映画『THE FIRST SLAM DUNK』感想|超傑作でした。ひれ伏しました。

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2022年公開の映画『THE FIRST SLAM DUNK』の感想になります。

公開から1ヶ月以上が経ってからようやく観に行ったんですが、最高でした。さっさと観に行かなかったことを後悔しました。

本記事では、スラムダンクという作品が存在することの素晴らしさや、個人的な羨望などについて書いていきます。
映画未鑑賞の方はご注意ください。



スタッフ、キャスト

監督・原作・脚本 井上雄彦
宮城リョータ 仲村宗悟
三井寿 笠間淳
流川楓 神尾晋一郎
桜木花道 木村昴
赤木剛憲 三宅健太

『THE FIRST SLAM DUNK』のあらすじや評判、口コミはMIHOシネマさんの記事でも読むことができます。(ネタバレなし)

ぜひご覧ください!



スラムダンクとの距離

この後、本記事は感想部分に入ります。内容や設定にも触れていますので、映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。

自分が初めてスラムダンクをちゃんと読んだのは中学生の夏休み。それまでは湘北のメンバーくらいは知っていたものの、何がそんなに人気なのかも知らず、きちんと読んだことがありませんでした。アニメも昔やってたみたいですが、見たことがありませんでした。

そんな中3の夏、バスケ部の友達が夏休みに全巻を貸してくれました。ちなみに彼の当時のメールアドレスは三井寿と14番を組み込んだもので、中学卒業後は作品内に登場する某高校のモデルといわれる学校へ進学しています。

で、全31巻を駆け足で読みました。「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」など名台詞の文脈もそこで知ることになります。

好きと言えなくて

ただ、歳を重ねていくにつれて、スラムダンクを「好き」と気軽に言えない状況なのではないかと勝手に思い込んでいきます。

要はスラムダンク愛の凄まじいガチ勢が多すぎるんですよね。

高校に進学するとスラムダンク(orワンピース)好きの多さに圧倒されます。みんな当たり前のように「まだあわてるような時間じゃない」とか「要チェックや」とか授業中に言っててびっくりします。

スラダンで誰派?と訊かれて流川と答えていたんですが、その理由に天才っぽいからとか一匹狼っぽいところが好きとか言うと、「浅いね」を内包した「ふーん」が返ってきて知識量の差を思い知らされます。

それは高校卒業してからも変わりません。大学でもスラムダンクを人生のバイブルにしているような人がいて、その人のメールアドレスは安西先生のあの言葉でした。職場も然りです。上の世代も下の世代も盛り上がれる共通言語となっていました。

一方で、昔さらっと読んだ程度の貧しい記憶力で会話に参加できるような感じではありません。

決して少なくないガチ勢と同じ土俵で熱量高い会話ができるわけでもなければ、また再読してその熱を高めようという気にももうならない。天邪鬼な自分の性格も相まって、スラムダンクを「別に好きじゃない」というスタンスを取ることが多くなっていきました。「『あひるの空』の方が好きかな」と答えるまであります。

実際あひるの空は好きなんですが読んでいたのは途中までだし、“スラムダンク派ではない”立ち位置を取ることに利用していた感も否めません。

観ました。降参しました。

そんな中で発表された『THE FIRST SLAM DUNK』。

ガチ勢が楽しそうに盛り上がっています。私の手の届かないところで。

昨年12月に公開されてからというもの、タイムラインには連日想いのこもった感想が並びました。近場のシネコンもスラムダンク(とすずめの戸締まり)の上映が多数を占めていました。

それでも天邪鬼の自分は観に行こうとしませんでした。『THE FIRST SLAM DUNK』の魅力を理解できるまでのレベルに達していないことを痛感するのが怖かったからです。

ただ、年が明けて1週間が経った頃、久しぶりに会った後輩から「スラムダンクめっちゃ良かったですよ、きっと好きだから観た方がいいですよ」と言われました。

私に『あひるの空』を教えてくれた方でした。

背中を押されて、遅ればせながら観ました。
そして打ちひしがれました。

(サッカーを除き)スポーツの試合を観て感動する、感激する、ということはあまりなかったんですが、心は動きに動かされ、揺さぶられました。1秒の緩みもなくスクリーンにかじりつき、124分が終わりました。超絶大傑作。

つまらない意地を張っていて申し訳ありませんでした。さっさと観に行かなかったことを恥じます。降参です。上から読んでも下から読んでも文字通りの、私負けましたわ、って感じでした。

『THE FIRST SLAM DUNK』の何が凄かったのか。

ここからは、原作にペラい知識しかない自分がのめり込んだ部分をお伝えしていきます。

遠くの記憶を手繰り寄せ

『THE FIRST SLAM DUNK』では、湘北高校と山王工業高校(以下「山王」)との試合のことが描かれています。

あの試合については、勝敗だったり花道がルーズボールに突っ込んだ結果だったり、っていうのは覚えてましたが、山王の選手の名前は一人も覚えていなかったんですよね。

それでも特徴的な喋り方の深津を皮切りに、河田(兄)や沢北が映画で登場すると、遠い彼方に合った記憶の糸が段々と手繰られていきます。

漫画を読んでいた当時に「深」だの「河」だの、さんずいの付いた名前が多いと感じていたことも、後年に初めて「溜池山王」駅を知った時に山王工高との関係を邪推した記憶すらも思い出します。

花道の「ヤマオー」呼びや、映画のメインとして描かれた宮城リョータにとっての盟友・安田の存在を思い出していきます。そうだ、僕はあの頃、流川とヤスと洋平が好きだったんだ。

で、一番びっくりしたのが、山王戦で登場する名言の数々でした。

花道が安西先生に言う言葉も、沢北の3倍返しも、疲労困憊の三井が発した台詞も、覚えていました。
聞いてから思い出すのではなくて、発されるその直前に言葉が浮かび上がり、彼らと同時に脳内で発声されました。

そして花道のジャンプシュートですよ。映画では、有名なあの言葉が発されることはありませんでした。それでもあの瞬間、「左手は…」が花道の声で確かに再生されました。

2時間の中で昔の記憶を手繰り寄せる作業を続けていった末に、『THE FIRST SLAM DUNK』を楽しむ一員となれた気がしました。薄っぺらい情報しか持っておらず、この名作と関わることを避けていた自分がです。

アニメを観ていなかったということや、原作との接触も薄かったために映画で削られた部分への思い入れがなかった(そもそも気づかなかった)、という側面が幸運に働いたところはあると思いますが、危惧していた“敷居の高さ”は微塵も感じることなく作品に没頭できました。それが本当に嬉しかった。

バスケへの羨望

スラムダンクの凄いところは、作品の枠組みがバスケットにとどまっていないことです。

「スラムダンク勝利学」をはじめ、作品の言葉やマインドに端を発した書籍が出版されていますし、スラムダンクが人生の教科書・道標であると表現する人は実に多い。おそらく日本の漫画で一番、多くの人に影響を与えている作品ではないでしょうか。だからこそ、その高い熱量を持った人の多さに自分が気圧されて敷居の高さを感じていた部分もありますが…。

スラムダンクをガチで愛する人はバスケット愛好者や経験者にとどまっていないんですよね。

枠組みの大きさ

私はサッカー畑で育ち、今でもサッカーを愛しています。
でも果たしてサッカーや野球の漫画で、スラムダンクほど人々の人生を揺り動かすような作品があったでしょうか。

「キャプテン翼」はJリーグ草創期の選手たちの憧れでした。中田英寿さんが砂場でオーバーヘッドキックを練習していたのは有名な話です。実際中田さんのその話を知って、私はオーバーヘッドを練習していました。

「GIANT KILLING」はサッカーの戦術的な部分、さらにはサッカークラブの内情やそのクラブを応援するサポーターの心情を代弁した素晴らしい作品でした。

「アオアシ」は育成年代のリアルな描写や下部組織(クラブユース)に置かれた舞台設定が新鮮で、なおかつ高い戦術眼を養うことができる作品でした。この漫画を読んでからサッカーの試合を観ると視野が格段に広がりました。

ですが、キャプ翼もジャイキリもアオアシも、枠組みとしては「サッカー漫画」だと思うんですよね。こういった作品に影響を受けて、人生の指南書としている方も少なくないと思いますが、入口の多くはあくまで「サッカー漫画」であることが多いと思います。

その点、スラムダンクは人生観にも通ずる名言や考え方を生み出しています。

これは他の作品が生み出していないわけではなく、スラムダンクに影響を受け、発信している人の多さに起因します。その母数が大きくなればなるほど、作品で示される金言は一般化し、文化へと醸成されます。

真摯な姿勢

これは漫画を昔読んだ時にも感じたんですが、スラムダンクはとにかくバスケットへの愛が凄いですよね。

漫画全巻を貸してくれたバスケ部の友人(前述)は「実戦に忠実な技術しか出てこない」と言っていましたし、何より印象的だったのは井上先生によるバスケの解説です。初心者からスタートした花道をロールモデルとして、ルールやプレーの種類を丁寧に解説してくれます。

根底にあるのはバスケットが好きだ、バスケットを好きになってくれる人を増やしたい、という愛、熱意だったと思うんです。

もちろん他の作品でも題材スポーツへの愛は注ぎ込まれています。でもスラムダンクは競技の魅力を作品に落とし込む、言語化・描写する力が段違いに感じます。

人生観に通じる金言の数々という話を出しましたが、前提としてバスケットへの情熱、ひいては愛するものへの情熱が作品全体からほとばしっています。

映像化された今回で言えば、ボールの音、息遣い、バッシュの音に加え、床にモップがけをするシーンなどからもリアルさが伝わってきます。コート上の選手たちと一緒に息を弾ませ、ベンチメンバーとともに息を呑み、圧倒されるようにして124分が駆け抜けていきました。

違和感を感じた部分はスタンドの観客くらいですかね…笑

その実直で真摯な熱量が響く。バスケと繋がっていない人たちにも響く。だからこそ、名言が浮かないし、名言を名言として受け手が享受できるんだと思います。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』では、さらに裾野が広いテーマも扱われています。もう一つの軸として描かれているのが、選手と家族のストーリー。家族というチームが壁を乗り越え、(この表現が正しいかはわかりませんが)“成長”していきます。

また、選手が抱く“強い相手への畏怖”と、それを抑え込んで平気なふりを見せる、という心構えの描写も実に印象的でした。華々しい舞台で戦う人たちにも不安は訪れています。その怖さと闘って吐きそうになりながらも、抑え込んでいく。これも、スポーツのみならず何かへ向かっていく人たちにとって大事な道標となるはずです。

ちなみに試合シーンではバスケというスポーツの持つ連続性の魅力と、それを一時断つシーン(失点後のスローイン、タイムアウト、フリースローなど)のコントラストが実に印象的でした。後者の“断つ”部分は、過去エピ挿入シーンをスムーズに行う要素があったように感じ、それがまた作品としての連続性に繋がっていた気がします。あくまでもど素人の感想ですが…。

 

浅い予備知識しか持たずに鑑賞した『THE FIRST SLAM DUNK』でしたが、超絶傑作でした。最高でした。

このような作品があることを偉大に思いますし、何よりこんなにも素晴らしいスラムダンクという作品が存在し、生み出されたバスケットボールを心底羨ましく思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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