映画『名探偵コナン から紅の恋歌』ネタバレ感想|平次と和葉の最高のラブコメ

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劇場版名探偵コナン『から紅の恋歌』を観てきました。第21作目。
静野孔文監督。



『から紅の恋歌』のスタッフ、キャスト

監督:静野孔文
原作:青山剛昌
脚本:大倉崇裕
江戸川コナン:高山みなみ
服部平次:堀川りょう
遠山和葉:宮村優子
毛利蘭:山崎和佳奈
毛利小五郎:小山力也
大岡紅葉:ゆきのさつき

あらすじ紹介

青山剛昌の人気コミックをアニメ化した「名探偵コナン」の劇場版21作目。「百人一首」をキーワードに、大阪および京都を舞台とした物語が展開し、「西の高校生探偵」こと服部平次も登場。江戸川コナン(工藤新一)とあわせて東西の高校生探偵がそろい踏みする。ある日、大阪の日売テレビで爆破事件が発生。局内では日本の百人一首界をけん引する「皐月会」が開催する皐月杯の会見収録が行われており、現場はパニックに。そこに居合わせ、崩壊するビルの中に取り残された西の名探偵・服部平次は、駆けつけたコナンに間一髪で救われる。テロのようでありながら、犯行声明もない爆破事件に違和感を抱くコナンと平次だったが、そんな騒動の中、コナンは平次の婚約者だという女性と出会う。

出典:映画.com

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



日の昼間に集いし三十名 京都の恋に想い巡らし

平日昼間の郊外シネコン。
『君の名は。』を観たときでさえも15人くらいの客入りだったけど、この日は数えたら30人を超えていた。子供はまだ学校の時間なので全員大人。凄い。

プロモーションで知っている人も多いかもしれないけれど、本作のメインは平次と和葉。
京都を舞台にかるた(百人一首)をモチーフにしたストーリーになっている。

元超えバイク飛ばして彼は飛ぶ
彼女を背に乗せ滝の向こうへ

僕は元々平次と和葉への思い入れが強い。
そんな2人が織り成すメインストーリーに感動しないわけがない。

オープニングで江戸川コナン(高山みなみ)、灰原哀(林原めぐみ)を先頭にキャラクターと声の出演が流れる。

最後を飾ったのは、遠山和葉(宮村優子)
和葉ぁぁぁぁぁあああ!!!!

なんかもうこの時点で涙腺刺激。
百人一首の札をモチーフにした映像も素敵だ。

年を追うごとに人間を超えていくコナンのアクションは予想通り。
飛ぶ、蹴る、走る、そしてまた飛ぶ。

同様に爆発も幾度となく起こり、繰り返される脱出劇。
ただ推理の要素は前作の『純黒の悪夢』に比べて多かったのでそのへんは評価したい。それでもすぐに犯人わかったけどね。

動機と真実の設定は上手だった。人間味があって良いです。

声の出演といえば宮川大輔と吉岡里帆が登場。観ていればどのキャラクターがゲスト出演の声優かは自ずとわかるかと。

いつもの小学生声優たちも漏れなく。棒読みじゃなくて良かった女の子が一人いました。

めどなく溢れ出しけり我が涙
皐月の滝の流るるごとし

ポスターでコナンの右上に位置する女性。
こちらが本作のキーになる百人一首の高校生チャンピオン・紅葉。
公式サイトでは平次の婚約者と言い張る美女と記載されていますが、果たして…

この紅葉なるお姉ちゃんがまたいい味を出していて、単なる恋敵に終わっていないあたり胸が詰まる。
和葉ももちろん好きだ。
でもこの紅葉も良い。

どうするん?平次?


本作に限って言えば蘭ちゃんは非常に空気が読めていて脇役に徹していて実に良い。
いつものしゃしゃり出て危機に遭うメンヘラ蘭姉ちゃんはいない。もはや保護者。
平次と和葉のラブストーリー、いやラブコメから脱線せず話が進むからずっと胸がキュンキュン。

キュンキュンと言えば、哀ちゃんがコナンくんに送るメールも是非目を凝らしてチェックして欲しい。

ちなみに僕の大好きな園子は風邪をひいて同行せず。
今回は、縁の下の力持ちの蘭姉ちゃんのさらに縁の下になって健気でした。キュンキュン!



のこころ恋歌に乗せて描きゆく
百人一首はかくも美し

百人一首かるたに通じているかどうかでこの作品を歌の側面から楽しめるかどうかは変わってきそう。

僕の育った地区は小中学校で百人一首の授業が(国語の一環で)あったので当時は百首覚えていたし、本作で取り上げられる歌の意味は知っていた。

絶対に相手に取らせない自分の得意札を覚えておくという、映画でも描かれている戦法は確かに百人一首の基本。

本作で出てくる「このたびは ぬさもとりあえずたむけやま もみじのにしき かみのまにまに」は、その下の句の語感の良さと見た目から比較的覚えやすい札だった。

あとは1番から5番あたりまでは教科書の一番最初に載っていて真っ先に覚える歌なのでみんな早かったかな。

僕は「契りきな…」と「これやこの…」、「浅茅生の…」あたりを得意にしていました。

▲凄く古い本ですが、これがクラスに一冊あってこれで覚えたりしていました。漫画やキャラクターがあると頭に残りやすいです。

話が脱線しましたが、映画内で和葉が得意札にした歌、紅葉の得意札にしている歌、蘭姉ちゃんが好きだと言った歌もその背景をなんとなく知っていれば設定が一人歩きしなくて良いのかなと。

またタイトルになっている「から紅(からくれない)」は在原業平が歌った17番「ちはやぶる 神代も聞かず竜田川からくれなゐに 水くくるとは」という歌。

「ちはやふる」でお気づきになった方もいると思いますが、別の作品のタイトルにもなっている有名な歌です。

この「ちはやぶる…」は竜田川という川の一面に紅葉が浮かぶ様を真っ赤な(からくれなゐ)織物を水で絞り染めにしていることと結びつけた歌。

恋歌ではなくその風景の美しさを詠んだもので、文字通り赤というテーマカラーが核になっている。
コナンで赤というとどうしても血塗られたとか血染めとかそちらを想起してしまうけど、製作側は恐らくそこまで想定した上でこの歌をタイトルに選んだんだろうと思った。

博士のクイズも単なるダジャレだったけれど百人一首の1番に結びつけたのかなと、違う観点から正解の選択肢に行きついた。

映画の最初に示される「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき」についても、「なく」「鹿」「かなしき」というワードから深読みできる歌。

個人的にはメンヘラの蘭姉ちゃんは、
「わびぬれば 今はた同じ 難波潟 みをつくしても 逢はむとぞ思ふ」も似合うと思いましたが……舞台大阪だし。
(歌の意味はこちら)

っぱちゃん 女王の紅葉に見くびられ
なお食らいつき和葉と呼ばれし

和葉と紅葉はともに名前に「葉」がついている。
紅葉は和葉を「葉っぱちゃん」と侮るが、これが和葉の負けん気に火をつけた。

頑張る和葉。支える同級生の未来子と平次のオカン。
一方で派手な出で立ちとプロポーションで明らかにかませ犬っぽい紅葉も、陰ではとても頑張り屋さんであることが描かれている。

そして和葉を見守りつつ、平次を巡る二人の火花に対しては傍観に近い形で見守る蘭姉ちゃん。

女性キャラのプライドと清々しさが綺麗に描かれていて、そこにコナンや蘭というオブザーバーの目が入ることでこの作品が上質なラブコメになっている。

平次はもちろん最高にかっこ良かった。
でも、僕は今回の作品の主人公は和葉だと思う。
強く、凛々しく、美しく。

だからと言って決してコナンが脇役になるのではないのでご安心を。

久々にメインキャラクターの「内側」で物語が展開する良作。

百人一首をかじっていたことも思っていた以上に味方した。
また久しぶりに百人一首をやりたくなりました。

後日鑑賞した『迷宮の十字路』を本作品と比較してみた記事はこちら。よろしければどうぞ!

迷宮のクロスロード タイトル画像

映画『名探偵コナン 迷宮の十字路』〜から紅と比較してみた〜

2017年7月2日