映画『娼年』ネタバレ感想〜愛を求める全ての人に。この松坂桃李を観てほしい〜

2018年の映画『娼年』を鑑賞しました。
2015年に上演した舞台版に引き続き、三浦大輔監督と松坂桃李の主演で映画化されました。

大胆な、という言葉では全然足りないほどに性描写、いわゆる濡れ場が2時間の間に尽くされている作品です。大きな声を上げながら男女が絡みあいます。当然ながらR18+の作品になります。

先に断っておくと個人的にこの『娼年』は、セックスという行為がどれだけ大事なことかを描いてくれている映画だと思います。
女性が男性に求めることは何なのか。欲求にはどういうものがあるのか。求愛とはどういうことなのか。そんなことを丁寧に、松坂桃李という主役を通して描いている映画です。

と前置きさせていただいて、本記事では以降性的な描写、単語を使わずに『娼年』の魅力を探っていきたいと思います。
いずれ18歳に、大人になる少女、少年のみなさんにも是非いつか見ていただきたい作品だからです。

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以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



『娼年』のスタッフ、キャスト

スタッフ、キャスト

監督・脚本:三浦大輔
原作:石田衣良
森中領:松坂桃李
御堂静香:真飛聖
咲良:冨手麻妙
平戸東:猪塚健太
白崎恵:桜井ユキ
田島進也:小柳友
ヒロミ:大谷麻衣
紀子:佐々木心音
泉川:西岡徳馬
イツキ:馬渕英里何
主婦:荻野友里
ギャル風の女:階戸瑠李
老女:江波杏子

原作は石田衣良の小説。
『池袋ウエストゲートパーク』シリーズに代表されるようなストリートの冒険譚のイメージが強いですが、女性をきめ細やかに描くのも得意な作家です。

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監督は『愛の渦』『何者』などの三浦大輔。
映画.comさんのインタビューで三浦監督が撮影の内情について解説されているので興味のある方はご覧ください。(直接的な表現もありますのでご注意ください)

あらすじ紹介

大学生のリョウこと森中領(松坂桃李)は、バーのアルバイトに精を出していた。ある晩、ホストクラブで働いている中学時代のクラスメートの田島進也が、客の御堂静香を連れてリョウがいるバーを訪れる。

出典:シネマトゥデイ

上のあらすじに少し付け足すと、領くん(松坂桃李)は静香の誘いで「クラブ・パッション」というクラブで女性のお客さんのために働くことを決めます。
本作品はそんな領くんの成長を通しながら、欲望の本質や女性心理を鮮やかに映し出していきました。



映画のネタバレ感想

男性らしさを求めて

まず注目してほしいのが映像の美しさです。

むき出しの露出シーンが多い中で、領くん(松坂桃李)と女性たちの肌の質感は明らかに異なったものとしてこちらに提示されます。
青白くて柔らかな女性の肌感に対し、領くんの背中は、腕は、顔は、少しザラザラしているように見えました。言い方を変えれば、男性的な背中の、腕の、顔の質感でした。

顎クイにも優しさが。(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

出典:映画.com

当然ながら肌をサラサラに見せようと思えば、メイクや映し方で出来るはずです。
しかし本作品における領くんはそうではなく、彼はどこまでいっても男らしく描かれています。それはたぶん粗野とか力強さとか簡単な言葉では表現できないほどに、三浦監督は手を尽くしたはずです。

鎖骨やほくろなどの身体的ディテールの映し方も、脚の動かし方も、神秘的にさえ見える光の当て方も、これまで僕が見てきた映画とはどこか一線を画したものでした。情熱的でありながら、男性的でありながら、女性を包み込む領くん。

僕は男なので断言できないのですが、女性から高い評価を受けている以上、この作品が女性目線を大事にして作られたということは証明されているのではないでしょうか。

東京の街々での出会い

『娼年』では領くんが務めるバーがある下北沢を皮切りに、渋谷、銀座、表参道、新宿、池袋、高田馬場、鶯谷と色々な東京の街がサブタイトルで表現されます。

ヒロミ(大谷麻衣)というお客さんとは、まだ日が落ちる前の渋谷で待ち合わせました。
特殊な嗜好を持つ読書好きのイツキ(馬渕英里何)というお客さんとは、夜の表参道で待ち合わせました。
静香(真飛聖)、咲良(冨手麻妙)との食事は、自分の大学(おそらく早稲田大学をモチーフにした大学でしょう)のホームタウンである高田馬場の居酒屋を領くんは選びました。

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各所の撮影で上手だなと思ったのは、その街の持っている空気感をさりげなく領くんの周りに吹き込んでいるところ。
表参道なら街灯や飲食店の温かな光を、高田馬場なら早稲田通りのネオンのまばゆさを、新宿なら昼間のオフィスビル群を、さりげなく落とし込んでいます。

(高田馬場と下北沢を除いては)お客さんがどんな心境でその街を選び、たくさんの人がうごめくその街々に領くんがどんな思いで向かっているのか、こちらが思いはせることもできるのではないでしょうか。

日が落ちる前の繁華街で、日が落ちた後の繁華街で、年下の男の子と待ち合わせをする。
女性だって緊張するはずです。もちろん領くんだって緊張感を持って向かうはずです。

個人的には日が落ちる前の渋谷のカフェでお酒を飲むヒロミとのシーン(2日目)は特にいいなと思いました。初日はコーヒーでしたが、昼間にカフェでシャンパングラスを傾けながらデートする。日常からの軽い逸脱で素敵です。

魅力的な女性たち

領くんの自宅に泊まりに来たギャル風の女(階戸瑠李)に始まり、本作では9人の女性が領くんと関わりを持っていきます。
本作品の成功はこの女性のキャスティングだと思います。
語弊を恐れずに言えば、息をのむほどの美人を起用しなかったことで、松坂桃李演じる領くんが女性から見て魅力的な、上位的な存在として成立していたと思います。

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会『娼年』公式サイトより

出典:『娼年』公式サイト

男女逆の立場でも、またホストクラブやキャバクラなどにおいても、お客さんは店の男性/女性に対して何がしかの期待や非日常感、施しを受けに、自分が何がしかの収穫を得るために行きます。そして対価を支払います。
その意味では、本作品に登場する「お客さんの」女性たちが「普通の」女性で、その中で彼女たちが精一杯の勇気を出して、期待を持って領くんに会いに来たという構図はとても自然でした。

「もう連絡しないね」と可愛い置き手紙で気遣ったギャル(階戸)や、わかりやすく好意を寄せていた大学の同級生の恵(桜井ユキ)は明らかに「領くんのことが欲しい」類の女性でしたし、領くんが女性目線の中でいかにピラミッド上位に位置しているかが伝わって来ます。

顔も体も性格も(学歴も)良い。
そんな領くんのことを「欲しい」と思ったり、領くんを通じて癒されたり気持ちよくなりたいという欲求は至極当然のことです。
個人的には女性の「欲しい」に対して、領くんと同じようにいかに向き合うことができるかがこの作品を楽しめる鍵なのかなとも思ったり。

一方で「普通」であることを武器にして領くんはクラブ内でのし上がっていくわけですが、彼は彼で「普通ではない」自分を抱えて生きていました。



松坂桃李くん

上では魅力的な「普通の」女性たちのキャスティングが『娼年』の勝利だと書きました。
その勝利の前提、そもそもの土俵をこしらえたのは間違いなく松坂桃李です。
領くんが松坂桃李でなかったらこの作品はまず成立していません。

領くんin池袋(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

出典:映画.com

松坂桃李は今年の10月で31歳になりました。
近年は年齢相応の大人の男を演じている一方、モデル出身らしくこの歳になっても甘さを兼ね備えている、そんな印象です。

今でも彼のことを「桃李くん」と呼ぶ人もいるでしょう。僕も彼と同世代ですが日常会話で話題に出すときは松坂桃李「くん」と呼ぶことが多い気がします。
本作品においてはその「くん」の部分が僕にはめちゃくちゃ刺さりました。

松坂演じる領は映画内で(友人・田島を除いて)「領くん」と一貫して呼ばれます。そして最初から最後まで一貫して僕はその呼称に対して違和感を一切感じませんでした。
年上の女性のお客さんが多いということを差し引いても、です。
その一方で今の松坂桃李はもはや可愛らしい男の子ではなく、しっかりと女性と向き合うことのできる男性です。

ここまで「領くん」が似合うかっこいいアラサーはいるでしょうか。

静香さん(左)に抱きしめてもらう領くん(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

出典:映画.com

冒頭で僕は「求愛」とはどういうことなのか、と書きました。
映画をご覧になればわかりますが、それは身体を重ね合わせることだけにとどまりません。

領くんはお客さんの女性と丁寧に言葉を通わせて相手のことを理解し、自分のことを理解させます。セールストークではなく、一生懸命に言葉をひねり出して心を通わせます。そして相手のことを思いながら、身体を動かします。
彼は確かに「領くん」として目の前の女性を全力で愛していました。喜ばせたり満足させるのではなく、愛していました。

女性が歳を重ねることを領くんはとても素敵だと思っていました。それは「普通の」領くんが持つ「普通でない」部分であり、彼が本当に相手を求め、愛することができる強みにもなっていました。

デビューから培われてきた甘さと、年輪を刻んで身につけた男らしい部分と。
2017年(撮影時)時点での俳優・松坂桃李の全てが詰め込まれ、最大限に発揮された映画でした。

領くんに包み込まれたくない女性など果たして存在するのか。
男の自分でさえそう思うほどに、素敵が尽きない松坂桃李だと思います。

刺激的な言葉で片付けるのはもったいない。
身体中に愛が染み込む温かい映画でした。

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※本ページの情報は2019年12月現在のものです。
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