映画『アズミ・ハルコは行方不明』〜時間軸を操作した傑作〜

松居大悟監督の『アズミ・ハルコは行方不明』を鑑賞しました。主演は蒼井優。共演に高畑充希、太賀ら。

 

2016年公開。ちなみに『ジムノペディに乱れる』を新宿武蔵野館で観た時に、随分と推されていた。

時間軸設定についていけるか

正直、この映画を楽しめるかどうかは二つの時間軸設定の交差する作り方についていけるかが全てと言っていい。

日経トレンディネットさんのレビュー記事がとても的を射ているのでリンクを載せておく。
▲ネタバレも多いので未見の方は自己責任でお願いします。

冒頭の運転シーン、また夜にキャッキャと興じるパリピ風の若者3人組。
いくつかのシーンが何度か繰り返し中盤や終盤で再生される。

この作品の根幹をなす3点。
・アズミハルコ(蒼井優)の鬱屈した毎日
・アズミハルコ行方不明の写真をグラフィティアートで街中に撒き散らす「キルロイ」の2人とアイナ(高畑充希)
・男性の一人歩きを襲う女子高生ギャング

これらが交わりながら描かれているが、実際は時間軸に隔たりが存在していることに気づきにくい。僕も実際に観終わるまでわからなかった。

▲アズミハルコを模したグラフィティアートで市内を彩るアイナ、学、ユキオ。 (C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会 

これは観る人に判断する権利を与えるというよりも少し一方通行が過ぎるレベル。

これから観る人は3つの時間設定が操作されているということは予備知識として持った上で鑑賞することをお勧めしたい。

見終わった後に自分がメモしたものはこんな形。ハルコのシーンが特に季節感に乏しいのでわかりづらい。

明確な時間の対比としてアイナ、ユキオ(太賀)らの集う成人式や
「夏になったら海へ行こう」と誘うハルコ、
アイスを派出所で食べている巡査(加瀬亮)、
「海に行こうよ」「もう夏終わりましたよ」という今井(菊池亜希子)とアイナの会話などがあるが、全体的には季節の推移が曖昧でやはりぼかされているという印象だ。

▲ポリスマン役で出演の加瀬亮。 (C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会

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ファンタジーのようで現実的

時間軸がぐちゃぐちゃしているので二回見た方がいい類の作品かもしれない。
で、考えながら見るから結構疲れる。

ただ、女子高生ギャングやグラフィティアートなどの犯罪、また愚かな男の女性観をドラスティックに描きつつも、結構その奥は現実的だったり。

高畑充希演じるアイナは、そこそこ可愛いながらもメンヘラで、依存的で、彼氏という存在を強く求めている描写が印象的。
その一方で、ユキオは非常に都合の良い男として描かれている。
「すぐヤらせてくれるから」アイナと付き合ってみて、学(葉山奨之)とキルロイを結成したはいいが、罪に問われるとわかると逃げ出して、学がアートディレクターに評価されて名声を得るとまたすり寄ってくる。

で、学がオープニングイベントを手がけた遊園地の再建がうまくいかないと、またユキオはキルロイを抜けた。

▲ユキオはとっても都合のいい男だったが、それもまた作品の現実感に一役買っていた。 (C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会 

とても利己的でずるく映るユキオ。でもセコい意味で要領の良い彼はすごいリアルだと思うんだよね。
そりゃ警察沙汰になりたくないから逃げるわ!!って人も多いのでは?

作品を通じて、あれ?と思ったのは学が時々何かを見つけたように遠くを見るシーンと、俺たちのアートがギャング団を呼んだんだ云々のところ。

あそこはどういう意味だったんだろうか。彼にはアズミハルコが見えていたのだろうか。

▲交差しないアズミハルコとユキオたち。でもユキオと学にとっては彼女は「知っている」存在なんだよなぁ。 (C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会 

基本的にダメ男がバリエーション豊かに描かれている本作において、学のキャラクターは独特に映る。それだけに学がギャング団にボコられたのは意外だったし、作り手がどのような位置に彼を置いているのかがわからなかった。
別にわからなくてもいいんだけど。

他にも意味深なシーンとしては高校生?の少年が母親と喫茶店でアズミハルコのアートの話をするところや、アイナがアクセ屋で接客していた相手は曽我たちなのか?とか色々。

できればもう一回観て、確認したいと思う。

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