映画『うちの執事が言うことには』ネタバレ感想〜「お言葉ですが…」が恋しくて〜

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こんにちは。織田です。

今月公開された『うちの執事が言うことには』を観てきました。

高里椎奈の原作小説を久万真路監督、青島武脚本で映画化。
King & Princeの永瀬廉が映画初主演を務めています。



『うちの執事が言うことには』のスタッフ、キャスト

監督:久万真路
原作:高里椎奈
脚本:青島武
烏丸花穎:永瀬廉
衣更月蒼馬:清原翔
赤目刻弥:神宮寺勇太
雪倉美優:優希美青
雪倉峻:神尾楓珠
雪倉叶絵:原日出子
烏丸真一郎:吹越満
鳳:奥田瑛二

あらすじ紹介

名門・烏丸家の次代当主、花穎(永瀬廉)と、新しく執事となった衣更月(清原翔)を中心に描いた「御曹司」の物語。

映画.comさんでは以下のように解説されています。

高里椎奈の人気小説シリーズをアイドルグループ「King & Prince」の永瀬廉の映画初主演作として実写映画化。社交界の名門として名高い烏丸家第27代当主・烏丸花穎が留学先の英国から帰国した。しかし、彼を迎えたのは、花穎が絶大な信頼を寄せる老執事・鳳ではなく、まったく見ず知らずの仏頂面の青年・衣更月だった。突如行方をくらました花穎の父・真一郎が残した命令によって、花穎は不本意ながら衣更月と主従関係を結ぶ羽目になってしまう。新たに執事として仕える衣更月との微妙な空気が流れる中、花穎に上流階級の陰謀が降りかかる。頭脳明晰なメガネ男子の御曹司・花穎役を永瀬が演じ、同じく「King & Prince」の神宮寺勇太が赤目家の御曹司・赤目刻弥役、清原翔が執事の衣更月役をそれぞれ演じる。

正直テーマ設定と配役から、キラキラした浮世離れのコメディータッチを予想していました。
しかし、僕の予想は大きく裏切られます。

良い。人間味のあふれるこの映画は、予想以上に良いです!!

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以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

まず僕の心をつかんだのは、登場人物たちの演技の巧みさでした。
キャラクター紹介も兼ねて、主要人物に対する感想を書いてみます。

烏丸花穎(永瀬廉)

永瀬が演じている主人公の烏丸花穎。「からすま・かえい」と読みます。(以後文中で「カエイ」と表記)

主演の永瀬廉の演技に引き込まれたのが全てでした。

薄ら笑いのように、常に口元に微妙な笑みを携えていることで御曹司の余裕を表現。
諭すような柔らかい口調と、耳に優しい声も印象的でした。

後述しますが、カエイの人となりを表す演出や構成も上手で、そのクオリティに負けないくらい永瀬廉はカエイに向き合って演じていたと思います。

ちなみに飛び級で海外の大学に進学した18歳という設定です。実際に頭の回転は早いです。

衣更月蒼馬(清原翔)

清原翔の演じる「うちの執事」・衣更月蒼馬は「きさらぎ・そうま」と読みます。以後「キサラギ」と表記します。

清原翔さんは初めて目にする役者さんで、恥ずかしながらエンドロールを見るまで綾野剛だと思い込んでいました。

先ほどのカエイに対しても「御曹司の余裕」という表現を使いましたが、執事にも求められるのは「余裕」だと思うんです。
その意味で清原翔のキサラギは心憎いほどに余裕を醸し出し、序盤ではそれがカエイにとってうざったく感じたことでしょう。何とかキサラギをギャフンと言わせたいとしようとするカエイもまた可愛かったです。

キサラギは新任にも関わらず、カエイにあれこれと意見をしたり咎めたりします。

「お言葉ですが…」
「僭越ながら申し上げますと…」

全然申し訳なさそうに言わないところがカエイには生意気に映るのでしょう。
実際僕も物語序盤は口うるさいキサラギが鼻につきました。

でも、途中からキサラギの「お言葉ですが…」を楽しみに待ち望んでいる自分がいるんですね。
これは自分でもびっくりしました!

烏丸真一郎(吹越満)&鳳(奥田瑛二)

カエイを第27代当主に定め、突如世界へ無期限の旅行に出かけてしまった父親の真一郎。そしてカエイが幼い頃から懐いていた烏丸家の執事・鳳(オオトリ)。

二人の存在はこの映画に少しファンタジックな要素を与えている気がしますが、両者とも上手に「引き算」の演技をしていたように思えます。
カエイが全幅の信頼を寄せるオオトリの振る舞いとキサラギを見比べると、完璧に見えるキサラギにも青さが見えました。

赤目刻弥(神宮寺勇太)

カエイがパーティーで知り合った赤目刻弥(あかめ・ときや)は永瀬と同じKing & Princeの神宮寺勇太が熱演。

少し難しい役だったかなとは思いますが、本心は何を考えているのかわからなさそうなところは、ある程度表現できていたのかなと思います。

この作品は「贋作」というキーワードが出てきますが、赤目刻弥という男は何が本物で何がニセモノなのかを想像しながら見ると面白いと思います。

また赤目とカエイが出会ったパーティーの主催者・芽雛川(めひながわ)という御曹司役で前原滉、赤目の彼女っぽい存在の莉沙役で田辺桃子が出演しています。

雪倉峻(神尾楓珠)

ハウスキーパーと料理人を担当する使用人の雪倉叶絵(原日出子)の息子として、烏丸家に仕えることになった峻は神尾楓珠が演じました。

快活で元気が良い峻は、テンションの低いキサラギと対照的に烏丸家に活気をもたらします。

峻に対してはカエイも信頼を寄せており、自らのコーディネイトなどフットマンとしての役割を一任。キサラギの仕事を奪うための当てつけにも見えましたが、カエイのセンスを考えると納得のような気がします。

神尾楓珠が演じたこの役は、ともすると没個性的にも悪目立ちするようにもなりそうなところだったのですが、バランス感覚が優れているんでしょう。
雪倉の息子というプライドと、まだあどけない青年としての顔と、美優(優希美青)の兄としての責任感を兼ね備えた演技を見せてくれました。

個人的にはカエイとキサラギの次に良かったと思える配役です。

雪倉美優(優希美青)

雪倉叶絵の娘、また峻の妹の美優を演じたのは優希美青。

本作での美優は結構出番が多め。少し落ち着いた峻とは異なり、よく喋ります。

口が軽くてよく喋りますが、『ちはやふる 結び』の菫役に似ている感じのテンションかもしれません。

母親の代理として初めて給仕にやってきて、カエイと鉢合わせた時のやかましさは必見。キサラギの次に、カエイのことをよく観察しているキャラクターかもしれません。
落ち着いた人物が多い烏丸家にあって、賑やかさをプラスしている彩りのような存在です。

ちはやふる 結び タイトル画像

映画『ちはやふる 結び』ネタバレ感想〜瑞沢かるた部は続いていく!〜

2018年4月20日

ミステリーとしては凡作。しかし…

冒頭の解説で引用した通り、カエイを中心とした烏丸家には謎の陰謀が降りかかります。

この部分のミステリーという部分では正直レベルの高い作品とは言い難いのですが、それを補って余りある「御曹司の実際」を描いているところに好感が持てました。

それはすなわち、当主としてのカエイです。

カエイさまの日常

カエイのことをキサラギは「わがままで子供っぽい」と評しています。
僕も作品を観るまでは、カエイがいわゆるお金持ちの横暴な道楽息子で、それをコメディタッチに描いた映画になるのかなと思っていました。
カエイ「さま」と褒めそやされてヌクヌクと育った坊ちゃんだと勝手に思っていました。

しかし、実際のカエイは優しくて周りの人に感謝を忘れない温かい人でした。

キサラギが評した「わがまま」。それは利己的というよりも、カエイがまだ18歳で当主としての役割を知らない子供という要素が強いです。父・真一郎もオオトリも、カエイがまだ至っていないのを承知で当主に任命したわけで、それはキサラギと二人で一緒に成長していってほしいという思いが込められたものでしょう。

カエイの人間的な温かみにフォーカスした製作陣も素晴らしいと思います。
野良犬を助けて迎え入れたり、雪倉(母)を本気で心配したり、何より美味しい食事にちゃんと「美味しい」と言えるカエイ。なかなか普段の食事で言えることではないはずです。

若さゆえに物事の側面しか見えていない一方で、カエイは人と違った色彩感覚を持っています。
いつもは色の入ったメガネをかけて(色覚補正のメガネとは逆に、目に入る色覚を抑えるメガネだと推測されます)いるカエイでしたが、芽雛川のパーティーではメガネを外して出席します。

この時カエイはキサラギに対して
「このような場所では色のついたメガネをよく思わない者もいるだろう。持っていてくれ」
と言って渡すのですが、周りの人の気持ちを慮ることができる素敵なセリフだと思いました。

また、メガネを外したカエイがパーティー当初に感じた孤独感(ひそひそ話をされているという被害妄想)で、人々の周りに飛び交う色のついた紙吹雪のようなものも、カエイの独特な色覚を表す演出でした。「色」に関しては細かいところまでよく気を配っているなという撮り方がたくさんあります。

もう一つ、カエイの描写で良かったのが服装です。
前述のパーティーなど、外出の時は高貴なドレススーツで臨む姿が描かれる一方で(カエイやキサラギのスーツの選び方は勉強になります。スーツスタイルが好きな人は必見!)、お屋敷にいる時のカエイさまは実にラフな格好です。しかも同じ服を度々着ています。

これは一番予想と反する部分で意外だったのですが、いわゆるお坊っちゃまが家の中でも煌びやかな格好をしていると思ったら間違いで、一見質素な普通の服で過ごしているんですね。
僕の友達で由緒正しき家系の御曹司がいますが、彼も普段着としてはファストファッション量販店の服を着ていました。

細かいですが、このあたりにも演出の本気度を感じました。
カエイだけでなく、物語全体を通じて「質素」というものは作品を楽しむための一つのキーになってくると思います。

出演者や設定のイメージとは違い、よくまとまっている良作。
一方で小難しさはゼロなので気軽に観に行って楽しめる作品でもあると思います。

エンドロールに流れる映像のチョイスも上手なのでぜひ!