映画『真夏のオリオン』

今夜の映画は実に1年以上ハードディスクに寝かせておいた『真夏のオリオン』(09年)。主演は玉木宏。篠原哲雄監督。



■甘っちょろくて結構じゃないか

舞台は太平洋戦争末期の海上。
潜水艦で米軍と戦う軍人たちの生き様を描いたものである。

イ-77艦で1年10ヶ月もの間戦い続けてきた倉本艦長(玉木)ら。
指示の声がぱりっと通り、それに呼応するやまびこが美しい。
この映画では戦争映画にありがちな惨たらしさはほとんどなく、全てが美談に近い形で描かれている。犠牲者も少ない。
あまっちょろいとおっしゃる方もいるかもしれないが、自分は逆に集中して観ることができた。

海戦、とりわけ潜水艦での戦い方はまったく知らなかった。潜り方、舵の切り方、敵艦との駆け引き、襲撃への対処法。恐らくは基礎的なものだろうが、わかりやすく描かれていて、すんなり理解できた。
魚雷、回天、爆雷といった兵器についても映像、台詞を割いて説明していた。丁寧な作りである。

■キャストの極め付けは吹越満

キャストの配置、映し方も良い。艦長に玉木を置き、現代シーンとの媒体人となる水雷員・鈴木役に太賀。
物語の進行で味のある演技を見せてくれた水雷員の森(松尾光次)と岡山(山田幸伸)。それを束ねるのは水雷長の益岡徹。
航海長の吹越満とともに、玉木演じる倉本艦長を支えつづけた。
艦長が判断を下すときにも必ずこの二人は映す。だから、二人の発言には重みが加わる。

その他も、さまざまな部所によって成り立っている潜水艦である。
機関長の桑田を演じる佐藤栄作、食事を担当する烹炊長にはドランクドラゴンの鈴木拓、軍医には若年臭を漂わせる平岡祐太、回天の搭乗員として艦長と意見を戦わせる遠山役には黄川田将也を配しており、この脇役陣がまた、存在感を出している。

役者でいえば、北川景子と堂珍嘉邦についても触れなければならないだろうけど、ネタバレになるので割愛。堂珍はなかなか良かった。玉鉄と見間違うほど。

演技面では、動じず、張りのある声で味方を奮い立たせ、愛される艦長を演じた玉木が出色の出来だったが(『MW』に近いイメージだ)、一番印象に残ったのは吹越満。時折艦長と対立しながらもこらえ、また従う姿は胸を打った。

この映画では台詞がなく、駆け引きの頭脳戦を行っているシーンも作っている。その際も役者の表情(主に玉木)に緊張感があるから観る側もびしっと見れるのだ。

ストーリー面も順序がしっかりしていて矛盾がなかった。

戦いの中にも重厚な落ち着きが存在する作品。
評価は★★★★★。穴がなかった。

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