映画『窮鼠はチーズの夢を見る』ネタバレ感想|成田凌のタバコの持ち方

タイトル画像
この映画はR15+指定です。本記事は喫煙部分に触れる箇所がありますのでご注意ください。

こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回ご紹介するのは2020年9月に公開された『窮鼠はチーズの夢を見る』

原作となったのは水城せとなさんのコミック「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」です。どちらも「七・五」のリズム。
タイトルの「窮鼠」(きゅうそ)は追い詰められたネズミという意味です。「窮鼠猫を噛む」ということわざが有名ですよね。

監督は今夏『劇場』が話題になった行定勲監督。この作品はR15+作品でいわゆる濡れ場も少なくないんですが、しっとりとした大人のベッドシーンを紡いでいます。そういえばロマンポルノ『ジムノペディに乱れる』も行定監督でしたね。

主演は大倉忠義さん成田凌さん

LGBTQを扱った映画という側面もある中で、今回は今ヶ瀬というキャラクターを演じた成田凌さんについて重点的に感想を書いていきたいと思います。



あらすじ紹介

優柔不断な性格から不倫ばかりしてきた大伴恭一(大倉忠義)の前に、ある日、妻から派遣された浮気調査員が現れる。その調査員は、卒業以来会っていなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉(成田凌)だった。彼は、体と引き換えに不倫を隠すという取り引きを恭一に提案する。恭一は拒否するが、今ヶ瀬の真っすぐな気持ちに触れるうちに、二人の時間に少しずつ心地よさを感じるようになる。

出典:シネマトゥデイ

予告編

大伴(大倉忠義)は、妻・知佳子(咲妃みゆ)がいながらも不倫を繰り返してしまう男。そんな中で知佳子が依頼した浮気調査の調査員として、今ヶ瀬(成田凌)という男が大伴に近づいてきます。

今ヶ瀬は大学時代の大伴の後輩。当時から大伴に好意を寄せており、浮気を見逃す代わりに自分と体の関係を持ってほしいと大伴を揺さぶっていきました。

『窮鼠はチーズの夢を見る』のスタッフ、キャスト

スタッフ、キャスト
監督 行定勲
原作 水城せとな
脚本 堀泉杏
大伴恭一 大倉忠義
今ヶ瀬渉 成田凌
岡村たまき 吉田志織
夏生 さとうほなみ
大伴知佳子 咲妃みゆ
井出瑠璃子 小原徳子

さとうほなみさんは「ほな・いこか」名義でゲスの極み乙女。のドラムスを担当されてる方ですね。大伴(大倉忠義)の元カノという設定ですが、今ヶ瀬(成田凌)とのマウンティング剥き出しなバチバチのバトルは最高でした。

また大伴の妻役を演じた咲妃みゆさんは元・宝塚歌劇団雪組のトップ娘役です。月組に在籍していた若手時代に番組や演目を拝見していただけに、個人的に感慨深いものがありました。

映画の作品情報についてはMIHOシネマさんの記事でもネタバレなしで詳しくご紹介されています。
こちらもぜひご覧になってみてください。

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

今回は“可愛い”成田凌

成田凌という役者さんは、カメレオン俳優と評されることも多い通り、様々な役を演じることができる方です。

『キセキ ーあの日のソビトー』では少し大人びたファンキーな大学生役を演じ、
『さよならくちびる』では女性ユニット「ハルレオ」のサポート役を務める骨太なかっこいい男を演じました。

一方で『愛がなんだ』では主人公・テルコ(岸井ゆきの)を翻弄するどうしようもない男を演じ、
また『スマホを落としただけなのに』では前歯を出してニカッと笑う少年っぽさが印象的でした。

今年の11月に27歳になりますが、キャラクターの幅も、そして演じられる年代の幅も広い俳優さんですよね。

そんな成田凌の今回の役どころは、主人公・大伴(大倉忠義)に大学時代から想いを寄せていた青年・今ヶ瀬(いまがせ)。「大伴センパイ」と擦り寄ってくる文脈が多かったこともそうですが、無骨さよりも柔らかさが前面に出たキャラクターです。

『愛がなんだ』で、すみれ(江口のりこ)に想いを寄せる時の甘える成田凌にも近かったと思いますし、『スマホを落としただけなのに』で見せていた、いたずらっぽい笑みもこの今ヶ瀬に共通するものでした。

かっこいいか、かわいいか、で言えばかわいい部類に入るものでしょう。

セリフから見る今ヶ瀬の柔らかさ

「キスして」
「やだよ」
「ケチ」

予告編でも出ていた今ヶ瀬と大伴のやり取り。チューを求めた今ヶ瀬を拒否る大伴に対して、今ヶ瀬は「ケチ」と口をとがらせます。
「口をとがらせる」という表現は、唇を前に突き出して不平不満を口にする、あるいは拗ねるという意味がありますが、ここでの今ヶ瀬は「(甘えを含んだ)拗ねる」行為と言い換えていいと思います。

また、今ヶ瀬は大伴のことを「大伴センパイ」「センパイ」と呼びます。
「先輩」ではなく「センパイ」です。これは文字化した時にどういう印象を持つでしょうか。

漢字で先輩と表記した時、そこから受ける印象はまず上下関係です。
一方で「センパイ」と記した場合、このカタカナ4文字からは柔らかく、好意の矢印といくらかの媚びが読み取れます。今ヶ瀬が大伴を呼ぶ場合は間違いなくこちらだと思います。

原作はコミックスですが、もしこの作品を文字だけに起こしたとしても今ヶ瀬の繊細さを日本語で表現できるのではないか。そう思えるほどに、成田凌の言葉遣いや声質には強烈で明確なキャラクターを感じました。

好きな人へ尽くす今ヶ瀬への既視感

ちなみに個人的に印象に残ったのは、今ヶ瀬のこの2つのセリフです。

「好きな人に呼ばれたら、すぐに飛んでいくような男なんですよ。俺は」

「頭洗ってあげましょうか?」

まずは前者から。好きな人(=大伴)による遅い時間に呼び出されたシーンだったと思いますが、忠誠心、本気度を表す一言でした。
これを聞いてまず思い浮かんだのが、『愛がなんだ』で成田凌と共演した岸井ゆきのが演じる、山田テルコという女性です。

マモちゃん(成田凌)に想いを寄せるテルコは、「彼が呼びたいときに、真っ先に連絡してもらえる存在」であるために、いつでも出動の準備を怠りません。マモちゃんの行動パターンを学習し、彼からくるかもしれない連絡を、チャンスを絶対に逃すまいと。

一歩間違えればストーカーですね。むしろストーカーに片足突っ込んでいるかもしれません。

そんなテルコと、本作『窮鼠はチーズの夢を見る』の今ヶ瀬は鏡に映したようによく似ています。
マモちゃんと大伴のだらしないところも、そういうダメなところも全部ひっくるめて愛する姿も似ています。

 

後者の「頭洗ってあげましょうか?」はシャワーを浴びにいく大伴へ掛けた言葉ですが、これも『愛がなんだ』を想起させるシーンで、マモちゃん(成田)がテルコ(岸井)にシャンプーしてあげる微笑ましいシーンが描かれています。

本作の成田凌の演技を愛でた方は『愛がなんだ』も楽しめるんじゃないかなと思います。未見の方はよろしければご覧になってみてください。

行動から見る今ヶ瀬の柔らかさ

今ヶ瀬の印象的なシーンとしては、大伴の部屋でスツールに膝を抱え込んで座るものがありました。

これはデスノートのL(松山ケンイチ)にも共通される描写ですが、膝を抱え込んだいわゆる体育座りのような座り方には実は「自分を守る」だとか、「安心感を得る」心理が隠されています。

大伴とポテチを食べている時もそうですね。
膝を立ててお腹を守るようにして、今ヶ瀬はソファに座っていました。


袖丈
萌え袖っていうんですかね。今ヶ瀬の長袖は常に余し気味だったのも印象的です。

大伴を見る時の視線もそうです。今ヶ瀬は頬杖をつきながら大伴の目を凝視します。
見るというより、見つめると言ったほうが適当かもしれませんね。

ねっとりとした視線は大伴への好意、興味をたっぷりと含んだものであり、また決して貴方のことを離しませんよという執念すら時に感じます。

横に座っている人に、頬杖をつきながらじっと見つめられることを思い浮かべてみてください。
こちらが気づき、視線を合わせ、一回外してもまだ見つめられている状況を思い浮かべてみてください。

「なんだよ」とか、「…なに?」とか。
気まずさと視線の圧に耐えきれず、きっと口に出してしまうと思います。だって普通こんなにじーっと見つめられることなんてなかなか無いです。明確な「何か」がない限り。

その「何か」は恋愛における「誘い」だったり、秘密を抱えている相手への「探り」だったりもするわけですけど、今ヶ瀬の場合は「誘い」を通り越した、大伴へのほとばしる好意でした。恋をする人間の瞳でした。

潤いを含んだ視線をヌルッと動かしながら、なめるように、覗き込むように大伴の反応をうかがうところも印象に残りました。「なめる」というのは比喩表現だけでなく実際に行われていたこともありますが、全体的に豊潤な、しっとりとした雰囲気の映画でしたね。

今ヶ瀬のタバコの銘柄

最後に今ヶ瀬とタバコについての感想です。

今ヶ瀬は喫煙者です。
部屋を(パンイチで)掃除中も、飲んでいる最中も、キッチンで料理を作るときも、今ヶ瀬はタバコを吸っています。
大学時代に大伴からもらったピンクのZippoを使い、大伴の部屋の黄色い灰皿には吸い殻が積み重なっていきました。もうちょっとこまめに吸い殻捨てようよと思ったのは内緒。

このジッポは大伴の元カノ・夏生(さとうほなみ)が大伴にあげたもので、夏生との再会時に今ヶ瀬は夏生の前でこれ見よがしにジッポを使います。夏生は現在も使っているのを見て彼の大伴に対する好意に気づき、宣戦布告を受け止めていましたね。


ジッポライター
使い捨てライターとは異なり、ジッポは部品の交換やメンテナンスをしてオイルを継ぎ足していくことで何十年も使うことができます。

加熱式タバコならともかく、紙巻きを賃貸の部屋で吸うのはヤニで汚れた壁紙の修繕費用がかかってしまう(現在は喫煙不可の物件も多いですよね)わけですが、それはさておき、今ヶ瀬は隙あらば「セブンスター」を口にくわえて火をつけます。

このセブンスターはタールが14mg。タバコの中ではかなり(刺激が)強く、煙の匂いも臭い部類に入ります。映画の中では描かれていませんが、大伴が大学時代に吸っていた銘柄なんでしょうかね。
今ヶ瀬は「あなたのタバコになりたいって思ってたんだ」と大学時代を回顧します。

今ヶ瀬のセブンスターの持ち方

そんな今ヶ瀬は、人差し指と中指をピンと伸ばし、手の甲(と爪)を相手方向に向けながらセブンスターを吸います。

様々なシーンで今ヶ瀬が柔らかさを醸し出していた中で、このタバコの持ち方というのは特に印象的でした。

女性的、男性的という区別が許されるならば、こうやって中指と人差し指をまっすぐに伸ばすのは、女性的で品のあるタバコの持ち方です。

一方で男性はタバコを挟む人差し指と中指を少し曲げる大伴のような持ち方や、手で口を覆うようにした挟み方が主流。
成田凌は『さよならくちびる』でもヘビースモーカーの役を演じていましたが、この時は指の関節を曲げて吸っていました。役作りとして細かいところまで気を遣ったことがよくわかります。

タバコをやめてしばらく経っていた大伴は、今ヶ瀬の吸いかけのタバコをもらいました。彼が出て行った後も、置いていった灰皿だけでなくセブンスターの箱がシンク棚に残されていたことで、喫煙者に戻った=今ヶ瀬を忘れることができなくなった描写がなされていましたね。

 

今回は成田凌さんが演じた今ヶ瀬について重点的に感想を綴ってみました。
映画を思い出して文字に起こすたびに、改めて彼の今ヶ瀬は圧倒的に柔らかくて可愛らしく、繊細だったと思えます。いやはや、本当に凄い。何でもできますね、この方は。

ちなみに映画の終盤、車で海に乗りつけるシーンは千葉の外房で撮られたようですが、行定監督の『きょうのできごと』(2003年)でも主人公たちが千葉の海に車で乗りつける場面がありました。(こちらは南端の白浜で、場所は『窮鼠はチーズの夢を見る』とは恐らく違うはずです)
興味のある方はどうぞ!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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