映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』〜ギャルも歳をとるんです〜

今夏公開された『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を観てきました。

2011年に公開された韓国の映画『サニー 永遠の仲間たち』をリメイク。コギャルカルチャーをフィーチャーした1990年代後半の日本を舞台にしています。

大根仁監督が脚本も担当。

出演は篠原涼子、広瀬すず、池田エライザ。コギャルをテーマにしている特性上、女性キャストが多いのが特徴です。

(C)2018「SUNNY」製作委員会

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女子高生が時代を作っていたあの頃

安室奈美恵さんの引退に合わせたように、この作品では安室ちゃんの曲がフィーチャーされています。「SWEET 19 BLUES」は映画の印象的なシーンで使用。

他にもTRFや小沢健二の曲を象徴的な存在にして撮られた映画です。

コギャルファッションの女子高生がテーマの1つなので、アムラー後の世代をフィーチャー。
ルーズソックスにラルフローレンのカーディガンがブームになっていた時代ですね。

女の子にとって高校生活≒女子高生とは特別なアイコン。
とりわけ当時は女子高生という集団、ジェネレーションが日本の中心として存在感を発揮していた時代です。

援助交際やオヤジ狩り、クラブへの出入りやドラッグなども社会問題になりました。
不良というレッテルを貼られることもあれば、最先端の象徴としてファッション誌のスナップを飾ることも。

男子高校生でギャル男や裏原系のストリートボーイが00年前後に流行ったのと同じで、「ちょっとキケン」な感じがかっこ良いとされていたあの頃です。この作品でも大学生の三浦春馬がクラブのDJとして少し危険な香りを醸し出しています。

マクドナルドで駄弁ったり渋谷に繰り出したり。存在感をウザいほどに振りまくのが彼女たちのステータスでした。ある意味動物の本能的なところと言ってもいいかもしれません。

作中では、篠原涼子ら元ギャルのおばさま方が飲食店で現在の高校生たちを眺めながら「今の子たちはおとなしい」と話すシーンがあります。

制服を着て女子高生に擬似タイムスリップ(C)2018「SUNNY」製作委員会

あの頃に女子高生だった人たちがノスタルジーを感じることのできる作品でしょう。彼女たちと10歳違う僕ですら、懐かしいと思うんですから。

アルバローザ、LOVE BOAT、egg、くちばしクリップ…このあたりの再現力は見事としかいうほかないです。小学校の頃、体操着をギャル系のショップバッグに入れていた子の人気ぶりを思い出します。『モテキ』でもそうでしたが、大根監督は在りし日のカルチャーを描いて人の心の奥底から懐かしさを引き出すのがとっても上手い…。

ストーリーについて

90年代後半にギャルだった女性陣を演じるのは、篠原涼子、渡辺直美、小池栄子、ともさかりえ、板谷由夏。

彼女たちが再び集まるきっかけを作った芹香を演じた板谷由夏は、降板した真木よう子の代打でしたが素晴らしい演技でしたね。このキャスティングは大正解です。

キャストプロフィールは公式サイトでも丁寧に紹介されています。

一方で彼女たちの高校生時代を演じたのは広瀬すず(奈美=篠原涼子)、山本舞香(芹香=板谷由夏)、富田望生(梅=渡辺直美)、野田美桜(裕子=小池栄子)、田辺桃子(心=ともさかりえ)、池田エライザ(奈々=?)の5人。

当時と現代の設定がクロスするストーリー。映画.comの解説からあらすじを引用します。

2011年に製作され、日本でもヒットした韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」を篠原涼子、広瀬すずの主演、「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督でリメイクした青春音楽映画。90年代、青春の真っ只中にあった女子高生グループ「サニー」。楽しかったあの頃から、20年以上という歳月を経て、メンバーの6人はそれぞれが問題を抱える大人の女性になっていた。「サニー」の元メンバーで専業主婦の奈美は、かつての親友・芹香と久しぶりに再会する。しかし、芹香の体はすでに末期がんに冒されていた。「死ぬ前にもう一度だけみんなに会いたい」という芹香の願いを実現するため、彼女たちの時間がふたたび動き出す。現在の奈美役を篠原、高校時代の奈美役を広瀬が演じるほか、板谷由夏、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美らが顔をそろえる。90年代の音楽シーンを牽引した大ヒットメーカー、小室哲哉が音楽を担当。

末期がんに冒された芹香(左)は奈美に「もう一度SUNNYのみんなに会いたい」と頼みます(C)2018「SUNNY」製作委員会

板谷由夏演じる芹香が末期ガンに冒されているのを知った奈美が、かつての仲間を探し出すんですね。
当時あれだけ馬鹿騒ぎをして一緒にいた仲間なのに、今では消息がわからない。探偵(リリー・フランキー)の協力を得て奈美は他の5人を探します。

この作品で上手いなと思うのが、奈美のそのポジティブな記憶があくまで彼女の恣意的なものだったということ。広瀬すずたちを使った高校生時代のシーンでは、実は楽しくないことはたくさんありました。
淡路島から転校してきた芋っぽさ満点の奈美。彼女が東京のコギャルになるまでは、辛い障壁がたくさん待っていました。

淡路島から転校してきた奈美(C)2018「SUNNY」製作委員会

でも彼女の中ではあの当時が最高な思い出として記憶されてるわけです。美化とまでは言いませんが、こういうのって皆さんにも当てはまると思うんですよね。

ここから作品の展開に触れる部分が出ます。
ネタバレとなるため、未見の方はお気をつけください。

SUNNYの意味

SUNNY(サニー)という題名は彼女たち6人の仲良しグループ名。それぞれの頭文字をとった名称は00年代に入ってからもポピュラーで、僕の高校にも6文字名称の女子グループがありました。もしかしたら今でも当たり前に使われる手法なのかもしれません。

S[Serika]
U[Ume]
N[Nana]
N[Nami]
Y[Yuko]

左からYuko,Serika,Nami,Ume,Nana,Shin(C)2018「SUNNY」製作委員会

SUNNYは5文字ですね。6人グループなのに5人。もうひとりは、ともさかりえと田辺桃子が演じた心[Shin]なので芹香と一緒にSに包含されているという向きもあると思いますが、個人的には別の意味があると思います。

SUNNYという名前を提案したのは心。

彼女にとって大切な、大好きな他の5人を名称にしたのが実際ではないでしょうか。SUNNYは形容詞とはいえ、末尾にSを付けて誤用でSUNNYSにしてもなんとなく意味は通じます。

あえて5文字にしたのはSUNNYという単語を使いたかったということ以外の意味もあるように感じます。

女子高生時代から約20年が経った中で、一番悲惨な状況に陥っていたのは心だったかもしれません。つらい描写が多かったですが、それだけに作り手が何かしらのメッセージを持たせたのでは?

なおタイトルにもなっている小沢健二の「強い気持ち・強い愛」は、個人的によくわかりませんでした。リリースされた95年当時はまだ小さく、リアルタイムで聞いていなかったことが大きい。選曲はとても懐かしいものばかりでしたが、この曲だけはピンときませんでした。

現実味のない遺言

この作品の魅力であるとともに欠点にもなっているのが、冒頭でも述べた「あの頃」への執着です。

「あの頃は馬鹿だったけど毎日が刺激的で楽しくて」

それはすなわち現代のティーンに対して「つまらない」と言っているようにも聞こえます。時代を表す世相や小道具でノスタルジーを誘うのはもちろん大正解なんですが、キャラクターたちが「あの頃は良かった」とこれだから今の若者は論を振りかざすように映るのは残念でした。
本作のリリー・フランキーのように「これだから元コギャルは」とよくないイメージを持っている人もいるわけですしね。

「私たちのあの頃が至高」だけではなく、彼女たちが「現代の」女子高生の良いところを見つけることができれば、より若い層にも響いたのかなと思います。
もう一度制服を着てみたい、ならば現代の女子高生とミックスするとか。

ファーストフードでやかましく写真を撮る90s。手を使っていかに顔を小さく見せるかがコンセプト(C)2018「SUNNY」製作委員会

もう一つ、芹香の遺した「遺言」がよくわかりません。
20年が経ち、色々な苦しい現実にぶち当たっている彼女たちに差し伸べられた芹香の救いの手。
奈美は高校生の娘とうまくいっておらず、梅は不動産営業で罵られ、玉の輿に乗った裕子も旦那の浮気に悩み。アルコール依存症でボロボロ、奈々に至っては消息がつかめません。

本当にそれでいいのか?
彼女が望んだことなのでいいんでしょう。世の中には頑張るとかリセットボタンを押すとかで、どうにかなることだけではないというシビアな部分を描いたのかもしれません。

お金という形で救済を受けた梅や心にとっては、芹香はきっと命の恩人となるでしょう。
でも、大人になった彼女たちの友情の証ってそこなの?と疑問が残りました。

芹香の葬式に集まり、惜別のダンスを披露する4人(C)2018「SUNNY」製作委員会

 

広瀬すずと山本舞香

主人公・奈美の高校時代を演じたのは広瀬すず。
周りの女子たちとジャングルのような東京に驚きながらも飛び込んでいく危うさや素直なところは『海街diary』を感じさせるキャラクター。

やばそうな家庭で育つ姿が描かれていますが、一つ一つ背伸びをしながら女子高生になろうとしていくところが可愛いです。
これは応援したくなるというか、親近感がわきますね。バカにされてもへこたれず頑張る姿が嫌味にならないのは、色々なジャンルの役を演じてきた広瀬すずだからこそなのかなという気がします。

家での関西弁もまた良い(C)2018「SUNNY」製作委員会

そして、抜群の存在感を見せていたのが芹香役の山本舞香。
大人になった芹那を演じた板谷由夏も良かったですが、山本舞香の芹香からは一番、あの頃の女子高生っぽいカリスマ感がビンビンと伝わってきました。

グループの中心的存在として学年でも顔が利く立場でありながら、奈々のように人を見た目で判断することもありません。

芹香(右)を演じた山本舞香(C)2018「SUNNY」製作委員会

男なんていらねーよと豪語する姿すら、後の板谷由夏を考えると納得です。日焼けした肌に強い眉。凛とした目鼻立ち。首元の清涼感。
奈美や奈々が可愛いという路線だとすれば、芹香は明らかに「強い」んですよね。茶髪の生徒が多い中で、黒髪を貫いていたのも差別化としては大正解。

山本舞香さんを見るのは実は初めてでしたが、これからも注目していきたいと思えるほどの存在感でした。

男の僕にもかなり突き刺さる映画ではありました。
現在30歳から40歳くらいの女性には肌感覚で思い出せる「あの頃」が詰まった作品だと思います。それだけ90年代後半の女子高生文化は強烈でしたから。

もしかしたら元コギャルの娘を持つ親御さんが見ても面白いかもしれません。
世間はノストラダムスの世紀末に本気で慄いていましたし、奈美の兄貴がそうだったように今よりずっとアニメへの風当たりは強かった。そんな時代です。伊東家の食卓から生活の知恵を借りるあの時代です。

一方であの時代以降に生まれた子たち、本作で高校生時代を演じた女優たちもそうでしょう。彼女たちにとって、この作品がどう映るのかは非常に気になるところ。

できれば違う世代の人と観て、お互いの生きる時代のトレンドを再評価する、なんてことになれば素晴らしいと思います。

★★★☆☆。

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