映画『森山中教習所』ネタバレ感想|麻生久美子教官と過ごす、ひと夏の「学校」

森山中教習所タイトル画像
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こんにちは。織田です。

今回は2016年の映画『森山中教習所』をご紹介させていただきます。

監督は『ソフトボーイ』などの豊島圭介監督。
自動車免許獲得に挑む大学生・清高(キヨタカ)野村周平。キヨタカの元同級生で、現在ヤクザとなっている轟木(トドロキ)役に賀来賢人が起用されています。

原作は真造圭伍さんのコミックスです。

作品の読み方は「もりやまちゅう きょうしゅうじょ」。「モリサンチュウ」ではないです。

森山中学という廃校?になった学校の校庭を使って、非公認教習所を営んでいる自動車の教習所です。届出自動車教習所とも言うらしいですね。舞台は栃木県。

ちなみに「森山中」の舞台となった栃木県の旧須賀川小学校は、太賀さん主演の『那須少年期』など様々な作品でも使われている有名なロケ地です。

非公認教習所と公認の違いって何なの?というと、教習所卒業後に運転免許試験場でドライビングの技能試験を受けなければいけないのが非公認教習所。
試験場で学科試験や視力などの適性試験だけで済むのが公認教習所といった感じです。

運転免許試験場での実技審査はかなり厳しい(と言われている)ので、本作品のキヨタカとトドロキは、そんな難関をくぐり抜けて免許を手にしたんですね!



あらすじ紹介

ある日、免許を取ろうと思い立った大学生の佐藤清高は、ヤクザの轟木が運転する車にひかれてしまう。轟木が無免許運転だったため、事件抹消のために組長を乗せた車にそのまま引きずり込まれた清高が連れていかれた先は、非公認の教習所だった。さらに、そこで清高と轟木が高校の同級生であったことが判明する。マイペースな大学生・清高役に野村周平、クールなヤクザ・轟木役に賀来賢人。岸井ゆきの、光石研、麻生久美子らが脇を固める。

出典:映画.com

予告編はこちら

『森山中教習所』のスタッフ、キャスト

監督 豊島圭介
原作 真造圭伍
脚本 和田清人、豊島圭介
佐藤清高(キヨタカ) 野村周平
轟木信夫(トドロキ) 賀来賢人
松田さん 岸井ゆきの
上原サキ(教官) 麻生久美子
サキのお父さん ダンカン
サキのお母さん 根岸季衣
中島(ヤクザの親分) 光石研
本田(ヤクザの兄貴) 音尾琢真

野村周平さん×賀来賢人さんというと、2018年の『ちはやふる 結び』がやはり印象的ですが、この『森山中教習所』は、『ちはやふる』の2年ほど前に公開された映画です。

『ちはやふる』では賀来賢人さんがいくつか年上の役を演じていましたが、この作品では二人はタメ役ですね。平成6年生まれの設定のようです。

ちはやふる 結び タイトル画像

映画『ちはやふる 結び』ネタバレ感想〜瑞沢かるた部は続いていく!〜

2018年4月20日

また、ヤクザに属する轟木の兄貴分を演じた音尾琢真さんが最高です。
めちゃめちゃふざけてるけど筋は通すみたいな不良少年が、そのままおじさんになっても不良な感じ。

『凪待ち』『日本で一番悪い奴ら』でも印象的でしたが、やはりワルい人の役が本当に上手ですね!

キヨタカのお友達の松田さんを演じた岸井ゆきのさん、また教習所の教官・サキを演じた麻生久美子さんも抜群でした。

お二人については、この後感想部分で少し触れていきます。

以下、感想部分でネタバレがあります。未見の方はご注意ください。



免許を取るということ

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

 

車の運転免許を取るということ。

それは10代後半から20代前半にかけての一大イベントです。
早い人だと18歳のうちに取得する人もいるでしょう。

車を運転できることによって、確実に世界は広がります。特にキヨタカ(野村周平)たちが暮らすような車社会(栃木)においては。

トドロキ(賀来賢人)に至ってはヤクザの運転手役をできるようになる→組織の中で自分が役に立つ存在になれるわけです。

だから予告編に施された「人生をちょっと変える、ひと夏」というのは、実に素晴らしいキャッチフレーズだと思うんですよね。
免許取得によってキヨタカもトドロキも、確実に人生が変わっていきました。

トドロキと学校

トドロキは高校を中退してヤクザの道に足を踏み入れました。

「友達がいなかった」と、キヨタカが上から目線で振り返るように、当時のトドロキには学校生活を楽しめるだけの仲間もいなく、結果的にドロップアウトした形になってしまいます。

そんなトドロキにとって、森山中教習所はどんな場所だったのでしょうか。

僕は合宿免許という、2週間ほどの泊まり込みで運転免許を取得しました。

それはいろんな人との共同生活の毎日で文字通りの「自動車学校=車校」だったわけですが、キヨタカとトドロキたちが講習を受けた森山中教習所も「通い」の中ではかなり「学校」に近い雰囲気なのではないでしょうか。

学校の旧校舎を使っていること。
ラジオ体操のカードを転用した手作りの出席カード。
教官のサキ(麻生久美子)たち家族の親身な距離感。自分のことを呼び捨てで読んでくれる大人なんて、なかなか出会えるものじゃないです。キヨタカが惚れてしまうのも無理ありません。
根岸季衣(サキのお母さん)のちょっと怖いおばちゃん感と、ダンカン(サキのお父さん)のなんくるないさぁ感も絶妙でしたね…!

「トドロキはさぁ」
「あんたたち友達じゃないの?」

麻生久美子演じるサキから投げかけられる、馴れ馴れしい言葉の数々。
それがきっと、トドロキはすごく嬉しかったんじゃないでしょうか。
多分高校時代には決して聞くことのできなかった言葉たちだから。

同じ目的を持った仲間(キヨタカ)がいて、自分たちのことを温かく見守ってくれる教官たちがいて。
そしてトドロキとキヨタカは講習を全てクリアして、「卒業」するんです。トドロキが高校時代に体験できなかった「卒業」です。

終始仏頂面で隙を見せないトドロキでしたが、それだけに時折見せる「ニヤッ」を見れると本当に嬉しい気持ちになれました。
トドロキは免許を取得したことで不自由に(=ヤクザの運転手という役を担えるようになることで、極道の世界から出られなくなる)なるわけですが、彼の所属する「中島組」はみんな良い奴でしたね。
確かに悪い人たちなんですけど、騙くらかしとかはしません。

ちなみにキヨタカをボコったことで後に中島組から痛烈な仕返しを食らう長身のチンピラを演じたのは中村織央さん。岸井ゆきのさんとは『金星』でも共演しています。

キヨタカと松田さん

免許を取ったことで自由を奪われたトドロキとは対照的に、キヨタカ(野村周平)は免許を取得して自由を得ました。

彼が影響を受けたのは高校時代にトドロキからもらった「熱海の女」という小説。
車で旅して行きずりの女性を抱くお話らしいですが、それまでは何でもない大学生だった佐藤清高は旅ライターとして新たな人生のページをめくっていきました。

そんなキヨタカに対して密かに、いや隠すことなく好意を明らかにしていたのが松田さん(岸井ゆきの)という女の子。

「何十回もデートしたけど、やっぱりダメだった」と、あっけらかんと言い放つキヨタカにフラれて牛丼特盛をかき込む女の子です。
おしゃれな格好でキヨタカの前に現れて気を引こうとしますが。なかなかうまくいきません。

キヨタカが嬉々として話すサキさん(麻生久美子)に対して「さっきから聞いてりゃあさぁ!」と人知れず対抗心を燃やしたり、振り向いてくれないキヨタカくんに対して逡巡する松田さん。
また彼女が牛丼を頬張る「ドライブイン牛松」で働く店員さんの二人はこの映画に青春の清涼剤を振りかけていました。

物語の一つの舞台となった「ドライブイン牛松」で、実は終盤のシーンまで食べてるのは松田さんだけです
彼女が一人で牛丼特盛をオーダーして食べ、それを見るキヨタカ。二人の距離感がよく表れています。

そんな二人ですが、免許を取得して変わりつつあるキヨタカは松田さんと一緒に牛丼を頬張り、最終的には彼女と彼氏の関係になりました。
松田さんも最後はキヨタカに対して「あんた」という呼び方に変わっていますし、「佐藤清高のポロで行く旅日記・最終回熱海編」ではキヨタカが松田のことを「美人彼女」と書いています。良かった!おめでとう松田さん!

フラフラしてるキヨタカに対して一途な思いを貫くのは難しいと思いますが、松田さんがハッピーエンドを迎えたことはとても良かったですよね。

 

「何者」かになれていなかった二人の男の子が「居場所」を通じて「何者」かになっていく。
そんな彼らを温かく導く森山中教習所のメンバーたち。

悪役の存在しない、優しい気持ちになれる素晴らしい映画でした。

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ちはやふる 結び

野村周平と賀来賢人の共演作品。全3部作の最終編ですが、ぜひぜひ第1作の「上の句」から観ていただきたい部活映画の金字塔です。

いちごの唄

ちょっと天然な主人公にガツンと言い寄る岸井ゆきの、の構図が『森山中教習所』と少し似ています。パンクファッションに身を包む岸井ゆきのが観られる貴重な映画。