映画『かしこい狗(いぬ)は、吠えずに笑う』ネタバレ感想〜友情という名の鎖〜

クリスマスの25日、下高井戸シネマで映画『かしこい狗(いぬ)は、吠えずに笑う』を観てきました。

2012年、渡部亮平監督、出演はmimpi*β岡村いずみ

下高井戸シネマには初めて行ったんだけど、ほっこりしていて良い映画館。

シアターに着くと、合唱曲『マイバラード』が静かに流れていて、それもまた温かみを感じさせた。

『かしこい狗は、吠えずに笑う』のスタッフ、キャスト

スタッフ、キャスト

監督・製作・脚本:渡部亮平
熊田美沙:mimpi*β
清瀬イズミ:岡村いずみ
栗田:石田剛太
もりこ
瀬古あゆみ
ほりかわひろき

正直、この作品を観ようと思ったきっかけはドラマ『たべるダケ』で魅かれた岡村いずみが出ているということ。

九月くらいに観たかったのだけど、予定が合わなくて、年末上映の下高井戸シネマさんありがとう、といったところ。

あらすじ紹介

女子高生の熊田美沙は、名字やその風貌から 「プー」と呼ばれて馬鹿にされ、友だちもいない孤独な学校生活を送っていた。

そんなある時、可愛すぎて女生徒たちから妬まれている同級生イズミと親しくなった美沙は、なぜか自分に興味を示すイズミに戸惑いながらも、友情を育んでいくが……。

出典:映画.com

脚本、監督の渡部さんの自主映画という触れ込みは聞いていた。ただ、自主映画というのがどういったレベルなのか僕はわからないので、あまりそこには着眼せず、物語は始まった。

※あまり公開されていない作品なので詳細にレビューしますが、ネタバレが嫌な方はお控えください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

可愛いと可愛くない

熊田美沙という不細工な女の子をmimpi*βが演じ、対照的に可愛らしい(自分でもそれをわかっている)清瀬イズミという女の子を演じる岡村いずみ。


美沙はその容姿と、恐らく苗字からであろう、プーさんというあだ名で蔑まれ、クラス内でいじめを受けていた。

一方でイズミもまた、その容姿から「ちょっと可愛いからって調子に乗るな」との陰湿な妬みを受けていた。

イズミの一言で2人は仲良くなり、前半部は友達になった2人の青春群像劇であるが、タイトルにもある「狗」というのは、イズミが自らを「チワワ」と、美沙のことを「ブルドッグ」と形容し、生ある犬であることには変わりなく、チワワであろうとブルドッグであろうと本人には非はない、というようなことを言った部分からであろう。

イズミはそのようなことをあけすけに言う無邪気な女の子で、美沙もまた、そんなイズミに本音で向き合うことができたのだ。

そもそもの鑑賞動機が岡村いずみだったのでイズミに目が行きがちな序盤だったが、実質的な主人公である美沙を演じたmimpi*βも凄い。

朴訥とした口調、そしてそこに秘められたコンプレックス…彼女の美沙にだんだんと引き込まれていく。

哀しきニコイチ論

ちょっと前の世代で使われた言葉でニコイチというものがある。
例えば仲の良い女の子で一つのモノや考え方を共有する、ということで、昭和末期世代から少し下の現在22くらいの子たちまではよく耳にしていたのではないだろうか。

仲良くなった美沙とイズミにおいて、美沙は親友が親友としていてくれることが何よりの喜びであったのに対して、イズミは時として隷属化してでも、美沙とニコイチであり続けることが、彼女の喜びになっていた、

これが彼女たちの友情関係に対する僕なりの見解である。

当然ながら、時として隷属化を強いる強引な繫がり方は、一方に恐怖心を植えつける。

男の目線からすると、ただ重い、とか束縛とかいう言葉くらいでしか表現できないのかもしれないけど、イズミの美沙に対する占有化、ニコイチでありたいという心はだんだんと顕在化していった。

物語の後半から、美沙はイズミのことを恐ろしいと思い始めていく。

後半からはストーリーが急展開していって、イズミの中に巣食う狂気とか占有心とか残酷さとか無邪気さとか惨たらしさとかがぎゅっと凝縮されていく。

友情からの束縛は普通にあることだし、親友の二人においてイニシアチブを片方が握るなんてこともよくあること。

だから、本作は実際的な友情関係を描写したとともに実際的ではないスリリングな部分を描き出した濃厚な作品だと思う。

鬱屈と悶々。劇場を出た僕も悶々。

入場時に配布されたパンフレットには渡部亮平監督から撮影、照明を手掛けた辻克喜さん、音楽の近谷直之さん、そしていずみさんとmimpi*βさん。それぞれのメッセージが綴られていた。

特に辻さんと近谷さんのものには見応えがあって、限られた予算で、いかにして照明や音楽を工夫していたのか。そういう部分の話を聞いて、僕もこれからの鑑賞時に少し頭の隅に置いておこうと思った次第である。

ちなみに、この作品の軸にあるのはナポレオン・ボナパルトの「人を動かす梃子は恐怖と利益」というものである。それが最後までブレなかったから、イズミの変遷も視聴者側は受け入れることができた。

あとは、個人的に前半部分が『リリイ・シュシュのすべて』に似ているように思えた。地方都市の自然とうっ屈を描いたところも。

そして、僕の心の中に残ったいくつかの回収できなかった伏線。エンディング後のカットや、エンディング前のラストシーン。あるいは保健室で横たわる美沙の見た悪夢(あれは夢だったのだろうか)、イズミが美沙に似たパッツンの髪型で現れるカットである。

劇場を出る時に、前を歩いていた2人組の男の人が早速私見を述べあっていた。
僕もそこに入りたかった、そう思えるくらいには多義的な捉え方ができる作品である。

最後に、岡村いずみさんの可愛さを再認識したと同時に、彼女の跳ねるような演じ方、瞳と口角をくいっと動かして笑顔の段階を調節するところなど、『たべるダケ』のダーヨシでは見ることのできなかった素敵な一面を目にできて良かった。

今後も色々な媒体で活躍してほしい女優であり、これからも応援したい女優である。

レビュー自体は中途半端になってしまいましたが、濃密な95分間。無駄な時間はありません。

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