映画『愛がなんだ』ネタバレ感想〜ストーカー同盟へのお誘い〜

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

仕事が少し早く終わった夜。
ちょっと飲みに行きたいな…っていう時はないでしょうか?

そんな時に気軽に誘うことができる友達というのは凄く大事な存在です。

当日の誘いにも応じる柔軟さ、連絡をしたらすぐに返してくれるレスポンスの良さ。
それを世間では「フットワークの軽い人」というような表現をします。

誘う側としては急な誘いにも来てくれる相手に対して「ありがたい」とも「便利」とも思うかもしれません。やはり断られるとある程度は少なからずダメージは負うわけで、自分に応えてくれる相手の存在というのは便利だし、ありがたいわけです。

一方、誘われる側としてはどんな心境なのでしょうか。
誰から誘われてもホイホイと応じて行くのでしょうか。
「誰か」からの誘いだから、喜んで向かうのでしょうか。

先日鑑賞した『愛がなんだ』では、好きな男の子からの誘いにはどんな状況でも応えたいという女の子が主人公になっています。

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



『愛がなんだ』のスタッフ、キャスト

監督:今泉力哉
原作:角田光代
脚本:澤井香織、今泉力哉
山田テルコ:岸井ゆきの
田中守:成田凌
坂本葉子:深川麻衣
ナカハラ:若葉竜也
葉子の母:筒井真理子
すみれ:江口のりこ

監督は『サッドティー』の今泉力哉監督。岸井ゆきのと成田凌が主演を務めています。

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映画『サッドティー』ネタバレ感想〜今泉監督が放つ色恋の傑作〜

2014年6月5日

あらすじ紹介

28歳のOL山田テルコ。マモルに一目ぼれした5カ月前から、テルコの生活はマモル中心となってしまった。仕事中、真夜中と、どんな状況でもマモルが最優先。仕事を失いかけても、友だちから冷ややかな目で見られても、とにかくマモル一筋の毎日を送っていた。しかし、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、マモルにとってテルコは単なる都合のいい女でしかなかった。テルコがマモルの部屋に泊まったことをきっかけに、2人は急接近したかに思えたが、ある日を境にマモルからの連絡が突然途絶えてしまう。

出典:映画.com

以下、作品の展開やネタバレに関わる叙述があります。ご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

フットワークが軽い人とは

『愛がなんだ』では、主人公の山田テルコ(岸井ゆきの)が、友人の友人の結婚式で遭遇したマモル(成田凌)に一目惚れ。

「彼が呼びたいときに、真っ先に連絡してもらえる女」であろうと、マモちゃん(マモル)からの連絡を待ちわびながら、毎日を過ごします。
簡単に言えば、彼が起きている時間はいつでも出動待機状態。マモちゃんの生活パターンを数ヶ月で把握し、金曜の夜の仕事後に連絡が来る可能性が高いことも学びました。

松岡茉優主演の傑作『勝手にふるえてろ』の主人公・ヨシカは、恋するあの人への思いを妄想することでこじらせていましたが、自己承認欲求の強かったヨシカと違ってテルコはまず相手(マモちゃん)ありきのスタンスです。

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映画『勝手にふるえてろ』ネタバレ感想〜こじらせ女子・松岡茉優を堪能しよう〜

2018年1月16日

彼の生活に介入しようとか、自分だけを見ていてほしいとかそういった欲求はあまり感じられません。
これは若葉竜也が演じたナカハラも同様なのですが、「大切な人が寂しい時に、真っ先に呼んでもらえる存在」であろうとします。

一般的に「フットワークが軽い人」というのは、誰からの誘いでも「行けるよー!」と駆けつける人。
繰り返しになりますが、やはり誘う方も断られるよりOKされた方が嬉しいし、そういう存在の人は誰からも「声がかけやすい」キャラクターとして認知されていきます。つまり人気者です。

色々な飲み会に出向くということは、それだけたくさんの経験や人数に触れることになります。人脈を大切にしている人はもちろん、いわゆるパリピというタイプの人たちも元はここにカテゴライズされていた人が多いかもしれません。

そういった一般的なフットワークの軽い人とテルコは異なります。
職場でも一人でランチをしたり、人当たりもそこまでよくなかったり。特定の誰かに「依存されたい」という依存性で生きているタイプの人間でした。
一歩間違えればストーカーですね。

岸井ゆきのの才能に惚れた

この作品でとにかく衝撃を受けたのは、主演・岸井ゆきのの可愛さです。
初めて見る女優さんでしたが、話し方も表情も仕草も服装も控えめに言って凄く好みでした。

ドキドキしながらマモちゃんに話しかけたり、世話を焼いてしまったり、すみれ(江口のりこ)のことを韻を踏みながら毒づいてしまったり。
自分の気持ちに嘘をつけないがゆえにこじらせてしまっている描写も上手でしたが、一番印象的だったのは表情です。

こちらの本編冒頭映像でも流れるテルコの「目」。
どちらかというと充血していて疲れている印象すら受けます。
その彼女の目に宿る輝き。マモちゃんに会えるというワクワク感。

また、すっぴん時の目の周りもテルコのありのままを映し出しているようで抜群でした。
すっぴんで完全に気の抜けた女の子とはどんな顔まわりをしているのか、とか。うまく言えないですけど。
この作品は「オフ」の状態の女の子(テルコとして)を描くのがとっても上手だったと思います。

終盤にはテルコとマモルが話し合いをするシーンを長回しで撮っていましたが、岸井ゆきののテルコは目線と口元の動きを用いて上手に感情の機微を表現していました。

内容も自分好みでしたが、岸井ゆきのという素晴らしい女優を知れたことが、何よりの収穫でした。

成田凌のマモちゃん

マモルを演じた成田凌に対しては、妻夫木聡っぽい印象を受けました。
成田凌はまだ25歳ながら30手前の青年役もさらりとこなし、いい歳のとり方をしているなと驚かされます。


注目してほしいのはテルコと一緒にお風呂に入るシーン。
もともと美容専門学校に通っていた彼の「本物の」シャンプーシーンは必見です。
テルコも心底気持ち良さそうでしたね…。こういう演出は実に素敵です。

『スマホを落としただけなのに』では、前歯を出してニカッと笑う姿が印象的だった成田凌。
本作ではその少年ぽい笑顔と歳を重ねて得られた深みが同居していて、作品のリアリティに大きな貢献をしていたのではないでしょうか。

鑑賞中、タナカマモルにムカついたとすれば、きっとそれは彼の勝利です。

プレモルと金麦

今泉力哉監督の『サッドティー』では「好き」ということの概念とは何なのかを、様々な登場人物を通してこちらに投げかけてきました。

「愛がなんだ」とタイトルにもなっている通り、本作では愛や好きの形をどのように表現するかを炙り出しており、その点では『サッドティー』とベースは近いものになっています。

メインとなるテルコ、マモル、葉子、ナカハラ、すみれの5人に対しては、セリフやシチュエーションから綿密なキャラ付けがされています。誰か特定の人間に感情移入せずとも、「この人のこの部分はわかるなあ」とか共感できる部分がきっとあると思います。

一方で視点としてはかなりテルコにフォーカスしたものが多くなっています。
彼女は主人公なので当然なのですが、『サッドティー』や『恋の渦』のような観察型の恋愛群像劇と比べると、視聴者は誰か一人に入り込むというよりは客観をある程度持ちながら見ていく作品なのかなと感じました。

余談ですが、この作品ではお酒がファクターとしてしばしば登場します。
マモルに買ってくるビールはプレミアムモルツなのに対して、自分の家で葉子と交わすお酒は金麦(発泡酒)というところも、テルコのキャラクター性が見えて好きでした。

宅飲み、朝帰り、クラブ。内と外との人間関係。
友達の少ない20代後半の社会人たちがどのように夜を過ごしているのか。
どのように新しい友達は生まれていくのか。

その叙述もリアルでした。

独身の社会人の方、特にお酒を飲む方は必見です!

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