映画『恋は雨上がりのように』ネタバレ感想〜デジャヴのデートが面白い〜

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こんにちは。織田です。

2018年の映画『恋は雨上がりのように』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
原作は眉月じゅんのコミックス。『帝一の國』などの永井聡監督のもと、小松菜奈と大泉洋を主演に据えています。

テレビアニメ化もされている作品ですが、原作コミック、アニメともにこれまで通っておらず、この映画で初めましてという形での鑑賞となりました。

これまでの出演作などで小松菜奈が培ってきたクールな部分を上手に利用したツンデレ設定がお見事。
彼女の代表作と呼ぶには言い過ぎかもしれませんが、主人公のイメージが出演女優にここまでぴったりと合致する映画もなかなかないのではないでしょうか。

運動部に入っていた人、サービス業の店舗でアルバイトをやっていた人が感じることのできるであろう“あるある”も盛り込まれた青春作品です!



『恋は雨上がりのように』のスタッフ、キャスト

監督:永井聡
原作:眉月じゅん
脚本:坂口理子
橘あきら:小松菜奈
近藤正己:大泉洋
喜屋武はるか:清野菜名
加瀬亮介:磯村勇斗
吉澤タカシ:葉山奨之
西田ユイ:松本穂香
倉田みずき:山本舞香
久保:濱田マリ
九条ちひろ:戸次重幸
あきらの母:吉田羊

主人公たちのライバル校のスーパー1年生・倉田を演じた山本舞香は昨年鑑賞した『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の熱演ぶりが目を引いた女優です。時系列としては本作の方が『SUNNY』よりも前に公開されました。

また主人公・あきらの幼馴染であるはるかを演じた清野菜名『TOKYO TRIBE』でその身体能力に感嘆させていただきました。

TOKYO TRIBE タイトル画像

映画『TOKYO TRIBE』ネタバレ感想〜清野菜名と坂口茉琴が凄いぞ〜

2016年12月8日

2人とも高校の陸上部に所属している設定です。山本舞香が演じる倉田は短距離、はるかは中距離。
山本舞香も小学校から空手をやっていただけに、力強さが演技の節々に感じられました。

あらすじ紹介

陸上競技に打ち込んできたが、アキレス腱のけがで夢をあきらめざるを得なくなった高校2年生の橘あきら(小松菜奈)。放心状態でファミレスに入った彼女は、店長の近藤正己(大泉洋)から優しい言葉を掛けてもらったことがきっかけで、この店でアルバイトを始めることにする。バツイチ子持ちである上に28歳も年上だと知りながらも、彼女は近藤に心惹(ひ)かれていく。日増しに大きくなる思いを抑え切れなくなったあきらは、ついに近藤に自分の気持ちを伝えるが……。

出典:シネマトゥデイ

アキレス腱断裂で陸上から離れた女子高生・あきら(小松菜奈)バイト先の店長(大泉洋)に恋をしました。

年の差どうなるの?未成年の高校生と雇用側という社会的側面どうなるの?という年齢のカベが純粋な2人にまとわりつくのかと思いきや、その足枷に支配されるだけの恋愛ドラマではなく、あきらと陸上(短距離走)、あきらと部活の仲間(はるか)の関係性についてもしっかりと答えを見出していた映画でした。

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

小松菜奈がはまり役

原作を読んでいないのでオリジナルについてははかりかねますが、この作品は小松菜奈という女優の魅力をたっぷりと主人公・あきらに落とし込んでいます。

小松菜奈が演じるあきらは基本的に無愛想でマイペース。
同級生兼バイト仲間の吉澤(葉山奨之)の好意と呼ぶにはあまりにもストレートすぎるラブコールにも、バイト先のイケメン先輩である加瀬(磯村勇斗)の賄い攻撃(ハート付き)にも、決してなびこうとしません。

彼女は、人を冷たい目でじっと見ます。店長(大泉洋)「いつも君には睨まれている」とタジタジになるのもわかる気がします。
タチバナタチバナと必死に視界に入ってこようとする吉澤に対してはもはや無視に近い状態です。

自分にとっての「必要」と「不要」をしっかりと分けることができる一方で、周りの人が飛び込んでくることができるだけの懐の深さを、彼女は持ち合わせていませんでした。

日常的な言葉で言えばとっつきにくいとか、なんか壁があるよねとか、絡みづらいよねとか、そんな類の高校2年生です。
もはや無視され続けても絡み続ける吉澤すげえなっていう話。

桜木町でのデート×2

そんな隙のないあきらの数少ない隙を偶然にも見つけてしまった加瀬。

彼はあきらにデートしてくれたら秘密は守るという(先輩のくせに子供じみた)交換条件を提示しました。
しかし、年下であるはずのあきらは、加瀬の一枚上をいくしたたかな一面を見せます。

デート当日。待ち合わせ場所いつものって感じで使っているんだろうなと容易に想像できる桜木町の駅前で待つ加瀬の前に、あきらは「空手チョップ」とプリントされたダサいTシャツと緑のボトムスで現れます。
ダサいと思われることを厭わず、自分がいかに相手に興味ありませんよというアピールです。これはしたたかです。意中の相手ではない人と約束してしまった時に使える高等テクニックです。

ハマっ子ティーンエイジャーのデートスポット登竜門とも言えるみなとみらいのワールドポーターズで『寄生獣』を鑑賞し、カフェ(レストラン?)で食事。その中でもダサい装いの女を連れて歩く事に抵抗を覚えず、落としてやろうという気概を失わずにいた加瀬もまた凄いと思いました。

一方で、後に加瀬の時と全く同じデートコースを店長と回るあきらですが、今度は明らかにガチのデートな装いをして彼女は現れます。

再び『寄生獣』を同じ映画館で見たあきらは、「何回観ても面白い」と感想を述べます。これは彼女にとって2回目の鑑賞という意味が込められているのですが、そのことを知らなければ「これから何回でも見返したい映画」であるととらえることが出来ます。
狙って言っているのであればしたたかですし、決して嘘をついていないのも凄いですよね。

デートを取り付けた店長の車の中のシーンも、あきらの誘導尋問には恋に夢中な女以上の何かを感じました。

蛇足ですが、あきらたちが食事をしていたカフェは他のお客さんが軒並み女性オンリーでしたね…



はるかとあきら

もう一つ、『恋は雨上がりのように』で注目してほしいのは清野菜名が演じたはるかというキャラクターです。
陸上部のキャプテンとして部員を束ねながらも、部活からフェードアウトしていくあきらに対してなかなか声をかけることが出来ないはるか。
幼なじみなのにあと一歩が踏み込めないワケは、先述したあきらのとっつきにくさが関係しています。

片思いに溺れたあきらが、恋愛成就で話題の「ムキ彦」を求めて回しまくっていたガチャポン。
その外れキーホルダーの数々を強引にもらわされたはるかは、それらを全て(よそ行き用の)バッグに付けていました。はたから見たら「まるみーキーホルダー」なるキャラクターの愛好家です。

でも実際は。
好きでもないキャラクターの、しかもハズレくじを半ば強引に押し付けられたのに、押し付けてきた幼なじみのことが大好きだから、ハズレくじであろうと大切にする。優しいキャプテンです。

部活の絆

そんなはるかには、彼女のことを慕い、頼ってくる仲の良い後輩がいました。一緒に駅から登校したり、休日は二人で一緒に買い物に出かける、常に隣にいるような存在の後輩です。

みんなで同じ練習をして、同じ日にオフを与えられ、同じ目標に向かって毎日を過ごす。
同じ部活に所属しているというのは、時としてとても狭く強固なコミュニティ・世界になり得ます。

はるかといつも一緒に行動していた彼女は、きっと卒業してもずっとはるかのことを慕っていくのでしょう。いわゆる一生付き合える仲というやつです。

けれど、これは想像に過ぎませんが、部活に戻ったあきらは決してそのような付き合い方をしなかったと思うんです。
これは性格の違い。集団行動の多い部活でもマイペースに行動する部員がいることはあります。

その中であきらに「なんでバイト先教えてくれないんですか」と同調圧力の声をあげたりする後輩ちゃんがいるのが面白く、細かいシーンではありましたがとても印象に残ったことを付け加えておきます。

「雨が降っているときに、いつも君は現れる」

店長はあきらに伝えたセリフが、この映画の本質を表していると思います。
雨はいつか上がるから。雨宿りはいつか終わるから。

あきらと店長の恋の行方は意外な形でした。
倉田(山本舞香)とあきらが対戦する大会のレースまで映画の本編を引き伸ばさなかったことも驚きました。
ファミレス仲間である吉澤(葉山奨之)とユイ(松本穂香)の雑な扱いにも、びっくりしました。
吉澤の描いていたパラパラ漫画の伏線回収にはもっとびっくりしました。

いずれも正解だったと思います。

またここまで全く触れませんでしたが、自分が歳を取って大人になると、店長の言っていた「俺なんか」の意味がよくわかります。
「君は若いんだから」と言ってしまう気持ちも、28歳下の異性とのぎこちなさすぎる話し方も。

年齢差という障壁を超えていく王道の展開を予想させつつも、意味ありげな伏線をちょいちょいと挟んできて飽きさせませんでした。

こちらに想像の余白を持たせてくれる作品です。