こんにちは。織田です。
今回はアマプラで鑑賞した2019年公開の映画『疑惑とダンス』をご紹介します。
主演に徳永えりさん。監督は二宮健監督。
婚約した二人を祝うためにダンスサークル時代の仲間が開いたパーティーで、新婦になるカンナ(徳永えり)と冴えない男・コムラ(小村昌士)が7年前にヤッていた疑惑が浮上。
やったのかやってないのかをカンナに問い詰めていくだけの密室型作品です。
作品紹介を見るに完全アドリブらしいです。
結論から言うとキャラクターがキモすぎて、しょうもな!って感じだったんですが、その理由について感想を書いていきたいと思います。全体的に悪口です!
あらすじ紹介
結婚間近のカンナとマサオを祝おうと、カンナが大学時代に在籍していたダンスサークルのメンバーだったコムラ、サトシ、サナ、ツバキがパーティーを開く。昔話などで盛り上がっていると、学生時代にカンナとコムラがセックスをしていたのではないかという疑惑が持ち上がる。それまでの和気あいあいとした空気は一変し、痴話げんかに発展。やがて彼らの友情と絆は、完全に壊れてしまう。
スタッフ、キャスト
監督 | 二宮健 |
カンナ | 徳永えり |
マサオ | 木口健太 |
コムラ | 小村昌士 |
サナ | 福田麻由子 |
ツバキ | 川面千晶 |
サトシ | 小林且弥 |
映画はパーティーが行われるスナックを舞台に、この6人だけで進行します。
登場人物への感想
以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
#二宮健 監督 最新劇場公開作品「疑惑とダンス」
公開日とメインビジュアルが解禁しました!#徳永えり、#木口健太、#福田麻由子、#川面千晶、#小林且弥、#小村昌士 出演
ヤッたかヤッてないか…踊るか踊らないか…
2019/3/2より渋谷 #ユーロスペース にて公開です。 pic.twitter.com/dDOTwoemwc— 映画「疑惑とダンス」 (@giwakutodance) December 26, 2018
1時間足らずのこの映画は、カンナ(徳永えり)とコムラ(小村昌士)が7年前にやったかやってないかをカンナの婚約者・マサオ(木口健太)が糾弾する、ただそれだけの話です。
お酒も入り、サークル時代の仲間というギャラリーもいることで気が大きくなっているんでしょう。マサオは興奮して大きな声でカンナを責め立てていました。極めて不愉快です。笑
密室で行われる真相探りの会話劇は色々ありますが、『疑惑とダンス』で繰り広げられる言い合いはかなり低レベルでしょうもないものでした。登場人物の言い分や真意について見ていきましょう。
コムラ:こいつキモすぎな件
元凶です。こいつがマサオに、カンナとラブホでやったと口を滑らせたことが全ての始まりでした。
痴話喧嘩におけるコムラ(小村昌士)の主張・論点は、カンナに自分とやったことを認めろということの一点です。
否定されれば、大好きだったカンナとの夜が、自分の存在が無かったことにされるのが怖いんでしょう。
あの時のゴムをまだ持っているだとか、ボイスメモ録音するからもう一回証言しろだとか、ドン引きレベルのカードを切り、カンナに“事”を認めさせようとしています。
自分が口を滑らせてマサオが怒った時点で、修羅場と化すことはわかっていたはずです。自分が好きなカンナが苦しい立場に追い込まれることもわかっていたはずです。
それでもなお、俺はカンナとやったんやと主張する意味よ。そこにあるのは自分のプライドを守ることだけです。自分しか見えてないゴミ野郎ですね。
こいつがキモいのは、カンナが「(もう面倒くさいから)やったってことでいいよ」と言った後も、「でいい」では認めずに執拗な追撃を行なったところです。
認めてもらったんですから、「ああいうこともあったけど若気の至りってことで許してください」とマサオに言ってれば痴話の渦はそこまで大きくならなかったでしょう。
なのにこの男は素直に認めてもらえなかったことで被害者ぶり、カンナに証言を残させようとしました。マサオに対して自分が間男になったことの罪悪感とかこれっぽっちもないんですね。ああ気持ち悪い。喋り方とかジェスチャーとか全てが気持ち悪い。無理こいつ。
サナ:好戦的なクラッシャー
続いてサナ(福田麻由子)です。
こいつがコムラの主張を裏付ける証言を急にしたことで、カンナの立場は一層苦しくなり、コムラの糾弾がヒートアップしました。
サナの場合は、カンナがコムラとした事実を証言する一方、やったから何?という主張です。
一方で自分の主張が虚言だとツバキに言われると目を剥いて反論しました。
あの場を修羅場に陥れたのは彼女なわけですが、喧嘩腰になるのを面白がる人っていますよね?火に油を注ぐ的な。
マジで面倒くさい。
場の雰囲気が険悪になるたびに、ニヤニヤを携えてマサオに対してキモい、だとか何で怒ってんですか、とか挑発しています。それに対してマサオはうっせえとかサナちゃんは関係ないから黙っててと一蹴していました。
このマサオに対するサナの執拗な挑発については、彼女が前半部分で言っていた「自分のことを見ていないような人が好き」という思考が関係していると思います。
マサオがサナの挑発をいなし罵倒すると、サナは嬉しそうに「キモい」と毒づいたりだとか「コイツ最低だよ別れた方がいいよ」だとかカンナに諭しています。
カンナと別れさせたいのかどうかはわかりませんが、マサオに対して関わろうとする姿は明らかでした。
コムラとサナに共通してるのは、二人はこのグループの中で恋愛経験に乏しい人間として扱いを受けていることです。前半の語りパートでサトシやツバキから「彼女/彼氏いたことないよね」とマウントを取られていました。
カンナとマサオが恋愛を成就して婚約を迎えた中で、しかもセックスという話題が中心となった中で、見くびられていた自分たちが場の主導権を左右する機会が訪れたわけですから、立ち位置を覆そうと躍起になるのもわかる気もします。
マサオ:怒る理由を探して
次に、カンナを糾弾したマサオ(木口健太)について。
来場早々にコムラから衝撃の告白をぶっ飛ばされて、人間不信になってしまったことは気の毒でした。
ですが、その後の追い詰め方が非常に印象が悪かったですね。
まずマサオが焦点にしたのは「(カンナが)やったのか / やってないのか」です。
これは彼が疑念を感じている根幹の部分なので理解できます。問題はマサオが、カンナの「やっていない」主張を信じる気がないことです。
「こんなやつ」扱いされていた胡散臭いコムラの言い分をなぜ疑わなかったのか。カンナとコムラの信用を天秤にかけることが、なぜできなかったのか。
俺はこれだけ傷つき、怒っている。だから俺は絶対に裏切られた側である、という風に、自分が取り乱す理由を押し付けているように見えます。「やった」前提で話しているのもそのためです。
さらにカンナが「やったってことでいいよ」と認めた後も、執拗に彼女を責めました。
今までやってきたことは全部言おうって約束したよね?と。
「やったのか / やってないのか」に決着がついてもなお、この男は自分の怒りの矛先をサヤにしまえずにいます。
極論すれば俺は納得できていないからまだ憤っている、ってことだと思うんですけど、どうすれば納得するんですかね。マジで謎です。
ひとつマサオの気持ちを汲む点があるとすれば、彼が途中「今までも疑ったことがあった」と口走っていたことでしょうか。
コムラとの最初の会話の時もそうでしたが、マサオの中では元々、いまいちカンナを信用できない部分があったのかもしれません。
サトシ:傷につけ込む利己主義者
続いてサトシ(小林且弥)です。
登場早々にマサオとカンナがくっついたのは俺のおかげ、まあ俺もカンナの事好きだったけど!と恩着せがましく自分語りの祝辞をし始めたので怪しかったんですが、こいつは混迷を極める場でのポジション取りが姑息だったんですよね。
サトシからしてみればカンナがコムラごときとやったかやってないかは重要ではなくて、自分がどれだけ優位なポジションを取れるかの問題です。
最初は謎主張をするコムラに対してふざけんなみたいな態度をとっていたくせに、サナの証言が出てくると途端にカンナを「お前最低だよ」と人格否定していきます。
ここまではまだいいんですが、その後「最低だよお前」が「最低だよお前ら」に変化していくんですよね。
お前「ら」はカンナとマサオについてです。二人の関係が破滅するような論調に仕向けていきます。「お前らもう終わりだよ」とも言っていましたね。
挙句の果てに、傷つき呆然としたカンナに寄り添い、もうお前らは終わりだから俺のところに来いよとばかりに肩を抱きます。
俺はカンナとやった!とみんなの前で息巻くコムラ同様、サトシも(マサオに対して)カンナ愛の大きさを証明したいところもあったのかもしれません。それにしても姑息ですけどね。
ちなみにサトシは言い合いの最中、「誰が悪いのかを考えよう」と裁かれるべき対象を決めようとしていました。自分はどう転んでも叩く側のだから言えることですよね。ここらへんも本当に無理です。
ツバキ:唯一まともな人
ツバキ(川面千晶)に関しては、あの場で唯一まともな対応をとっていた人間でした。
「やったのか / やってないのか」に関してはコムラのことを疑いながら、どうなの?とカンナに尋ねていましたし、常識的な外野です。
自分のことしか考えていない奴らだらけの中で、糾弾される側のカンナの言い分を聞こうとしていた唯一の存在でした。
サナに対してのディスは色々と遺恨を残しそうな感じでしたが、あの場の論点とは違うものなので置いておきましょう。
カンナ:同情しかないです
名古屋 シネマスコーレでの上映が始まりました。平日に映画を観るなら #疑惑とダンス !どうぞ笑いに劇場にお越しくださいませ。
今週は20:05〜 上映です!#二宮健 #徳永えり #木口健太 #小林且弥 #福田麻由子 #川面千晶 #小村昌士 pic.twitter.com/QA3CrIHlD6— 映画「疑惑とダンス」 (@giwakutodance) May 20, 2019
最後にカンナ(徳永えり)についてですが、彼女に対してはもう同情しかありません。
身に覚えもない一夜のことをコムラに明かされ、間髪入れずに登場したマサオから案の定詰問され、やっていない、覚えていないと言っても信じてもらえない。
コムラのカミングアウトを聞いた後、マサオは外に出て行きました。自分の置かれた状況を理解する時間を作りました。その上で、裏切られた怒りを携えて戻ってきました。
一方でカンナは逃げ場も事態を把握する余裕もないまま、記憶にない7年前のことを掘り返されて厳しく問い詰められるわけです。やったのかやってないのか答えないのは、言えないんじゃなくて今自分が何でこんなことになっているのかを理解するタイムラグでもあったと思います。
じゃあやったってことでいいよ、と自白しても依然として続く執拗なマサオとコムラからの糾弾。論点は行為の有り無しから、それをマサオに言わなかったことへの罪、コムラとの初体験を認めようとしなかったことへの罪にすり替わっていきました。マジ地獄。本当にご愁傷様です。
コムラにしろサトシにしろ、こじらせた奴らから好意を寄せられるカンナが本当に気の毒。
で、結局どうしたいの?
キモすぎる証拠と言い草を持ち出し、俺はやったと言い張るコムラはさておき、カンナは自分を執拗に糾弾するマサオに対して「どうしたいの?何がしたいの?」と反論します。
やったと認めれば気が済むのかと思えばそうではない。
じゃあ別れる?とカンナに訊かれれば、そういう話じゃないと遮る。
他の人たちがいて興奮状態にあるあの場では、カンナがどうしたってマサオの怒りが収まることはないんですよね。
ごめんなさい、もう二度としません約束しますとカンナが言ったとしても、信じられないとか言って彼女を叩くことを終わらせないと思います。
仮にこの後二人が夫婦になったとしてもマサオみたいなやつは結局、この夜に負った傷をことあるたびに持ち出してカンナを責める材料に使いますよ。隙あらば攻撃してくるはずです。彼の中では永遠に自分が被害者だから。
ってか、最初の時点でどうしてコムラなんかの言い分に乗って、カンナを信じようとしなかったのかがマジで謎です。
酔っ払っていた状況だったのなら、それに乗じてワンナイトしたコムラが圧倒的に不利だと思うんですけどどうでしょうか?
どっちが誘ったとかそういう問題じゃないんですよ。
それをカンナが認めていない、覚えていないのに、コムラが自慢気に武勇伝として吹聴する意味がわからない。
墓場まで持ってくつもりか?ってコムラは偉そうにほざいていましたけど、墓場に持ってくのはお前だよって話です。もしカンナが酒に酔っ払っているところを襲われたと言ったら、不利になるのは明らかにコムラ側ですよ。カンナへの下心もあったわけですし。
そんなコムラに対して、マサオはどうして疑うことも、お前何してやがんだふざけんなと怒りの矛先を向けることもしなかったのか。
カンナへの積み重なった疑惑がコムラよりも彼女を信用することができない理由に繋がっているのだとすれば、マサオは所詮それまでの器だったんでしょうね。
そもそも7年も前の「やったのか / やってないのか」に、いい歳こいた大人がこれだけこだわってるのがマジでしょうもなさすぎます。
浮気はいけないことだとは思いますが、7年前の一夜を掘り起こしても現在未来に何もメリットないですよ。誰得ですかね?
ここまで散々罵ってきましたが、これだけ腹が立ち、文句を言いたくなるほどに映画内の痴話喧嘩に移入したということかもしれません。笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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