こんにちは。織田です。
今回は2020年公開の映画『事故物件 恐い間取り』についてご紹介します。
監督はホラー映画の巨匠・中田秀夫監督。
『事故物件 恐い間取り』は怖さに振り切ったというよりも、中田監督が「恐ポップ」と名付けたエンターテインメント性が売りの映画です。
実際に僕が鑑賞した際は結構お客さんが入っていたんですが、皆さんマスクをしながら結構笑っていました。
横で見ていたカップルのお二方は「クロちゃんだ!」とか「出たこれ」とか反応しながら笑って観ていましたし、ゾクゾクっと鳥肌が立つ映画というよりは映画館という場所でエンタメを享受、共有できる作品だと思います。
この記事では映画の感想とともに、事故物件とはなんなのか、また主人公のヤマメが住んだ物件付近の家賃相場(2020年9月時点)などを紹介していきます。
予告編
あらすじ紹介
売れない芸人・山野ヤマメは「テレビに出してやるから事故物件に住んでみろ」と先輩から無茶ぶりされ、テレビ出演と家賃の安さから殺人事件が起きた物件に引っ越す。その部屋は一見普通の部屋だったが、部屋を撮影した映像には謎の白いものが映り込み、音声が乱れるなどといった現象が起こった。ヤマメの出演した番組は盛り上がり、ヤマメは新たなネタを求めて事故物件を転々とする。住む部屋、住む部屋でさまざまな怪奇現象に遭遇したヤマメは「事故物件住みます芸人」として大ブレークするが……。
舞台は大阪。関西弁を操る亀梨さんは新鮮でした!
あらすじについてはMIHOシネマさんの記事でもネタバレなしでご紹介されています。合わせて観たい作品なども紹介されているので是非ご覧ください!
『事故物件 恐い間取り』のスタッフ、キャスト
監督 | 中田秀夫 |
原作 | 松原タニシ |
脚本 | ブラジリィー・アン・山田 |
山野ヤマメ | 亀梨和也 |
小坂梓 | 奈緒 |
中井大佐 | 瀬戸康史 |
横水(渋澤不動産) | 江口のりこ |
松尾P(京阪テレビ) | 木下ほうか |
下中裕美(AP) | 真魚 |
カオリ(メイク担当) | MEGUMI |
肉戦車 | 加藤諒、坂口涼太郎 |
伊崎努 | 高田純次 |
オリジナルは事故物件住みます芸人の松原タニシさん。
事故物件住みます芸人・松原タニシがいわくつきの部屋を大公開 漫画家・清野とおるが聞いた衝撃の体験とは?
こちらの記事が結構面白いので時間のある方は読んでみてくださいね。
中田監督のホラーでは個人的に『クロユリ団地』が好きでした。
成宮寛貴さん、前田敦子さんが主演した、団地を舞台にしたホラー作品です。
この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。
映画のネタバレ感想
以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
ヒットの要因「話題性」
昨今の情勢で映画館への客足も鈍っているという状況でしたが、本作『事故物件 恐い間取り』は世間の注目を集める作品になっています。
大ヒットといっていいです。
一人暮らし用の物件という、実体験に置き換えやすい舞台と「事故物件」という言葉の持つ強さ。
それに加えて、「怖くないホラー」という側面や特徴的なシーンが観る人のツッコミを呼び、話題にしたくなる映画になっています。
/
話題沸騰💥
事故物件、劇中のあるシーンで
“たすけて…”と聞こえる説🙉
\その声は #中田秀夫 監督も
入れた覚えが無いのだとか…!😱
住人の皆様にお聞きします。
あなたはその声、聞こえましたか?
#事故物件恐い間取り
恐異の大ヒット上映中🏚— 映画『事故物件 恐い間取り』公式 (@jikobukken2020) September 15, 2020
特に話題となっているのは、ヤマメ(亀梨和也)がサイン会を行うシーンで“声”が聞こえるというもの。
Twitterの口コミから話題になり、公式が「えっ…知らんよ…?」と反応する、話題性を獲得する上では最高の形になっています。
僕が『事故物件 恐い間取り』を観たときはまだこのツイートが出る前で、僕自身も特にそのシーンで気づくことはなかったんですけど、これが話題になって以降の映画館では、恐らくあのシーンで観客の皆さんが揃って耳をそばだてていることだと思います。
決め台詞があるドラマもそうですが、「このシーンが注目!」とあらかじめわかっている映画は強い。
「見たよー!」
「あのシーン聞こえた?」
「聞こえた!!」
これだけで会話が成立しますし、この映画を観る「目的」が一つお客さんの中にできることになります。
映画だけに限りませんが、分野に詳しい人の中では「語る」という行為が行われる一方で、それ以外の人たちにとって「語る」というのはいささかハードルが高い作業になります。
あの映画見た?どこが良かった?と聞かれて、あらすじなどを踏まえながら説明するのって結構難しいですよね。僕はなかなかできない。
でも「このシーン」「あの誰々」のように指定した文脈を絞ることで「語る」ことのハードルが下がりますし、共有も簡単になります。
これは柴田理恵が注目を集めた『来る』にも似ているんですが、「この映画、ここの〇〇が凄いから見て!」という話題性の獲得は現代のコンテンツにおいて理想的なものだと思います。
『来る』は除霊エンタメとしても本作と通じ合うところがありますので是非合わせて観たい作品ですね。
『来る』の柴田理恵や霊媒師のおじ様方にあたる本作品の目玉役者だと、渋澤不動産の事故物件担当員・横水を演じた江口のりこと、宮司の高田純次でしょう。
事故物件とは何か
次に事故物件の定義について見ていきます。
本作『事故物件 恐い間取り』では「物件の前の住人が特殊な亡くなり方をした」事例を出しています。いわゆる心理的瑕疵(しんりてきかし)という単語も出てきましたね。
「瑕疵」とは欠陥という意味で、雨漏りやシロアリなどの問題を抱えた物件も「物理的瑕疵」といって貸主は説明する義務を負っています。ただその告知義務というのは線引きが曖昧で、映画内で横水さん(江口のりこ)が言っているように、事故物件に誰かが住んだ(映画の場合ではヤマメ)後は告知しなくていいと主張するケースもあります。
- 殺人事件や自殺の現場となった物件(心理的瑕疵)
- 付近にゴミ処理場や暴力団の事務所、お墓など、嫌悪される施設がある(心理的瑕疵)
- シロアリ、雨漏りなど建物に支障をきたす問題がある(物理的瑕疵)
今回ヤマメ(亀梨和也)が住んでいたのは最初の「殺人/自殺の現場となった物件」ですね。
賃貸物件を探すサイトなどで「心理的瑕疵」と入力すると、心理的瑕疵物件であることを明記した物件がいくつか出てきますので実際に探してみるのも良いかもしれません。
また検索していたら、「成仏不動産」という心理的瑕疵物件を専門に取り扱った不動産屋さんもありました。
もちろん物件自体の築年数や広さ、駅からの距離などにもよりますが、エリア内の他の部屋より安く設定されている場合がほとんどですね。
「大島てる」と「心霊不動産」
事故物件の映画と聞いて、僕がまず思い浮かべたのは事故物件の情報を提供しているサイト「大島てる」さんです。
過去に事件や死亡が起こった物件を結構古いものまで掲載しているため、「事故物件を探す」というよりは「この近くで何か事件があったのか」を調べるのに有効な気もします。
映画本編では「事故物件公示サイト 心霊不動産」なるものが出てきますが、間違いなく大島てるに寄せたものですね。
実際にYouTubeなどで大島さんが本作に関連して「事故物件の見分け方」を説明されているので興味のある方はそちらもどうぞ。
ちなみに事故物件や、その土地で起きた地縁の怨恨によるテーマは『残穢』という映画が詳しいですね。ホラーというより解説の要素が強いのでこちらも合わせてご覧になると面白いかもしれません。
ヤマメが住んだ物件の相場は?
映画の中でヤマメ(亀梨)は4つの事故物件に入居します。
映画公式サイトや映画のチラシにも大阪の物件は記載されているので挙げてみました。
なお区の後ろの町名は架空のものです。実際にはありません。
- フォンテーヌ淀川 405号室(大阪市淀川区黒川)
- カインドコート 314号室(大阪市此花区高石)
- ノーブル鶴橋 202号室(大阪市生野区里井)
- あおば荘(千葉県北稲毛)
※稲毛というのは千葉市稲毛区のあたりですが、「千葉の北稲毛」としか言われていなかったので明言を避けます。ちなみに北稲毛という町名はありません。
映画で登場した物件付近と思われる地域の相場を見ていきましょう。※家賃相場は2020年9月時点のものです。
フォンテーヌ淀川
一つ目の部屋。亀梨ヤマメが「事故物件、初日の夜です」と配信したあの部屋です。
こちらと2軒目の物件は間取り図が予告編に出てくるので家賃や最寄り駅も確認できました。
フォンテーヌ淀川はワンルーム。とはいえかなり広々としており、約45平米。クローゼットも大きかったですね!
家賃は45,000円。東西線(実在の路線)東加島駅徒歩11分だそうです。築年は平成6年(1994年)なので築26年といったところでしょうか。
東加島という駅は架空ですので、淀川区の加島駅周辺の条件が似た物件を検索してみました。
最安は52,000円。高いものだと10万円。平均的な相場は7〜8万円といったところでした。
4万5000円というところを考えると、フォンテーヌ淀川はかなり安い心理的瑕疵物件ということになります。
カインドコート
続いては大阪市此花区の「カインドコート」。こちらは昭和62年築の物件なので33年ほどが経過しています。
映画でもヤマメが階段を上って荷物を運び入れており、エレベーターはなさそうですね。
2DK。和室8畳+洋室6帖+ダイニングキッチン9.5帖の3部屋ですね。こちらも広さは50平米弱。
家賃は破格の26,000円。Instagramの映画公式アカウントの投稿にあった間取り図の静止画によると、なんば線(実在の路線)伝法橋駅徒歩9分。実際のなんば線は「伝法駅」と「千鳥橋駅」が隣同士にありますのでこのあたりのイメージと思われます。
こちらは伝法と千鳥橋周辺の物件を検索してみましたが、安い物件で5万5000円、高いもので10万円という感じでした。平均的な相場は築年の古いもので見ると7万円弱くらいでしょうか。
「カインドコート」は超絶価格破壊といっていいですが、排水溝や浴室の様子、血染めになった畳などを見ているとリフォームする気も無いようです。ここはいくら安くてもちょっと厳しいなというのが個人的な印象。階段とかもなんか薄暗くて怖かったですよね…。
ノーブル鶴橋
3軒目は居住していた男性がロフトのはしごで首吊り自殺をした「ノーブル鶴橋」。
こちらについては物件情報を確認できなかったので間取りと、住所などから想定される最寄り駅をイメージして調べてみました。
間取りとしては洋室(10帖)+ロフト4帖。前の二部屋と比べると広さはそこまで無いのですが、鶴橋駅周辺の物件を同じぐらいの間取りで検索してみると6〜7万円が主流といった感じです。
あおば荘
最後は千葉・北稲毛の「あおば荘」。こちらは10万円ほどの都内一等地の事故物件に尻込みしたヤマメに、渋澤不動産・横水が自信を持って勧めた伝家の宝刀的な物件です。
北稲毛という地名は無いとお伝えしましたが、東京へ出てきたヤマメが上野駅へ行き、伊崎(高田純次)と遭遇していることを考えると、彼は上野から京成線を使って千葉のあおば荘へ移動したと考えられます。
実際の千葉市稲毛区にある京成線の駅は、京成千葉線の京成稲毛駅とみどり台駅。京成の上野駅から向かうと、津田沼で乗り換える必要がありますね。所要時間は1時間ちょっと。
ヤマメが入居した「あおば荘」の間取りは和室8畳、洋室8帖、DK12帖でした。これも50平米近くありそうです。
京成稲毛とみどり台の付近で同じくらいの広さの部屋を探してみると、高い部屋は11万円、安い部屋だと5万円でした。平均相場はこの広さだと7万円弱といったところですね。
ちなみにあおば荘では梓(奈緒)がヤマメを助けに部屋の中へ突入してきましたが、鍵開いてないのにどこから入ってきたんですかね。地味に怖いシーンでした。
心理的瑕疵物件を内見したお話
最後にすごく個人的な話です。
4年ほど前に、僕は事故物件と言われる物件を内見したことがあります。
ヤマメのように事故物件に住みたい、という理由ではなく、不動産屋さんに(リフォームでもいいから)綺麗で広くて、その中で賃料が安ければいいなという話をしていたところ、「これは心理的瑕疵つきの物件ですが」と部屋を紹介してくれました。
心理的瑕疵の理由については聞かなかったのでその部屋で何が起きたのかはわかりません。ただ、同じ建物の別の部屋と比べて家賃が3万円(4割ほど)安かったことを覚えています。実際に内見に訪れても「カインドコート」のように不自然な感じがすることも特になく、普通の部屋でした。
まあ安かったんですけど、駅から遠かったので契約することはありませんでしたが。
今となってわかりますが、事故物件であることを公表しているので信頼できる不動産屋さんです。
その不動産屋さんのお兄さんは「事故物件」についての簡単な定義を横水さんのように教えてくれましたし、「僕だったら条件が合えば住みますよ!だって安いじゃないですか?」とあっさりしたものでした。
あのお兄さんはこの『事故物件 怖い間取り』を観て何を思うのか。そんなことを思い出した夜でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。