映画『13階段』〜山崎努が抜群!構成も上手!〜

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2003年の映画『13階段』を鑑賞しました。

長澤雅彦監督、反町隆史、山崎努。



犯歴所持者が真犯人を暴く

高野和明の原作は10年以上前に読んだのでほとんど覚えていない。

映画を見ていてもなかなか記憶が呼び覚まされることはなかった。

仮釈放中の三上(反町)が元刑務官の南郷(山崎)とともに、10年前に千葉で起きた殺人事件の犯人として死刑宣告された樹原(宮藤官九郎)の冤罪を晴らそうという展開。

その捜査のスリリングな謎解きもさることながら犯罪歴を持った人間の描き方、また犯罪者を裁く側の刑務官についても細かい描写がなされていた。

闇をひたすら抱えている中盤までから一転して、捜査に能動的になる三上は少し大げさではあったが、南郷の刑務官時代の心の傷を丹念に時間をかけて見せることで、単なる男二人の冒険譚にならずに深みがもたらされていた。

南郷が「俺も人を殺したことがある」と話すが、それは刑務官として死刑執行に携わったということ。

死刑囚の刑執行にいたるまでの説明がとても丁寧であり、死刑囚側から、また刑務官側からの視点で人間味を感じさせながら描くバランスが最高だった。

喫煙から眼鏡まで全てが完璧

主演は反町であるものの、実質的な主役は山崎努。
10年以上前の作品なので当たり前といえばそうだが、若々しい山崎から滲み出る感情が胸を打った。

刑務官時代の死刑囚(宮迫博之)との会話は序盤にして最大の見せ場であると思う。

煙草の吸い方や眼鏡のかけ方に至るまで全ての動きが完璧だった。

反町も存在感がなかったわけではなく、少ない口数ながら三上のキャラクターを表現し、また服役囚ならではの視点で捜査に貢献していた。

この視点は原作を褒めるべきだが面白い。

黒幕を暗示しながらも登場人物と描きこむテーマを絞っていたから、南郷&三上、警察、依頼者、被疑者を含めた謎の部分、刑務官と焦点が絞れていた。

あれで三上の家族にまで手を広げていたら散漫になっていたと思われる。

ここも原作を覚えていないので原作通りなのであれば高野さんを褒めるべきだが。

タンポポ、パン、特殊な光加工技術といった細かな伏線も丁寧に回収。

ちなみに南郷の娘役の田中麗奈がこれまた若くて美しい。

『奇跡のリンゴ』『藁の楯』ではたたずまいでこちらの背筋を伸ばすような、頑固とも言える貫禄がほとばしっている山崎努だが、本作では動いてもこちらの心を揺さぶってくれた。

名演技ここにあり、という感じ。