07年公開の『名探偵コナン 紺碧の棺』を鑑賞。
山本泰一郎監督。高山みなみほか。
『紺碧の棺』のスタッフ、キャスト
監督:山本泰一郎
原作:青山剛昌
脚本:柏原寛司
江戸川コナン:高山みなみ
毛利蘭:山崎和佳奈
毛利小五郎:神谷明
鈴木園子:松井菜桜子
目暮警部:茶風林
吉田歩美:岩居由希子
小嶋元太:高木渉
円谷光彦:大谷育江
灰原哀:林原めぐみ
あらすじ紹介
太平洋に浮かぶ神海島(こうみじま)には、古くから海底に眠る古代遺跡“海底宮殿”と、300年前に実在した2人の女海賊が遺した財宝伝説が語り継がれていた。神海島へバカンスに訪れたコナンたち一行は、財宝探しに集まったトレジャーハンターたちと出会うが、海底宮殿を探索していたハンターがサメの群れに襲われ死んでしまう。
大体コナン映画のワーストランキングに入ってくる作品。意外にも完全初見でした。
以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
事件のインパクトの小ささ
この作品が低評価の理由はとにかく事件と推理のしょぼさ、作品のスケールの小ささに尽きると思う。
わかりやすい悪役を用意し、さらに真犯人とやらを仕立て上げていたけど、第一印象で彼が真犯人だとわかってしまった。
この悪役と真犯人はスケープゴートと黒幕の関係ではなく、しかも真犯人に全く不気味さが感じられないので始末が悪い。
私利私欲にまみれているってほどでもないし、やっぱりスケールが小さいなぁと。
レンタル自転車にGPS付けるんだったら最初からトレジャーハンターの荷物にも付けておけよ……
冒頭のルパンと不二子の覆面を被った強盗犯とのカーチェイスも蛇足感が強く、あれがなかったとしても全くストーリーに問題は生じない。
蘭姉ちゃんと園子の人質の件も含めて、構成としては正直0点に近いかと。
「私の背中は、任せたよ!」はいいセリフなんだけど初出の伏線からわざとらしさと唐突感が目立ってしまった。
人が一人しか死なないならば、それなりの脚本の書き方があるでしょうに…
以上がこの作品でダメだと思ったところ。
はぐれ探偵人情派・毛利小五郎
部分的には良い所もあったと思う。
まず、この作品は作画が美しい。
歩美ちゃんのアップシーンなどは随一。
輪郭線やパーツが破綻していることが全くなかった。
海底の建物(城?)も非常に良かったし、海の中で血が拡散していく様子も上手。
脚本としては小五郎のおっちゃんの父親としての描き方が素晴らしい。
蘭と園子がさらわれて、少しでも早く船で助けに行きたいのが父親心理。
でも海が荒れていて船が進めない。
船から海に飛び込もうとするおっちゃんも、
失礼しますと言って鉄拳で気絶させる佐藤刑事も、
やりきれない顔で見つめる白鳥刑事も、実に人間味に溢れている。
港に戻り待機せざるを得ない状況で、おっちゃんは焦れる。
「もう船を出せるんじゃないですかねぇ?警部殿…」
窓の外を見ながらおっちゃんは言う。
雨はなおも降り続いている。
でもおっちゃんからしてみれば少しでも弱まったように見えたのだろう。
哀しげに首を振る刑事たち。うなだれるおっちゃん。
この人情味、最高では。
哀コナが素晴らしい
哀ちゃんとコナンの掛け合い、コンビネーションも本作の特筆すべきところ。
宝探しをする元太、光彦、歩美の3人と別行動をとるコナンに対して、哀ちゃんが囁く。
コナンから分析を頼まれて、哀ちゃんが口を尖らせる。
蘭姉ちゃんたちを助けに出かけるコナンに、哀ちゃんが声をかける。
この二番目のセリフは、哀ちゃんが
「私はいつからあなたの助手になったの?」
と訊き、コナンくんが
「助手じゃなくて相棒」
と答え、それを踏まえて『戦慄の楽譜』で哀ちゃんが「相棒」と口にする、作品を超えた哀コナの絆。
お互いに支え合い、信頼し合って…
夫婦かな?
この感覚がたまらん!
哀コナばんざい!
事件自体はずさんだったけど、言うほど悪くなかったな。
指紋の鑑定証明書で、サインがY.YAMAMOTOになっており、細かいところで監督の名前だしてきたなとほっこり。