映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』〜言い訳がましくないですか?〜

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8月公開の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を鑑賞してきました。
岩井俊二原作、新房昭之総監督、武内宣之監督、大根仁脚本。

声の出演は広瀬すず、菅田将暉ら。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のスタッフ、キャスト

及川なずな:広瀬すず
島田典道:菅田将暉
安曇祐介:宮野真守
なずなの母:松たか子
純一:浅沼晋太郎
和弘:豊永利行
稔:梶裕貴
なずなの母の再婚相手:三木眞一郎
三浦先生:花澤香菜
光石先生:櫻井孝宏

声優に詳しくない僕ですら凄いと思うほどの豪華出演陣。やばいですね。

あらすじ紹介

夏休みの登校日。中学生の典道と祐介は、なずなの前で競泳対決をすることに。典道は、競争のさなかに水中で不思議な玉を見つける。一方祐介は競争に勝ち、なずなに花火大会に誘われる。放課後、皆が打ち上げ花火のことで盛り上がっている中、なずなが母の再婚に悩んでいることを知る典道。どうすることもできない自分に典道はもどかしさを感じ、ふいに玉を投げると、なぜか競泳対決の最中に戻っていた。

出典:シネマトゥデイ

『君の名は。』の川村元気プロデューサーの次回作で、大根仁さんが脚本を担当していることもありとても楽しみにしていました。



低評価のわけ

僕は基本的に自分で観るまでは低評価を信じない。フィルターをかけて鑑賞してももったいないから。

なので、公開から1ヶ月以上が経って評価があまり芳しくないことは知っていたけども、期待を持って劇場に向かった。

でも。

『君の名は。』ぽさとか『君の名は。』で受けた衝撃とかをこの作品に求めるのは多分違う。

作り手が違うし、世界観も違う。

「カ・ケ・オ・チ」が印象的な予告編は素晴らしかったのでヒットメーカーとしての川村氏の仕事は果たしていたのだと思う。

しかし、残念ながら本編においてヒット作となる要素はあまり見つからなかった。

感想としてはとてもがっかりしたというのが正直なところ。



映画のネタバレ感想

以下感想、ネタバレ有りです。

繰り返されるストーリー、その手法

物語の舞台は千葉県の(おそらく外房)茂下という町。読み方は「もしも」

基本的に展開は「もしも…だったら」というもしもボックスならぬもしもボールを使って進んでいき、そのifに伴う時間の巻き戻し、そして世界の上書きが行われる。

作り方としてはタイムシフトの王道。

同じシーンが何度も繰り返されて、違う角度から撮ったりと少し変化をつけてはいるものの基本的には同じものの再生。

『桐島、部活やめるってよ』のように違う視点から見たものでもないので飽きてしまった。

極め付けは典道(cv.菅田将暉)が、なずな(広瀬すず)に電車の中で上書きされていく世界を熱弁しているところ。

元々90分と尺の短い映画だったが、そこに時間を割く必要はあったのか。

懇切丁寧に場面を繰り返して説明を尽くして、まだ言うか…

何だか言い訳がましく映った。

脚本・大根仁

脚本を務めたのは上記の通り大根仁。

僕が鑑賞したいと思った決め手の一つでもあった。

そんな期待を裏切るかのように、大根脚本は「このおかしな世界」と全くマッチしていない。


好きな子がいても言いにくいとか、先生彼氏いるの?とかくだらない毎日が必死に楽しい中学生男子たち。

その青臭さは確かに作品のキーポイントとなりうるはずだったのに、大根監督の紡いだセリフはだいぶピントがずれていた。

具体例を出すと祐介(宮野真守)がすぐウンコと言うところや、開始間も無くのシーンのトイレとカレーライスのコラボレーション。
また三浦先生(花澤香菜)の巨乳をやたらとフィーチャーしたり、なずなが「松田聖子?とかいう人」と言ったりするところ。

取り巻きの子が「観月ありさ好きだぁ!」と叫ぶシーンもあったが、ああいう類のノスタルジーは実写の現実的な作品だからこそ生きるのであって本作のようなファンタジーでは興味を削ぐだけなのかなと。

中学生の青さではなく、下品な大人が酔っ払って子供の真似事をしているかのような印象を受ける。

典道の話し方にどもりや声の裏返りを入れたりしていたのは良い部分の大根さんらしさが感じられた。
それも度を超えると「もしも君」ならぬ「モジモジ君」になってしまい典道に感情移入できない一因に。

僕は大根さんの作品が好きだけど、やはり人には得意な分野があるんだなと認識した。

美しかった映像と、棒読み感

映像はさすがという出来。
一方で水や光の描写にこだわりすぎて、それが不自然に作品から独立している印象も受けた。


描きたい絵を優先させる主張が強いあまりストーリーや脚本とのバランスが取れていない。
それでもって、キャストは棒読みの連続。宮野真守や豊永利行、花澤香菜までもが…というのはびっくりした。

菅田将暉も類に漏れず、彼ならばもう少し…と思いたくなるような調子。
アニメーションの口とセリフがあっていないところも散見された。

逆に広瀬すずのなずなはその棒読み感が、遠く手の届かない彼女のキャラクターを表しているようで気にならなかった。

彼女は常に典道や祐介に対して何かを挑んだり試したりする。
花火が平べったいか丸いかとか、三浦先生のおっぱいの大きさとかで盛り上がっている男子の、何段か上の大人の階段を歩いている。

そんな彼女の目と口元にフォーカスした撮り方は上手だったし、僕も確かに魅了された。

ちなみに『君の名は。』で存在した企業の実名表示は本作にもあって、SHIMANO、LAWSON、出光、ゴルフのレッスン本などが主なところ。
典道の実家の釣具店となっていたSHIMANOを除いては、いずれも少し唐突な印象が否めなかったかな。

全体的に作り手の強い主張が悪目立ちして中身の薄さを強調していた作品。

「わからない」よりも「つまらない」が前面にくる映画だった。

好きな人、ごめんなさい。