しみます。
千早が信頼してやまない新は、太一にとってとても複雑な存在で、尊敬とか嫉妬とか千早への恋心とか地理的な距離とか家の境遇とか、色んなことが渦巻いているのがよくわかりました。

 

 

好きだけども、超えなければいけない存在とでも言いましょうか。自分のためにも、千早のためにも、かるたを辞めると言った新のためにも。

 

恋のライバルだなんてそんな簡単な関係ではないんですよね。新と太一の関係って。

新に電話してアドバイスをもらい、それを実行して大会を優勝した太一の描写は『下の句』のメインストーリーだと思います。新にうまくいかない時の策を乞うのはプライドの面でも簡単ではなかったと思いますが。

 

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▲新を訪ね、「待ってるから」と伝える太一。 (C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

『上の句』でかるたにしっかりと向き合った太一は、『下の句』で自らに目標を課し、遂行します。詩暢のことで頭がいっぱいの千早を一旦突き放したのも、部長としての責任感によるものでしょう。

 

千早を再び瑞沢に迎え入れ、新の心に再び火をつけたのはやはり太一の成長ぶりだったと思います。

 

肉まんくんと机くんが泣かせる

 

そんな太一を取り巻く周囲の描写も、前編に引き続き秀逸でした。

千早を説得した原田先生(國村隼)は相変わらず柔らかく諭す口調。こんな恩師がいたら楽しいだろうなぁ。この作品では太一を「まつげくん」、新を「めがねくん」と呼ぶことが多かったですが、『上の句』でもそうでしたかね?

 

 

キャラクターの家族がほとんど出てこない作品の中で、原田先生は大切な「大人の目線」となっていました。この点ではかるた部顧問の宮内先生(松田美由紀)も同様。吹奏楽部との部室の一件も含め、宮内先生がどんどんかるた部を好きになっていくのが見えて良かったです。

 

 

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▲大人があまり登場しない作品において原田先生と宮内先生の2人は大切なキーパーソンでした。 (C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 

かるた部員の台詞にも泣かされました。
まず「肉まんくん」こと西田(矢本悠馬)。
千早が出て行き、一人で重圧を背負おうとした太一にかけた言葉は鳥肌が立ちました。
お前一人で背追い込むなよ、最後まで言わせんなよ。
一見乱暴に聞こえながらも、人間味に満ちてますね。奏(上白石萌音)、駒野(森永悠希)のサポートも完璧。太一は涙を堪えるように微笑みました。あのワンシーンで太一はまた一つ大きくなった気がします。

 

「机くん」の駒野は、前編で亀裂の原因となった「捨て駒」としての役割をも受け入れ、人間的に大きく成長。もちろん実力面でも飛躍し、全国大会では待望の一勝を挙げます。

 

「瑞沢一勝ッ!!!」

 

言ってみたかったんだよね、とはにかむ机くん。本当に良かった。主人公以外のキャラクターにもきちんと気持ちを込めた脚本は実に心地良いです。

自分が強くなっていく実感。自分たちの居場所が日を追うごとに色濃くなっていく実感。何かに打ち込み、目指すべき実力上位者が存在する組織に属した人は奏と駒野に共感できることも多いのではないでしょうか。

 

 

『上の句』で瑞沢と激闘を繰り広げた北央の須藤(清水尋也)も、今度は瑞沢の背中を押す存在として登場しました。

口は悪いながらも千早や瑞沢かるた部の実力を認める須藤。千早を再びチーム競技者の心理に押し戻します。

かるたに使うのが適当かはわかりませんが、これもスポーツマンシップですよね。完結編を含めて須藤はすごく魅力的なキャラクターでした。副将のヒョロ(坂口涼太郎)の小者感もまた須藤の良さを引き立たせています(ヒョロごめんなさい!)。

 

 

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▲前編で瑞沢と激闘を繰り広げた、須藤たち北央のメンバー (C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 

詩暢と千早の共通点って?

 

最後に「クイーン」を演じた松岡茉優についてです。『下の句』の見どころの一つとなっているかるたクイーン・詩暢。

千早を圧倒し、夢中にさせるほどの存在感でありながら、「スノー丸」に目の色を変えるツンデレぶりです。Tシャツを緑のジャージにインして、バッグを斜めがけする絶妙なダサさ。この作品の約1年半後に公開された『勝手にふるえてろ』で、松岡が演じたヨシカにも通じるところがあります。

 

はんなり口調に滲むプライド、左利きがゆえの札配置、「しのぶれど」の得意札、かるたへの執着。

孤高のクイーンを表現するには絶好の条件が揃いながらも、前述のダサさとスノー丸への執着が詩暢を微妙なポジションに位置付けました。

 

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▲シャツインが実にシュールな詩暢ちゃん (C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 

目標が自分の成長を後押しすると言いますが、新を見て太一が、詩暢が、詩暢を見て千早が、そしてまた千早と太一を見て新が、回り道をしながら自分の殻を破っていきました。

 

『下の句』では瑞沢かるた部の躍進よりも、主要キャラクターが新しい世界を見つける方に重点が置かれています。

その上で「個人戦」「団体戦」、「かるたは一人でできる競技か」という部分が描かれて、瑞沢かるた部もまた成長が融合されているチームなんだなと再確認できました。

 

かるた部をつくろう!一緒にやろう!

そんなコンセプトがぶれなかった『上の句』と比べるとテーマがあちこちに転がった印象こそありますが、『ちはやふる 結び』を観る前に絶対に観てほしい一本。
千早と詩暢の対決は、やはり相当見応えがありました。

何より、もっと瑞沢かるた部が、この作品の世界が大好きになりました。ありがとうございます。

★★★★☆。

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