【映画化&アニメ化】『風が強く吹いている』の漫画を知っていますか?

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箱根駅伝を題材にした『カゼツヨ』

こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

お正月の風物詩のひとつである箱根駅伝。
東京・大手町を出発し、神奈川の芦ノ湖を中間点とした往復217kmを10人のランナーでリレーしていきます。

「山の神」と呼ばれ、4年間で3度の優勝に導いた東洋大・柏原竜二選手や、現在マラソンで活躍するスピードランナー・大迫傑選手も早稲田大時代は箱根路を快走して大いに沸かせました。

さまざまなドラマやヒーローが生まれるこの大会。
出場する関東の大学になじみがなくとも、箱根駅伝のファンという方は多いのではないでしょうか。

大会を放送する日本テレビ系列では2018年の今秋、箱根駅伝を題材にしたアニメ『風が強く吹いている』の放送を始めました。

三浦しをんさんの原作小説が06年に刊行。翌年のコミックス化や09年の実写映画化などを経て、堂々のアニメ化です。豪華な声優陣!

このアニメで初めて『風が強く吹いている』に触れた方も多いと思います。
今回は原作小説コミック版実写映画版に合わせて触れながら、『風が強く吹いている』の魅力をお伝えしていければと思います。



原作は三浦しをん渾身の長編小説

原作となった三浦しをんさんの小説は10年以上前に刊行。
多くの日本人が親しむ箱根駅伝をテーマに、弱小校「寛政大学」が箱根路に挑むさまをストレートに描き出しました。

高校時代に第一線からドロップアウトを余儀なくされた天才ランナー・蔵原走(カケル)が、転がり込んだ下宿先で出会った個性的すぎる9人の寛政大学学生たち。
カケルを勧誘した清瀬灰二(ハイジ)はカケルたちを前に、10人で箱根駅伝に出よう!と声高らかに宣言します。

自身がトップランナーだったからこそ、その壁の高さを知るカケルは反発します。
箱根はそんな甘いものじゃない。
素人だらけのこいつらで出られるわけがない。

駅伝を走ったことなんて当然ない他の住人も抵抗します。なんで俺たちが?そんなものに付き合っている暇はない!

それでもハイジの熱意に引きずられ、引っ張られ、自ら走ることを選んだ彼らは、寛政大学陸上競技部(駅伝部)として箱根の大舞台に向かって走り出していきました。

僕が読んだハードカバーの単行本は総508ページ。
主人公たちが下宿をしている「アオタケ」なるボロアパートや、周囲の環境(祖師ヶ谷大蔵あたりが舞台になっています)までこちらが鮮明に想像できるような描写が印象的で、陸上界における駅伝競技とは?といった基本的な背景から箱根駅伝のルールまで丁寧に説明されています。

それでいて、キャラクターたちにしっかりと血が通っているのは、三浦しをんという作家ならではの筆力というほかありません。

爽やかに、熱血に、当時の大学生の「いま」をあぶり出しながら。

まっすぐに進み続けるストーリーは文字通り、一冊の本を風が強く吹き抜けていく感覚でした。

個人的な印象ですが、アニメ版はこの原作にかなり忠実に描かれています。
アニメを見て気に入った人は原作を読んでもらえれば、キャラクターを頭の中で重ね合わせながら一緒にページをめくって走り抜けられると思います。

漫画版は全6巻

09年には林遣都小出恵介をW主演に据えて実写映画が公開されました。

結論から言うと、駅伝の持つ魅力、そもそも箱根にたどり着くための過程があまりにも薄い作品でした。

走行シーンは臨場感が欠けていて、そもそものキャラクター設定に作り手の甘さが感じられました。
カケルはそんな言い方をしない!と思うことが多々あり、役者陣の演技やキャスティングにも問題があるように思えてならず、この映画は個人的にはあまりおすすめできません。

『風が強く吹いている』の世界に魅了された方に推したいのは、実は漫画版
2007年にヤングジャンプで連載を開始し、コミックスは全6巻。原作者の三浦しをんさんもバックアップする中で、海野そら太さんが描いています。

原作が持つ爽快さ、真っ直ぐさは絵を用いることでより鮮やかになり、何よりキャラクターに人間味がぐっと増しました。

原作を読んでからアニメを観た方も大きな感動があったと思います。アニメーションによって動き、話すカケルたちは実に美しい。
それ以上の感動とキャラクターたちに秘められた物語が、漫画版では味わえるはずです。

原作を読んで大好きだった作品が、漫画版を読んでからはもっと好きになりました。
この『風が強く吹いている』と出会えたことは、当時ヤングジャンプを読んでいて本当に良かったなと今でも思います。

『風が強く吹いている』はどこが素晴らしいのかは、キャラクターに着眼して比較してみるのがわかりやすいです。
魅力的な彼らを、媒体別に紐解いていきましょう。

キャラクター紹介

それでは寛政大学のキャラクターを見ていきます。アニメ版での担当声優名、映画版での担当俳優名も併記しています。

清瀬灰二(ハイジ)

アニメ:豊永利行
映画:小出恵介

寛政大学4年生・ハイジさん。


▲漫画版のハイジ(右)とカケル

コンビニで万引きをして逃げるカケルを(自転車で)並走し、「走るの、好きか?」と問いかけます。

家賃3万円のボロアパート「竹青荘」にカケルを半ば無理やり押し入れ、自身も含めた10人の住人で箱根駅伝を目指すと高らかに宣言。
朝に叩き起こす役もみんなのご飯もつくり、練習メニューや箱根駅伝に向けた逆算まで、寛政大駅伝部に関わる全てのことをこなす寮長兼選手兼総監督的なスーパーマンです。

普段は優しいけれど、箱根駅伝に対しては並々ならぬ執念を燃やしていて、「ハイジの本気は止められない」とアオタケの面々も恐れるほど。

原作とアニメではハッキリとしたリーダータイプで、優しいながらも自らの夢を押し通すキャラクターのように見受けられます。


一方、映画版ではそのリーダーシップがさらに強調されていました。
小出恵介の声質や話し方も大きく影響していますが、キップのいいお兄ちゃんという印象。少しオラオラ度が強いですね。

漫画版のハイジは柔らかで優しい雰囲気が前面に押し出されています。
ニコニコしながら、マジになると絶対に引かないという芯の強さがにじみ出ています。

あとは単純にビジュアルがかっこいいんですよね。物語が進んでいってハイジの過去に迫っていくにつれ、彼の精神的な二面性が明らかになります。
その二面性を瞳の色で使い分けた海野そら太先生は本当に素晴らしい。

なぜハイジが走ることの意味をそこまで見出そうとするのか、その理由を高校時代まで遡って掘り出したのも上手でした。

蔵原走(カケル)

アニメ:大塚剛央
映画:林遣都


▲漫画版のカケル

寛政大学1年。

仙台城西高校時代は全国トップクラスのスピードランナーとして名を馳せたものの、監督を殴って退部。
とりあえず進学で上京はしたものの荒みきっていたある日、ハイジに見出されて(無理やり)アオタケの一員になりました。

ときに挑発的な鋭い視線は、アニメ版、漫画版で共通。ほとんど笑わないところも同じです。

漫画版のカケルは髪をツンツンに立たせて、よりとげとげしい印象。
その一方で驚いたり冷や汗をかくシーンが多く、東京での生活や竹青荘の仲間たちと過ごす中で様々な刺激や驚きを受けていることがよくわかります。

アニメ版では髪がぺったりとして少しモッサリしてるカケルですが、寡黙で頭の回転が遅い部分は漫画版よりもわかりやすく描かれています。
「箱根駅伝目指してます」Tシャツを揃いで着た時に出遅れたカケルを、双子が「走ること以外は大体おせぇな」と笑ったのはすごく良い描写。細かいところにアニメ版はよく気を遣っています。

実写映画では林遣都が演じていましたが、これは決定的にミスキャスト。
カケルの殻に閉じこもった性格と、走ることに対する欲望と、不器用な真っ直ぐさ。それらが何一つとして見えてきませんでした。

落ち着きという点ではアニメ版に、危うさという点では漫画版に軍配が上がりますが、結構見た目が違うので是非見比べていただきたいキャラクターの一人です。

蛇足ですが『風が強く吹いている』で一番好きなのはカケルです。
足が速い、それだけでハイジを虜にし、圧倒的な結果を残して周囲を納得させていくカケル。
そんな彼をハイジと同じように羨望の眼差しで見つめ、アオタケの面々と同じように彼の孤独に思いを馳せることも。

アスリートとして稀有な能力を持ちながらも放っておけないアンバランスな主人公。走ること以外は何もできないカケルと、目一杯走ること以外は何でもできるハイジの関係がたまりません。

ニコチャン先輩

アニメ:星野貴紀
映画:川村陽介


▲漫画版のニコチャン先輩(右)とカケル。奥の二人はジョータとジョージ

寛政大学4年生。二浪、二留の25歳。本名の平田彰宏はほぼ誰も呼びません。ニコチャンという呼び名はヘビースモーカーから。
アニメ版の掃除当番表には名前の代わりにタバコマークが記されています。あの演出は素晴らしい!

無精髭を蓄えたこのニコチャン先輩は、漫画、アニメ、映画でかなりキャラデザインが異なります。
ワイルドな風貌の映画、ロン毛を束ね、少し疲れた表情のアニメ、オッサン感が前面に出た漫画。文字情報だけの原作から、作り手がイメージを膨らませて三者三様になりました。

元々陸上経験者だったニコチャン先輩。
大きな体躯と立派な骨格は中長距離にはあまり向いてなく、高校を卒業してからは競技続行を諦めました。


経験者だからこそ、カケルの才能にはいち早く気づき、届かなかった夢や希望をカケルの走りに見いだします。
華奢なスピードランナーに対して羨望の眼差しを向けながらも挫折の痛みを乗り越えるニコチャン先輩は、ある意味で一番陸上経験者の心境に寄り添ったキャラクターかもしれません。

自分よりも優れた才能を持つ人を認める勇気。その人と一緒の舞台で走る勇気。

一見ぶっきらぼうですが、人間味にあふれた描写が印象的な彼に心を動かされた人も多いのではないでしょうか。

岩倉雪彦(ユキ)

アニメ:興津和幸
映画:森廉


▲漫画版のユキ(右)とカケル(左)。奥は王子

寛政大学4年。司法試験に合格済みの、クールを貫く元剣道部。
色白の肌に知的なメガネがトレードマークです。

音楽を愛し、クラブに通うシティーボーイはカッコ悪いことが大嫌い。箱根駅伝出場を持ちかけたハイジに最後まで抵抗したのもユキでした。
理屈っぽく斜に構える彼をカケルも最初は警戒します。

口ぶりやメガネ男子のビジュアルが印象的なゆえ、アニメ、映画、漫画を通じてキャラクターは一貫しています。髪が長いか短いか程度。
森廉が演じた映画版でも、嫌味ったらしい喋り方はしっかり再現されていました。


ハイジの提案したランニングを嫌がりつつも、意外と走れてしまう自分がいるのもポイント。ハイジがにらんでいた以上に、箱根駅伝の難関区間への適性が明らかになります。

漫画版では東体大の監督も思わず唸るほどの走りっぷりを披露。
スピードに乗って下り坂を駆け下り、カケルの体感速度を肌で知った時にユキが(心の中で)つぶやくセリフは、作品屈指の名言です!

城太郎(ジョータ)

アニメ:榎木淳也
映画:斉藤慶太

寛政大学1年。双子の兄。

通称ジョータ。作品内では弟のジョージと合わせて「双子」という呼び名でまとめられることが多いです。
高校までサッカー部で活動しており、基礎体力は高め。走ることに対してもポジティブに捉えるのは比較的早かったですね。
漫画版ではジョージとともに髪の毛がツンツンに立ち、そばかすを鼻の上に乗せています。

顔がそっくりなジョージといつも一緒にいて、一人で出てくるシーンはほぼ皆無。ランニングタイムもジョージと変わりません。

でも彼はジョージとの違いを認識していて、駅伝においては弟の方が才能があることにただ一人気づいています。いつも一緒に18年間を生きてきたから兄だからこそわかる、違い。

人当たりがよく、周りに友達も多いものの、本能的に人になつくジョージとは異なり、実は計算を頭に入れながら人間関係を築くことを自認しています。

マネージャーの葉菜子の恋心を知り、かつカケルが葉菜子に好意を持っていることに驚くなど、恋愛感情が豊かなキャラクター。

城次郎(ジョージ)

アニメ:上村祐翔
映画:斉藤祥太

寛政大学1年。双子の弟。

通称ジョージ。兄・ジョータのことは「兄ちゃん」と呼び、いつも横についています。

サッカー部で鍛えた脚力はジョータ同様、寛政部員の中では上位レベルでしたが、箱根駅伝出場を決めた直後に、ジョータとともに燃え尽き症候群に陥ります。

箱根の試走をしたいと提案したハイジに向かって「その日は草サッカーの助っ人に誘われている」と反発。予選会で全国トップクラスの選手との差を思い知って、これ以上頑張ることの意味を見つけられなくなってしまいました。

箱根の本番では走ることと別のことが頭をもたげてふわふわと浮き足立ってしまいました。ジョータに比べると本戦では少し可哀想な扱いになっています。

ジョータの項で書いた通り、走るポテンシャルは兄より優れているようです。
兄同様、女の子にモテたいという欲望が強い男の子。
アニメ版では料理がまったくできないことが明かされました。

坂口洋平(キング)

アニメ:北沢力
映画:内野謙太


▲漫画版。(手前から)キング、ムサ、カケル、神童

寛政大学4年生。キングの通称はクイズ王から。

クイズ番組が好きで、録画してもらった番組を観ながら一人で回答するのが大好き。元サッカー部で、ハイジもその脚力に期待しています。

ユキやハイジと同じ4年生ですが、就活に不安を抱えており、アニメ版では駅伝に最後まで反対していました。
強気な言動に反して肝っ玉が小さく、レース前にはいつもナイーブに。そんなキングをムサや神童が優しく支える描写が印象的でした。

またキングは、媒体によって大きく描写が異なるキャラクターです。
原作ではそこまでおしゃべりでお調子者ではないですが、それに近いのがアニメ版


ただし前述のニコチャン先輩よりも骨格ががっしりしたビジュアルで描かれており、就活を理由にハイジに抵抗するときもやや粗暴な印象を受けました。
イメージとしては漫画版のニコチャンに近い印象。

内野謙太が演じた映画版では、ファンキーな帽子をかぶったクイズオタクを演じました。イメージ的には神童っぽいビジュアル。
クイズの要素に特化したキャラクターでしたね。

漫画版では関西出身という設定で、面長のすらっとしたシルエット。同学年のユキとよくやり合っており、お互い弱みを見せないようにしています。

杉山高志(神童)

アニメ:内山昂輝
映画:橋本淳

寛政大学3年生。

通称の神童とは、育った山奥の田舎でつけられたもの。
いわゆる過疎集落で、往復10kmの山道を歩いて通っていました。

純朴で優しい青年として描かれており、ムサからは絶大な信頼を寄せられています。雪が積もるのを見たことがないムサに対して、実家においでよと誘ういい人。雪国(山形県)出身。

ハイジの負担を減らすべく、寛政大駅伝部の渉外を担当。後援会への勧誘や部費の管理を一手に担いました。

ランニングシューズをいち早く買うなど、アオタケのメンバーでは早期に走ることに向き合う一方、漫画版では「一番冷めていたのは俺だから」と心の中で独白しています。
なお、一人称は。彼女持ち。


漫画版での神童の奮闘ぶりは泣けます。
彼がなぜ箱根を目指す道を選んだのか。
神童とはどういう意味なのか。

田舎から上京してきた普通の大学生が、いろいろなものを背負いながら頑張る姿には胸を打たれました。

ムサ・カマラ

アニメ:株元英彰
映画:ダンテ・カーヴァー

寛政大学2年生。ケニアからの留学生ですが、いわゆる国費留学生でスポーツ特待生とは異なります。
「黒人が足が速いというのは偏見デス」は作品を代表するセリフとなっています。

母国では車の送迎で通学しており、お坊ちゃんの部類。日本語を流暢に操り、難しい言葉も神童に聞いて積極的に吸収しています。


運動キャラではないムサですが、2年間(銭湯で)絶えず目を光らせていたハイジがにらんだ通り、肉体はアスリート並み。
しっかりとしたトレーニングを積んでいくと、たちまち戦力として計算できるレベルに成長しました。
持ちタイムとしては寛政大で上位に入ります。

語尾は必ず丁寧語。同学年の王子には「さん」を付けるものの、年下のカケルのことは呼び捨てで呼んでいます。
一方でジョータとジョージについては他のメンバーと同じく「双子」。
このあたりが彼ら双子は報われませんね。

箱根駅伝についてまわる「留学生」というテーマについて考える機会を与えてくれる描写が多いのも印象的です。

柏崎茜(王子)

アニメ:入野自由
映画:中村優一

寛政大学2年生。
伊達男ヘアと長いまつげが印象的な通称・王子。

とはいいながらも、内面は王子様とほど遠い漫画オタクです。実写版では中村優一が演じましたが、3つの媒体を通して最もキャラデザが一貫しています。大学では漫画研究会のサークルにも所属。
木造アパート2階の自室に漫画のお城を形成して床をきしませ、階下のカケルを苦しめます。

スポーツとは縁のない生活を送ってきた色白の王子は運動神経が鈍く、タイムもまったく上がりません。
本当に全力で努力しているのか、とカケルからはかなり厳しい言葉や態度を突きつけられますが、意外とメンタルは強く、マイペースで練習に取り組みます。

遅いのは僕のせい、ではなく、走らなきゃいけないこの環境のせい、といい意味で責任転嫁できる図太さを持ち合わせる王子。
ハイジからやめろと言われたデニムでのランニングもやめようとしません。


特にアニメ版の描写は秀逸で、彼の漫画への知識、感情豊かなリアクション、頑固さが原作や漫画版を上回る熱量で描かれています。
ニコチャン先輩やユキのセリフに漫画のシーンを重ね合わせるオタクぶりは、映像化すると非常に引き立ちます。

白Tシャツのメッセージもバリエーション豊か。
フレームアウトぎりぎりのところにいても必ず何かしている王子からは、作り手の愛が伝わってきます。

一番速いカケルが一番遅い王子に抱く不安や苛立ちも、最もアニメ版が丁寧に、オリジナルの演出もプラスして描いていました。
カケルとハイジに次ぐメインキャラクターといっても過言ではないでしょう。

勝田葉菜子(ハナちゃん)

アニメ版の良いところをもう一つ挙げると、駅伝部のマネージャーを務める葉菜子(ハナちゃん)の使い方とキャラデザインが素晴らしい点です。
漫画や原作ではカケルたちと同じ寛政大学の1年生という設定でしたが、アニメではあえて高校生に変更。

自転車にセーラー服をなびかせてしばしば登場します。


漫画や映画では黒髪の純朴そうな女子として描かれたハナちゃんは、すっきりとしたボブを携えて登場。
タイムを計ったり、ランニングに並走したり。
パーカーとハーフパンツ姿がすごく可愛い!

料理が下手なこと(自覚ナシ)もアニメ版では明らかにされ、それと同時にカケルと王子の味音痴ぶりも明らかになりました。

原作のハナちゃんも漫画版のハナちゃんも好きですが、アニメ版の彼女はさらに一段上を行っている印象です。

僕が漫画版を推す理由

僕の予想していた以上に、アニメ版では丁寧に時間をかけて寛政大駅伝部の内面を描きました。
原作からの積極的な改変や、キャラクターに吹き込んだ新たな一面。
オリジナルの読み込みと絶え間ないリスペクトが感じられる良いアニメです。

一方で、コミックス版の圧倒的な魅力はライバルの存在。

すなわち、東体大のです。


▲漫画版の榊(右)とカケル。表紙に出てくることが彼の重要性を物語っています

なぜ、彼はカケルに執着するのか

カケルの高校時代のチームメイトとして紹介される
カケルが起こした部内不祥事により、最後の大会に出られなくなった榊は、東京でカケルを見つけるとしつこく付きまとって挑発します。

正直なところ原作アニメ版の榊とは、ウザくて粘着質で、カケルに対して恨みを持っているという印象。彼が在籍する東体大も、寛政大のやられ役に回るフラグが至る所に立っている気がします。


漫画版の榊も、序盤はウザくて小物感が半端なくて、加えてガキっぽいキャラクターです。
出身の仙台なまりを交えながらカケルのことを執拗に意識し、寛政大の他のメンバーのことも煽ります。

羨望、嫉妬、憎しみ。
カケルへの攻撃的な態度。
しかし、その裏には、自分が最もカケルの強さを認めており、近づきたい、追い抜きたいという純粋な渇望がありました。

漫画版では、高校時代に雪の積もったグラウンドにスコップを持って一人現れ、「みんなが休んでいる時にトレーニングして差をつけるっちゃ」と意気込む榊が描かれています。
すでに先んじてカケルが雪かきを行っており、その姿勢に榊はショックを受けるのですが、白い息を吐きながらカケルは榊に問います。

「榊、なんでお前は俺に付き合ってくれるんだ?」

榊は答えませんでしたが、それは彼が陸上をカケルと同じくらい好きだからです。カケルほどの才能がないとわかってはいながらも、違うアプローチでコツコツと努力して走ってきたからです。

カケルも榊も不器用で、結局漫画の中でもぶつかり合いばかりでした。
それでも、榊が一方的に悪いように見えないのは、彼を重要な人物として丹念にキャラ付けした製作側の努力の結晶だと思います。

ライバルという意味では、榊だけではありません。
彼が籍を置く東体大も、漫画版では相当なウェイトを置いて描かれています。これは原作からの大幅なアレンジです。

榊とカケルの高校時代の先輩に当たる古賀。
プレーヤーを諦め、マネージャーに任命された松平。
ニコチャン先輩が惚れ惚れした華奢なスピードランナー・丸谷。
彼らを束ねる監督。

箱根の上位を目指す準強豪としてのプライドと重圧が、それぞれのキャラクターの心情描写によってあぶり出されています。

カケルや六道大の藤岡、それにスポーツ留学生のような飛びぬけた存在のランナーは東体大にはいません。
その中で、どうやって勝ちにいくか。

駅伝競技としては一番リアルに即したチームだと思いましたし、彼らにも寛政大と同じように、僕は感情移入をしました。
物語にライバルが存在する理由。
それを教えてくれたのが海野さんの描いた東体大だと思います。
彼らは単なる引き立て役ではありませんでした。

原作はとにかく爽快でした。
アニメ版は、さらにキャラ付けが色濃く施され、オリジナル以上に秀逸でした。

アニメを見て『風が強く吹いている』に興味を持った方。
箱根駅伝を愛してやまない方。
スポーツ漫画における勝ち負けの向こう側を知りたい方。

そんな皆さんに、ぜひコミックス版を読んでほしい。
大好きな本作品の魅力が、一人でも多くの人に届いたら嬉しいです。

※もともと入手が困難な作品でしたが、2018年12/6現在Amazonでは結構な高値で販売されています。
古本屋さんなどで見つけたら買いだと思います。

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