映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』〜大根テイスト全開〜

大根仁監督最新作の『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を鑑賞してきました。
作品名が長いですね。通称『民生ボーイと狂わせガール』だそうです。

原作は渋谷直角の漫画(未読)、脚本・監督は大根仁。

『民生ボーイと狂わせガール』のスタッフ、キャスト

スタッフ、キャスト

監督・脚本:大根仁
原作:渋谷直角
コーロキ:妻夫木聡
あかり:水原希子
吉住:新井浩文
美上:安藤サクラ
江藤:天海祐希
倖田:リリー・フランキー
編集長:松尾スズキ

あらすじ紹介

「愛のために」「イージュー★ライダー」「さすらい」など数多くのヒット曲を世に送りだしてきた奥田民生を敬愛する35歳の編集者コーロキ・ユウジ(妻夫木聡)は、ライフスタイル雑誌の編集部に異動することに。不慣れな環境に苦労しながらも日々奮闘していたある日、仕事で出会った天海あかり(水原希子)を好きになる。それ以来彼女にふさわしい男になろうと仕事に打ち込み、デートの時も一生懸命頑張っていたが、何をやっても空回りしてしまい……。

出典:シネマトゥデイ



奥田民生ファンの反応は?

ユルくて、でも決めるところは決めて。
そんなかっこいい奥田民生に憧れる主人公のコーロキ(妻夫木聡)
編集者歴10年と言っていたので33歳くらいの設定かな?

作内で天海祐希演じるクライアントに名前を読んでもらえないコーロキ。

まあ浦和レッズサポーターの我々からしたら読めて当然なんですが!

宮崎県にとても多い苗字だけど、全国的には珍しい。

その天海祐希が社長を務める会社のファッションプレスをしているのが、狂わせガール・天海あかり(水原希子)

コーロキは先輩の吉住(新井浩文)に連れられて行った初めての取材であかりに出会い、一目惚れしてしまう。

「だっ、大丈夫だっ!」◀︎おまえ志村けんかよ、に笑った…

作内では特に序盤、奥田民生の曲が矢継ぎ早にかかる。

海辺でキスをする2人。
水族館でキスをする2人。
飲み屋でキスをする2人。
タクシーでキスをする2人。

ホテルでキスをする2人。

シーンごとに曲が変わり、ショートMVのような形だった。

僕は奥田民生をよく知らないが、知ってる人なら必ずどこか琴線にふれるポイントが選曲や流し方にあるはずだ。

大根仁とはそういう監督である。

広島カープやSMAPが話題になった昨今にあって、奥田民生の導入部はタイムリーなものだったと思う。

モテキ、恋の渦、SCOOP

大根監督の過去作をいくつか挙げると、
『モテキ』(2011)
『恋の渦』(2013)
『バクマン。』(2015)
『SCOOP!』(2016)
などがある。

本作『民生ボーイ』ではそんな過去作との共通点がところどころに感じられた。



編集者・コーロキ

ライフスタイル雑誌の編集部に務めるコーロキ。
『モテキ』では音楽雑誌ナタリーの編集者、『SCOOP!』では写真週刊誌のカメラマンが主人公となっていた。

『バクマン。』も漫画家という立場から集英社と関わる映画である。

本作は、いわゆる同業という点でやはり『モテキ』の幸世(森山未來)に近い雰囲気を感じるコーロキの描写だった。

『モテキ』で幸世の上司を演じていたリリーフランキーが、今回はフリーライターとして出演しているのも面白い。

新米編集者に説教を垂れ、「ストリィト」は何たるかを説き、最後は原監督のグータッチ。
コーロキは嫌だっただろうなあ。

奥田民生は広島カープファンで有名だ。

『モテキ』の主人公に訪れるのは恋敵を取材するという試練であったが、セカンド童貞の幸世くんよりもコーロキの方が仕事をちゃんとしている。

当然か。編集者歴10年なんだから。

適当な口約束をするとどうなるか、また締め切りを守らないライター、コラムニストにどう対応するか。

ベーシックなところではあるが、編集者の仕事としては『民生ボーイ』の方が実践的だ。

それにしても編集部の職場って綺麗でクリエイティブだなぁ…

意識高い人たちの働く場所って感じ。

『モテキ』との共通点

音楽が作品の根幹をなしていることからも作品の毛色として『モテキ』とは近い。

そもそも前提として男主人公<圧倒的に可愛い彼女というパターンが一緒だし、モテる彼女に対して煩悶する男というのも似ている。

個人的に思ったのは、10人中9人が可愛いというであろう長澤まさみ(『モテキ』)と違い、好みの分かれる水原希子を起用したのは英断。

あかりに対して、何様?と思う男性は少なくないと思う。多分やってることはみゆき(長澤)と大して変わらないのだけど…

あかりの真意を図りかね煩悶するコーロキはベッドに飛び込み、ジタバタ。
これ、『モテキ』で幸世くんがやってたのと同じです。

「ぅやりたいやりたいやりたいやりたい!!!!」(幸世)

部屋で愛を育んだ後(この辺がさらっと描かれるあたり、コーロキは女性経験が乏しいわけではなさそう。幸世への一つのアンサーだろうか)、コーロキはミネラルウォーターを飲む。

………これは…

『モテキ』を見た人なら……ね?

想像しますよね?

口移しアゲインかと期待したもののそれは無し。

でもあかりがコーロキのTシャツをオーバーサイズで着ていたり、ね?

あかりがオーガニック野菜売り場でコーロキに「私たち合わないね」と言い放ったのは、『モテキ』で幸世がるみ子(麻生久美子)に言い捨てたシーンと似ている。(その後に「しん゛せい゛かまってぢゃんとかちゃ゛んと聞ぐがらぁ(号泣)」となるわけですね)

やっぱり重ね合わせてしまうわけです。

『モテキ』ではTwitterがメッセージのやり取りに象徴的に使われていたけど、本作はLINEとInstagram。

あかりのインスタ投稿に対する「いいね!」が(あの業界にしては)微妙に少ないところが現実的で良い……

『恋の渦』との共通点

愛すべきDQNの人間模様(恋愛模様では決してない)を描いた『恋の渦』ともリンクする点があった。

コーロキに取られたことを知り、あかりを電話で恫喝する吉住。その後、彼は猫ちゃんのように豹変して「ヤダ!別れたくない」と駄々をこねる。

なーんか見たことある光景。

『恋の渦』でユウタ(松澤匠)がやってましたね?これ。

束縛彼氏をこき下ろし「俺だったら絶対にあかりちゃんにそんな思いさせない」と豪語しつつも、連絡が途絶えた途端にLINEを送りまくるコーロキ。

『恋の渦』ではオサム(圓谷健太)が留守電に同じことをやっており、また自分がウザいことにハッと気づくコーロキは『恋の渦』のタカシ(澤村大輔)に似ている。

極め付けはキスホリックの2人がチューをし、絡み合ったままドアを開けて靴を脱ぎ、部屋に転がり込むシーン。

これオサムとユウコ(後藤ユウミ)や!
あの名シーンが四年の時を経て再現や!
と僕はむちゃくちゃ興奮しておりました。

多分大根監督も気に入ってる演出なんだろうなと。

あかりがコーロキに「カレシ」と言うところもカオリ(柴田千紘)とタカシのシーンにそっくりだったり、『恋の渦』の非DQN版みたいなノリで楽しめた。

ちょいちょい人間のゲスい部分が垣間見える。

あとは吉そば

『恋の渦』の「富士そばにしよっか。24時間開いてるし」よりも圧倒的に存在感がある吉そばの使い方。

観終わったら立ち食いそばが食いたくなりました。

大根テイスト全開。ファンは是非

最後に役者について。

妻夫木聡は普段通り、役に染まれる良さが出ていた。

顔をくしゃくしゃにして笑うのも妻夫木ならではの持ち味。

水原希子はスキニーパンツのお尻を突き出し、下着姿を何度も披露し、よく頑張りました。
前述した通り、そこまで万人ウケする可愛さではないところがキャラ付けに一役買っていたと思う。

もう一人、美上というエッセイストを演じた安藤サクラは完璧。

目を合わせないで早口でワタワタ喋るあの様は完全にオタク。

ブンデスリーガの放送だとか、内田篤人にBL妄想をしたりだとか、猫にドログバと名前をつけたりだとか色々気持ち悪い。

うんうん、よくわかる。僕もオタクだから。

そんな難しい役柄を演じ切った安藤サクラには心より賞賛を送りたいと思います。

過去の作品を想起させるところが個人的に相当ハマったので、大根さんらしさとしては満点でした。

エンドロールは意外にもあっさり!

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