映画『さよなら渓谷』〜真木よう子のカサつく肌と低い声〜

渋谷シネマライズにて『さよなら渓谷』の映画を鑑賞してきました。

六月に公開されたものの、行こう行こうと思っていたら終わっていて、シネマライズさんが上映していたので助かったと思いながらの鑑賞です。

原作は吉田修一の小説で、秋田で起きた児童殺害事件をモチーフにしているであろう場面から物語がスタートする。

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今回は監督を大森立嗣が務め、真木よう子が『ベロニカは死ぬことにした』以来7年ぶりの単独主演。
大西信満、大森南朋らが共演している。

真木よう子が「ベロニカは死ぬことにした」以来7年ぶりに単独主演を飾り、吉田修一の同名小説を映画化した人間ドラマ。緑豊かな渓谷で幼児殺害事件が起こり、容疑者として実母の立花里美が逮捕される。

しかし、里美の隣家に住まう尾崎俊介の内縁の妻かなこが、俊介と里美が不倫関係にあったことを証言。現場で取材を続けていた週刊誌記者の渡辺は、俊介とかなこの間に15年前に起こったある事件が影を落としていることを知り、2人の隠された秘密に迫っていく。

俊介役は「赤目四十八瀧心中未遂」「キャタピラー」の大西信満。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「まほろ駅前多田便利軒」の大森立嗣監督がメガホンをとり、監督の実弟・大森南朋も週刊誌記者・渡辺役で出演。

映画.comの作品解説から引用

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後にとっておきたかった衝撃性

吉田修一の原作はとても好きな作品で何度も読み返したのだけども、映画はというと、ストーリーをすでに知っていたことを差し引いても少しがっかりでした。

もちろんかなりのめり込んでいたのだけども、やはり主人公の俊介と一緒に暮らしている女性(かなこ=真木よう子)が過去のある事件の加害者と被害者であった、という関係性の衝撃こそがこの作品の肝であり、その衝撃を隠さずに映画の番宣に落とし込んでしまった時点で制作側はハードルを自らあげてしまったのかな、と。

僕はストーリーがわかっているからいいものの、冒頭の隣人女性の逮捕(畠山鈴香事件にインスピレーションを得たものである)の説明が、ラブシーンの背後で流れるテレビ音声だけでは、不親切であろう。

渡辺の家庭の話はさすがに盛り込みすぎ(C)2013「さよなら渓谷」製作委員会

出典:映画.com

この児童連続殺人とか、体育部の暴行とか、家庭内別居とか、メディアスクラムとか、いろんな社会的要素を散りばめたのが原作だとすれば、映画はあれもこれもと再現を欲張るばかりに、全てが蛇足感の否めないエピソードになってしまったのが残念。

撮り方としてだらりと冗長な形を撮るとした以上、ライター・渡辺の家庭の話はやはりいらなかったんじゃないかなと。
それよりも俊介とともに過去の暴行事件に関わった野球部の仲間たちを追うシーンなどの方が入れるべきじゃなかったのかなと。

ここまでが気になったところ。

一方で、シーンの回し方や、情景、扇風機とかスーパーの袋など夏の生活感の描き方という面ではとても良かった。
かなこと俊介の行く当てのない道中の繋ぎ方は随一の出来。
あと、集合住宅から渡辺の家に至るまで全ての風景が、僕が小説を読んでイメージしていた通りのものでこれにはかなりびっくりしました。

どうしようもなくやるせなく、それでも生きていくしかない人々に映る日常が、どういうものなのかをきっちりと明示してくれていたと思う。

素っぴん・ノーブラ・真木よう子

役者ですが、真木よう子についてはわざわざ言及する必要もないでしょう。素っぴん、ノーブラ、かさついた肌、全てを諦観したような低いトーン。
ラブシーンもそうだけど、外見的な部分も細かかったです。俊介役の大西信満(初めて見た)があまり言葉で勝負するタイプではなかったので、彼女に負う部分は大きかった。

かなこは許す、許さない以上の何かを抱えながら、それでも生きていかなければならなかった訳で、真木よう子の演技からは逡巡するかなこの様子がよく見えた。

真木よう子の代表作と成りうる作品(C)2013「さよなら渓谷」製作委員会

出典:映画.com

何を見せたかったのか、焦点の当て方がもったいなかったけど、何を表現したいのかはよくわかった。
観てよかったなとは思えた作品。原作の素晴らしさも込めて★★★★☆。

さよなら渓谷 [ 真木よう子 ]
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