映画『歩いても 歩いても』〜夏川結衣の視点から「家族」を再確認〜

08年公開の是枝裕和監督の映画『歩いても 歩いても』を鑑賞。

原作、脚本、製作ともに是枝さん。

少し複雑な里帰り

Wikipedia通りのあらすじを述べるならば、15年前に他界した兄の命日に良多(阿部寛)は再婚相手とその連れ子とともに実家にやってくるという話。

まさに是枝監督のヒューマンドラマ全開という形だった。

とある夏の日に、とある一家の娘家族と息子家族が実家を訪れ、一日を過ごす。ただそれだけの話である。

ただし、その帰郷の動機付けとして息子(阿部)と娘(YOU)の兄の命日というものがあり、未だに母親(樹木希林)が彼の他界から抜け出せていないという描写がある。

阿部寛は失業中な上に、再婚相手(夏川結衣)の連れ子・あつし(田中祥平)からはまだお父さんと呼んでもらえないことなど、様々なことを隠しながら実家に赴くが、彼の秘密について伏線を張ったり暴いたりすることはない。

家族がゆえに気づいているのかもしれないが、言わないだけか。見る人が判断すればいいというスタンスか。

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印象的な森の中の階段や、畳、路端の植物など瑞々しいカメラワークはもちろんのことだが、この作品でやはり一番褒めるべきは家族の描き方だろう。

原田芳雄が演じる厳格な頑固親父。
樹木希林の家庭的ながらも恐ろしくもある母親像。

YOUの夫を演じた高橋和也は阿部寛の義兄にあたったが、この二人の距離感も絶妙だった。

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▲家族、親族の中の描き方が秀逸すぎる。 (C)2008「歩いても 歩いても」製作委員会

お義母さん、の使い方

原田芳雄、樹木希林コンビも本当に素晴らしかったのだが、個人的に一番良かったのは夏川結衣。

再婚相手の実家という、かなり縁が希薄なところに出向いたとあって、緊張もあっただろう。
姉と母親に話し相手の夫(阿部)を取られることが多く、味方は実質息子のあつしだけである。

それでも、義父の原田芳雄に対しては軽快に質問を飛ばして気分よく喋らせ、その一方で姑にあたる樹木希林に対してのフラストレーションの溜め方。

良多の兄が死んで、その命日が今回の帰郷の引き金であり、義父母が彼の話をとうとうとしていても、彼女には関係ないことなのだ。
良多に兄がいることすらも知らなかった描写もあった。

夏川結衣から見る家族というものは物凄くリアルで、これから家庭をゆくゆく築こうと考える身には恐ろしいばかりである。

ホームドラマでありがちな可視的な姑との対立とは違う。
だからこそ凄く身に染みたし、多分両親の実家で僕もこんな状況を見ていたと思う。

夏川結衣だけを追って見ていてもお腹いっぱいになるくらいには素晴らしかった。

是枝監督流の子供の取り方も良かった。
庭でスイカ割りに興じる子供の声をBGMにしたり、ドタドタ走り回る足音、ケンケンパッ(ちょっと違うかな)の掛け声。
両家庭の子供の描き方は無垢であった。

マリノス、ベイスターズという単語が出てきて京急が走っていたのでロケ地は横須賀か三浦の方かなと思っていたら、葉山が多かった模様。
海と空に頼らずに、三浦半島の方で綺麗な映像を取ろうとしたことに感動です。

★★★★★。

これぞ、映画。

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