映画『誰も知らない』〜是枝監督の真髄〜

2014年一本目の映画は04年公開、是枝裕和監督の『誰も知らない』。

カンヌ国際映画祭にて、柳楽優弥が史上最年少の14歳で主演男優賞を取った作品です。

日本のとある、アパートでの市井

このように書けば、実際の生活感を細かに描いた作品とイメージされるでしょう。
アパートの一室を借り切り、一年間に渡りカメラを回し、演技経験のない子役たちを福島家の子供役に配し、余計な音楽や演出を施さない、ありのままのドキュメントに近い形で四季の生活を是枝監督は描き出しました。

しかし、長男の明(柳楽優弥)、長女の京子(北浦愛)、次男の茂(木村飛影)、次女のゆき(清水萌々子)は母親・けい子(YOU)のネグレクト=育児放棄によって監禁されていた状況だったのです。

けい子は長男の明のみを連れて、アパートへ引っ越し、大家に二人暮らしと偽った上で、スーツケースに次女、次男を入れて”持ち込み”、その後長女の京子がこっそりと入居して歪な家庭生活が始まった。
学校には通っておらず、おそらくは出生届の出されていない子供たちである。

はっきりと明言こそしていないが、父親は蒸発しており、また、四人の子供には複数の父親が介在していることが明らかになっている。作品中には木村祐一と遠藤憲一がそれぞれ父親役で出演。

そして、愛人との同棲生活のため、けい子は明に世話を任せ(育児放棄)、家を出て行ってしまう。

残された明は京子とともに弟と妹の世話を見るが、所詮は12歳の少年である。
ゲームセンターで知り合った男友達を家に上げて、一時的に不良の溜まり場と化した。
また、次男の茂、次女のゆきはベランダにすら出ることが禁じられていたが(京子は洗濯のときのみ可)、次第にけい子の植え付けたタガは外れていく。

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巣鴨子供置き去り事件

この作品は是枝監督が、1988年に起きた上述の事件をモチーフに作ったものである。
僕がこの事件を知ったのは映画を見たあとであったが、凄惨な印象を心に残した。
あくまでもモチーフであり、作品と完全には一致していないので、ご存知ない方は鑑賞後に確認することをおすすめしたい。

作品の回し方に関しては、主演の柳楽の演技によるところも大きかったが、限られた環境で、限られた資金で、限られた生活を送る子供たちの姿を綿密に映し出している。
なお、子供たちの「姿」に付ける形容詞を探したが、「哀しい」とか「儚い」とか「気丈な」とかいった言葉は不適当だと思った。ので、形容詞は省かせていただく。

先にも述べたが、余計な台詞や音楽、ナレーションを介在させず、部屋の生活とアパート周り、そして明の買い物という主に三点だけの舞台設定と子役の演技のみでストーリーを説明していく。

ともすれば不親切になりがちだが、時間をたっぷりかけて濃厚なストーリーを作った製作サイドの勝ちである。伸びた髪や、変わらぬ衣服、靴などの描写も秀逸。

One of my Best Movies,疑いなく。

可哀相、とか哀しい、とか、そういった感想を持つ人もいるだろう。
しかし僕の心を抉っているものは哀しさではないし、哀れみでも切なさでもない。なんか別の、せり上がる感情。

もちろん可哀相なシーンもベースにあるだろうけど、その感情だけでこの作品を観るのは勿体無いと思う。

ネグレクトという視点も大事なのだけれど、笑わない彼ら子供たちの目には何が写っているんだろうと考えたい。
明がしばしば買い物に行くコンビニの店員(加瀬亮が出ています)をはじめとした、周りの人間はどういう態度を取るのだろう、そしてその態度は子供たちに対して好ましいものなのだろうか。

自分だったら社会的にどんな対応をするだろうか、と自問したくなるような作品です。

柳楽くんと北浦さんの演技はただただ素晴らしい。この二人の笑顔が、作品の中で一つの救いかもしれません。

年初めの一本に選んで本当に良かった。
評価は★★★★★。

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