映画『前田建設ファンタジー営業部』ネタバレ感想〜これだからオタクは〜

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

働く皆さま。

お仕事ご苦労様です。

突然ですが、皆さんが頑張ってこなしている仕事は、楽しい仕事でしょうか?
それともつまらない仕事でしょうか?

世の中にはきっと、つまらない仕事とか、関わりたくない仕事がたくさんあります。
そんな業務が(運悪く)あなたの元に降ってきたらどうしますか?

思い切り全力投球して、その仕事と向き合っていく人もいるでしょう。
仕事だからと割り切り、心を無にしてこなす人もいるでしょう。
嫌々ながらやる人もいるでしょう。
その仕事から降りる人もいるでしょう。

 
今回ご紹介する『前田建設ファンタジー営業部』は、突然舞い降りてきた謎プロジェクトに困惑しつつも、担当のメンバーたちが「ガチ」を徹底的に貫いて挑んでいく映画。

コメディー色が強いですが、実在の企業「前田建設工業株式会社」さんをモデルにした実話です。

こちらが実在の前田建設ファンタジー営業部さんのHPです。

あくまでも仕事なので成功(受注)という結果が求められる中、そこに対して妥協することなくトコトン向き合っていく前田建設の面々。
働く人は、新しい何かをやることになった経験がある人は、きっと自分のどこかを重ねあわせることができるはずです。

特にお仕事を頑張っている社会人のあなたに観てほしい!そんな作品です。

まだご覧になっていない方は、ぜひエンドロールまで観ていってください!最後まで愛情がぎゅっと詰まったエンドロールです。
僕は働く社会人の皆さんへのエールのように感じて思わず泣いてしまいました

 

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



『前田建設ファンタジー営業部』のスタッフ、キャスト

 

監督:英勉
脚本:上田誠
原作:前田建設工業株式会社、永井豪
ドイ(土井)高杉真宙
アサガワ(浅川)小木博明
ベッショ(別所)上地雄輔
エモト(江本)岸井ゆきの
チカダ(近田)本多力
ヤマダ(山田):町田啓太
フワ(不破):六角精児
ノミヤ:高橋努
ホリベ:濱田マリ
タザキ:鶴見辰吾

上で赤字で示した役名が、プロジェクトを直接担当したメンバーです。リーダーは小木博明が演じるアサガワ。
※映画内では役の名前は漢字で表示されていましたが、公式サイトなどに照らし合わせてカタカナ表記にしています。

監督は『ヒロイン失格』などを手がけた英勉。主演に『渇き。』『虹色デイズ』などの高杉真宙。
同僚役の岸井ゆきのは『愛がなんだ』『友だちのパパが好き』などで好演し、個人的にも一番注目している女優さんです。(今回も素晴らしかったです!)

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映画『友だちのパパが好き』ネタバレ感想〜変態と純愛の大傑作!〜

2019年12月29日

キャストの皆さんに対する感想は、ネタバレを含むため記事の終盤部分で書かせていただきます。

あらすじ紹介

2003年。大手ゼネコン前田建設工業の広報グループ。ある日、グループリーダーのアサガワは、マジンガーZの地下格納庫の建設工事を受注したという体裁で、具体的な見積もりを作成するプロジェクトを始動させる。最初は渋々参加していた若手社員のドイだったが、立ちはだかる数々の技術的問題を、各分野の専門家の協力を得て一つひとつ乗り越えていく中で、次第にプロジェクトにのめり込んでいく。やがてプロジェクトは会社の枠を超えて大きな広がりを見せていくのだったが…。

出典:allcinema

建設会社の広報グループに飛び込んできたトンデモ案件。
アニメ「マジンガーZに出てくる地下格納庫を建設するとなったらどれだけの費用や工期がかかるかを、くそ真面目に検討しましょうというお話です。

架空世界の建造物なので、もちろんタラレバの話なのですが、ガチで検討します。

マジンガーZを知らなくても大丈夫?

大丈夫です。

マジンガーZとガンダムの違いがわからない僕でも楽しめました。
映画の中でも「昔の作品でしょ」という扱いなので問題ありません。

主人公たちの土井たちが向き合っていく「地下格納庫」というワードも、何度も出てくるのでそのうち理解します。マジンガーZが出動する際に出てくる基地みたいなものと認識していただければ十分です。

もちろんマジンガーZを知っている方、リアルタイムで観ていた方は、別の楽しみ方ができると思います。
知らない僕からすると正直うらやましいです。

土木の用語を知らなくても大丈夫?

大丈夫です。

町田啓太が演じたヤマダさんという掘削(土質)担当の社員は、掘削の世界をお菓子にたとえてエモト(岸井ゆきの)に説明していました。
専門用語がわからなくても、ある程度聞き流しながら概要をつかむことができます。

「ファンタジー営業部」のメンバーたちは専門用語に詳しくない人が多いこともあり、専門用語はメンバーたちと一緒に鑑賞する側も勉強していく感じですね。

「ズリ」「ジャッキアップ」、このあたりは映画を観終わっても頭の片隅に印象付けられるかもしれません。

 

またMIHOシネマさんの記事では『前田建設ファンタジー営業部』の概要や、併せて観たいオススメ作品などが分かりやすく紹介されています。
まだ映画をご覧になっていない方も、鑑賞済みの方も、どうぞご覧ください!

以下、感想部分で映画の展開やネタバレについて触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

「嫌々」だったはずなのに

この映画の最高なところは仕事にのめり込む素晴らしさを徹底的に描いたところです。
具体的に言えば、面倒くさいなと思っていた仕事に対して、プライドとか愛情を持って、自分で考えトライしていく姿です。

アサガワ(小木博明)が持ってきた、「マジンガーZ」の地下格納庫の建設見積もりを空想世界(ウェブ上)で連載していこう!という突拍子も無い案件。

建設会社の広報グループの一員でしかなかったドイ(高杉真宙)エモト(岸井ゆきの)ベッショ(上地雄輔)にとってはまさに寝耳に水でした。

「本業」から外れてワケのわからない事業を担当させられる。
おまけにそのトンデモ事業は周りの社員から白い目で見られる。

アサガワさんの無茶な案件に巻き込まれて面倒くさい。
このプロジェクト、ボツにならないかな?!

 

成功だけを信じ、ブルーオーシャンとかニューフロンティアだとかを声高に叫ぶアサガワを、ドイたち3人は冷めた目で眺めます。
ザ・他人事。

しかし、アサガワの熱意と、チカダ(本多力)というアニオタのDVD-BOX(私物)を用いた強烈プレゼンにより、彼ら3人はだんだんと「マジンガーZ」に、このプロジェクトに真面目に向き合うようになります。

何も分野外のことについてわからなかったはずのメンバーが、だんだんと専門家になっていきます。
あんなに嫌がっていたのに!

「嫌々」「やらされ」から始まったプロジェクトの中、「素人」を卒業していく過程の描写が圧倒的に素晴らしい。
やっぱり、「自分ごと」として興味を持って取り組み、答えを見つけていくことで人は熱中でき、専門家になっていくんですね!

これは社会人の仕事だけじゃなくて、例えば学校の委員だったり、クラブ活動の分担だったり、「やらされる」仕事ってたくさんあると思うんです。

その仕事を「やらされる」のか「やる」のか。向き合い方次第で、結果って変えられるんじゃないか。
そう思わせてくれる作品です。

オタク特有の早口

アサガワが持ち込んだプロジェクトに対してやる気のなかった3人にスイッチを入れたのは、オタクの存在でした。
(並外れた)熱意を持った専門家と言ってもいいかもしれません。

オタク特有の早口で喋る彼らはウザく、その熱量についてこられない3人たちには疎まれていました。
でも、熱意とか本気の愛は、人を変えることができるんです!

この作品では3人のオタクが、非オタクだった3人を専門家の道に引き入れていきます。

まずはマジンガーZDVD-BOXを自費購入し、全話(一部早送り?)視聴で物語を語れるほどに叩き込んだアニオタのチカダ(本多力)。
彼はベッショを、そして鑑賞している僕たちをマジンガーZの沼に引きずり込んでいきました。

次に掘削(トンネルを掘ったりするところですね)のヤマダ(町田啓太)
「土質屋」なる土オタクのヤマダは、初登場シーンで「土から出てきたモグラみたいなやつ」とエモト(岸井ゆきの)に失笑されながらも、例え話を応用した一生懸命な語り口でエモトのハートを動かしていきます。

ヘルメットの「やまだ」がひらがなで可愛いですね。

ヤマダが早口で土質とはなんたるかをペラペラと話し続ける長ゼリフはマジで圧巻でした。社長賞とかがあれば出してあげてほしいレベルです。

エモトがアドバイスを求めてやってきたときに、結局ヤマダが食べるタイミングを見失っていたカップラーメンの行方も気になりますね…
(前田建設さんのHPで「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編を公開しています。)

そして、前田建設が誇る技術者・フワ(六角精児)は、ダムの構造や技術的な問題の解決を宿題形式で与えることにより、ドイ(高杉真宙)のやる気にじわじわと火をつけていきました。

メンバーの中では最後まで冷めた目で周りを見ていたドイが、プロジェクトを「自分ごと」に変えていくのは本当に気持ちが良かったです。彼を導いたフワの上手な操縦術と六角精児の演技も見事でした。

僕がオタクになった理由

少しだけ自分の話をさせていただきます。
自分語りうるさい!という人は下にスクロールで飛ばしてください。

チカダやヤマダのようなオタクは、実は僕の周りにもいました。

2014年の夏。
メディア関係で働いていた僕は、とあるアニメ映画のプロモーション部隊に駆り出されることになりました。

『アイカツ!』という主に女子児童をターゲットにしたアイドル作品でした。

映画『劇場版アイカツ!』〜美しくまっすぐなアイドル道!〜

2014年12月18日

主にスポーツ関係の仕事をしていた立場にとって、女児アニメは新鮮というにはあまりにも世界が違いすぎ、困惑と「なぜ僕が」という怒りを抱えながらプロジェクトに嫌々参加していました。

そこで僕の人生を変えるオタクが現れます。
チカダと同じように眼鏡をかけて特有の早口で喋り、アサガワと同じようにプロジェクトの成功を信じてやまない上司が現れます。

彼は僕に『アイカツ!』全話(当時は80話分くらいだったでしょうか…)の全視聴を命じました。
自分たちよりも知識、熱意のあるファンの人たちも楽しんで納得できるようなものにするんだ!と早口でまくし立てました。

彼の熱意に負けて嫌々ながら視聴を始めた僕は、数ヶ月後、無事にアイカツ!好きのオタクへと足を踏み入れていました。
結局2016年の映画第2弾のプロモーションにも(オタクとして)携わることになりました。

アイカツスターズ タイトル画像

映画『劇場版アイカツスターズ!』ネタバレ感想〜アイカツロスをこじらせて〜

2016年8月23日

 

レンタルDVDを見始めた当初は、なぜ女の子が歌って、ジャンプして、スペシャルアピールとかいうキラキラした技?みたいなものを放つのか意味がわかりませんでした。
なぜドレスに変身するのかもわかりませんでした。

でも今ならわかります。説明できます。

『前田建設ファンタジー営業部』のベッショは、あの頃の自分を見ているようでした。
人生で育む知識って、結局オタクになることの積み重ねなんですよね。

キャストの演技にも拍手を

最後にアサガワを演じた小木博明、ベッショを演じた上地雄輔、エモトを演じた岸井ゆきの、ドイを演じた高杉真宙についての感想です。

小木博明(役:アサガワ)

小木が演じたアサガワの良さは、チャンスに全力で飛びついてみる積極性。周りを煽り、巻き込んでいく。非常に暑苦しいです。

でも、その暑苦しさがどういうわけか鼻につきませんでした。

これは小木博明というキャラクターに対して僕たち鑑賞者がこれまで培ってきたイメージの勝利だと思います。
もしもアサガワが他の役者さんだったら、きっとこんな風にはなっていないはずです。

そして「我々が思い浮かべる小木博明像」というイメージを生かしきったキャスティングと脚本の勝利でもあります。

耳当たりの良い言葉を並べながら(無理矢理にでも)部下を乗せていく。
最高の上司ではないでしょうか!!
僕はこんな人の下で働きたい!!

上地雄輔(役:ベッショ)


小木の部下であり、ドイたちの先輩という中間管理職?的なベッショを演じたのは上地雄輔。
アサガワの小木博明が「これぞ小木博明」を前面に押し出していたのに対し、上地雄輔はいい意味で「彼っぽさ」が消えていました。

上地雄輔も小木同様、バラエティーなどで多くの人にそのキャラクターを認知されている役者だと思います。明るそうとか、ノリが良さそうとか、もしかすると昔のおバカキャラのイメージを抱いている人もいるかもしれません。

しかし、本作のベッショはアサガワとドイの板挟みで悩んだり、自分の進むべき道について困ったり、疲れた表情を見せています。
それも違和感なく。
映画序盤のベッショは、アサガワ、エモト、ヤマダとともに間違いなく主役級の扱いでした。

一方でチカダの手によって沼に浸かってしまった後は、チカダとともにアサガワ援護団員に成り下がり、マジンガーの用語を意気揚々と普段使いするただのオタクへと変貌します。
プロジェクト内でも第二のアサガワ的な同調発言が多くなり、明らかにモブ化します。(褒めてます)

見事な没個性は、上地雄輔のカメレオン俳優としての個性なのかもしれません。
この映画で一番印象が変わった役者さんでした。

上地雄輔が佐藤隆太とダブル主演している『漫才ギャング』もオススメです!Amazon Prime Videoでも配信しているのでぜひ!(2020年2月6日時点)

岸井ゆきの(役:エモト)


キャスト紹介の所でも書きましたが、個人的にいま一番気になっている女優です。

『愛がなんだ』『友だちのパパが好き』でも評してきたように、抜群に上手い自然会話は本作でも健在でした。

居眠り、背伸び。エモトのやる気のなさは見ているこっちが注意したくなるレベル。お菓子を口に運び、椅子にもたれかかって、だらだらと揺らしながらつまらなさそうにアサガワたちの話を聞く演技は超一級品です。
マジでオフィスにいます、ああいう奴。

そんなエモトにも優しい男(ヤマダ)というフックからやる気スイッチが入り、振り返りながらニンマリ微笑むゾーンに突入すると、もう後は彼女の庭です。
『愛がなんだ』で、マモちゃんからの電話に応答していた時も見せていた、幸せのニヤニヤを抑えきれない岸井ゆきのがそこにいます。

エモトの表情のすべてから、彼女がいまどういう感情なのかをうかがい知ることができました。
相変わらず圧倒的に上手いです。

ヤマダくんとの未来に幸あれ。

高杉真宙(役:ドイ)


そして主演の高杉真宙です。
彼が演じるドイという男は、ウェブサイトのデザインが少し出来て、休日には(設定が2003年ということで)プレステ2を楽しむ普通の若手社会人です。
仕事は一応真面目にやっています。

この作品で一番びっくりしたところは、ドイが先頭に立ってプロジェクトを引っ張っていくという主人公的な描写がほとんどなかったことです。

フワに乗せられてやる気スイッチが入っていく部分は確かに時間が割かれていたものの、ドイは終盤まで客観的な視点を貫いていました。我々傍観者と同じような「いや、それ意味あるの?」と冷めた視点を貫いていました。

これって、主人公としては結構異質だと思うんです。
普通こういうノリの悪い仲間を巻き込む時って、主人公が先頭に立っていくことが多いと思うんです。
でも本作品では、主人公が最後に(オタクの)輪の中に巻き込まれていきました。

高杉真宙のドイはチカダやベッショのようにマジンガーの世界観にどっぷりハマることもなければ、小木博明や岸井ゆきの、六角精児のように強烈な個性を役柄に落とし込むこともありませんでした。

本当に終盤まで、普通の若手社員でした。

ある種“引き算”をしたような新鮮な立ち位置を見せたドイは素晴らしかったと思うし、だからこそ彼が冷めた自分を卒業してガチになっていった終盤はドイと、彼を変えようとする不破を応援したくなりました。

ああいう傍観者が変わることって、変えることって、すごく難しいと思うから。

映画公開時点で23歳(ストレート大卒の1年目と同じ)の高杉真宙ですが、社会人の役も全く問題ないですね。
素敵なキャリアの積み方をしているなあと思います。拍手!

 
ちなみに映画内で出てきた「長島ダム」は、静岡県の奥大井エリアにあります。大自然の中で見る迫力満点の放水は圧巻。
事前予約でダム内部の見学も行なっています。

機会があれば、ぜひ遊びに行ってみてください!

大井川観光情報サイト

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