映画『県庁おもてなし課』〜良い話だけに高知推しの弱さが惜しい〜

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13年の映画『県庁おもてなし課』を鑑賞。

実在の高知県庁の観光振興部「おもてなし課」を舞台にした有川浩原作の作品である。
出演に錦戸亮、堀北真希、船越英一郎ら。監督は三宅喜重。



ご当地映画in高知

雄大な自然と、その自然の過酷な立地環境により産業もなく、観光収入の乏しさに喘ぐ高知の発展を狙い動き出した観光おもてなし課。

高知出身の売れっ子作家・吉門(高良健吾)を観光大使に迎え、かつてパンダ誘致論なる独創的な戦略を掲げて県庁を追い出された清遠(船越英一郎)をアドバイザーに迎え壮大な観光政策に着手するという話である。

錦戸演じる掛水は空気が読めずにどことなくヨロヨロとしたキャラクター。主人公としては、とりわけ読者が感情移入しうる小説のものとしては適格であるが、映画となると少し弱かったか。吉門のサイドストーリー描写が強かったこともあり、実質的な主演は高良健吾といっても過言ではなさそう。
ちなみに高良健吾、堀北真希、船越英一郎の三人といえば『白夜行』が思い出される。本作の高良健吾はすかした売れっ子の作家の奥に秘める彼の葛藤が、目線を外したりする演技によって際立っていた。

嫌味でない頭の良さをベースにしたツンデレキャラが本当に似合う俳優である。

高知の何を見せたかったのか?

北海道や沖縄だと観光促進よりも「そこの風景」を強く使いたいであろう側面があるためどこまでを範疇に当てはめるかは微妙であるが、いわゆるご当地映画は「UDON」をはじめとして多い。

当ブログでも『綱引いちゃった!』(大分)や『ほしのふるまち』(富山)、『書道ガールズ!!』(愛媛)に『おにいちゃんのハナビ』(新潟)などを鑑賞してきた。

あくまでも主人公のサイドストーリー、あるいは補完として地域があった4作品に比べて、本作は高知のPRが主である。

僕自身、高知に行ったのは5年前の一回きりであるが、もう少し綺麗な画を撮れなかったか、という疑問は否めない。錦戸が『高知サイコー』と絶叫するわけだが、印象に残るのは民宿「きよとお」周辺の街並みと美味しそうなカツオ料理くらいであった。

脚本は岡田恵和。原作を読んでいないのでわからないが、話の進め方はシンプルでよかったと思う。錦戸と堀北の関係に深入りせず、高良健吾演じる吉門のストーリーを軸にしたのは良かった。

県庁の役人は仕事ちゃんとせぇやっていうのはお門違い。公務員だって楽しみながら生まれるアイデアはあるはずだ。

ご当地映画はそれこそ地元を振興させるうえでメリットの多いコンテンツだとは思う。恐らく先行上映されたら地元の人たちは見に行くだろう。
映画でファンがつけばロケ地巡りに追体験をしようという層がいくらかいるだろう。

けど、それにしても内向き。高知の人間の息づかい、そして自然の美しさ、怖さが伝わってこなかった。厳しい言い方をすれば、高知紹介という面では甲子園で高知代表校が登場した際にNHKが作成するふるさとVTRと何ら変わりはなかった。

批判というよりも、作品の方向性がはっきりしていたゆえに勿体無かったという印象が本音。
僕が高知に行った時は時間がなかったので桂浜と足摺岬に行くだけで精一杯だったが、秘境の部分をもう少し見せてもらえたら嬉しかった。

基本的に車移動、ナビに反映されていない道の数々という手付かずのインフラ面を描いたのだからあと少し、というところ。

とはいえ、ご当地映画への要求をたらたらと述べたものの、総合的に見れば高良健吾と脚本の良い映画だと思う。