映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』〜大根テイスト全開〜

大根仁監督最新作の通称『民生ボーイと狂わせガール』を鑑賞してきました。

原作は渋谷直角の漫画(未読)、脚本・監督は大根仁。

 

 

▲主演は妻夫木聡と水原希子 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

 

奥田民生ファンの反応は?

ユルくて、でも決めるところは決めて。
そんなかっこいい奥田民生に憧れる主人公のコーロキ(妻夫木聡)。
編集者歴10年と言っていたので33歳くらいの設定かな?

▲妻夫木演じるコーロキ。ライフスタイル雑誌「マレ」の編集部に異動してきた。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

作内で天海祐希演じるクライアントに名前を読んでもらえないコーロキ。

宮崎県にとても多い苗字だけど、全国的には珍しい。

その天海祐希が社長を務める会社のファッションプレスをしているのが、狂わせガール・天海あかり(水原希子)。

コーロキは先輩の吉住(新井浩文)に連れられて行った初めての取材であかりに出会い、一目惚れしてしまう。

「だっ、大丈夫だっ!」◀︎おまえ志村けんかよ、に笑った…

 

▲女社長・天海祐希はヨックモックを「ゲロ美味!」と言って食す。それを聞いているあかり(水原)は… (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

作内では特に序盤、奥田民生の曲が矢継ぎ早にかかる。

海辺でキスをする2人。
水族館でキスをする2人。
飲み屋でキスをする2人。
タクシーでキスをする2人。

ホテルでキスをする2人。

シーンごとに曲が変わり、ショートMVのような形だった。

僕は奥田民生をよく知らないが、知ってる人なら必ずどこか琴線にふれるポイントが選曲や流し方にあるはずだ。

大根仁とはそういう監督である。

広島カープやSMAPが話題になった昨今にあって、奥田民生の導入部はタイムリーなものだったと思う。

▲これはチューのシーンではないけれど、あかりが行きたいと言ったお店。意外と庶民的だがそれすら狙ってるのではないかと勘ぐらせるほどに水原希子はあざとい。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

モテキ、恋の渦、SCOOP

大根監督の過去作をいくつか挙げると、
『モテキ』(2011)
『恋の渦』(2013)
『SCOOP!』(2016)
などがある。

本作『民生ボーイ』ではそんな過去作との共通点がところどころに感じられた。

スポンサーリンク



編集者・コーロキ

ライフスタイル雑誌の編集部に務めるコーロキ。
『モテキ』では音楽雑誌ナタリーの編集者、『SCOOP!』では写真週刊誌のカメラマンが主人公となっていた。

『バクマン。』も漫画家という立場から集英社と関わる映画である。

本作は、いわゆる同業という点でやはり『モテキ』の幸世(森山未來)に近い雰囲気を感じるコーロキの描写だった。

『モテキ』で幸世の上司を演じていたリリーフランキーが、今回はフリーライターとして出演しているのも面白い。

新米編集者に説教を垂れ、「ストリィト」は何たるかを説き、最後は原監督のグータッチ。
コーロキは嫌だっただろうなあ。

奥田民生は広島カープファンで有名だ。

▲リリーフランキーは面白かった…!短いながらも濃すぎる演技。『SCOOP!』のチャラ源役に近いのか。この部屋のセットに込められた大根監督のこだわりがヒシヒシと伝わってくる。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

『モテキ』の主人公に訪れるのは恋敵を取材するという試練であったが、セカンド童貞の幸世くんよりもコーロキの方が仕事をちゃんとしている。

当然か。編集者歴10年なんだから。

適当な口約束をするとどうなるか、また締め切りを守らないライター、コラムニストにどう対応するか。

ベーシックなところではあるが、編集者の仕事としては『民生ボーイ』の方が実践的だ。

それにしても編集部の職場って綺麗でクリエイティブだなぁ…

意識高い人たちの働く場所って感じ。

『モテキ』との共通点

音楽が作品の根幹をなしていることからも作品の毛色として『モテキ』とは近い。

そもそも前提として男主人公<圧倒的に可愛い彼女というパターンが一緒だし、モテる彼女に対して煩悶する男というのも似ている。

▲ただし『モテキ』の幸世(森山未來)ほどコーロキに自虐的意識はない。彼氏がいると聞いた時の反応も対照的。 (C)2011映画「モテキ」製作委員会

個人的に思ったのは、10人中9人が可愛いというであろう長澤まさみ(『モテキ』)と違い、好みの分かれる水原希子を起用したのは英断。

あかりに対して、何様?と思う男性は少なくないと思う。多分やってることはみゆき(長澤)と大して変わらないのだけど…

あかりの真意を図りかね煩悶するコーロキはベッドに飛び込み、ジタバタ。
これ、『モテキ』で幸世くんがやってたのと同じです。

「ぅやりたいやりたいやりたいやりたい‼︎‼︎」(幸世)

部屋で愛を育んだ後(この辺がさらっと描かれるあたり、コーロキは女性経験が乏しいわけではなさそう。幸世への一つのアンサーだろうか)、コーロキはミネラルウォーターを飲む。

………これは…

『モテキ』を見た人なら……ね?

想像しますよね?

口移しアゲインかと期待したもののそれは無し。

でもあかりがコーロキのTシャツをオーバーサイズで着ていたり、ね?

あかりがオーガニック野菜売り場でコーロキに「私たち合わないね」と言い放ったのは、『モテキ』で幸世がるみ子(麻生久美子)に言い捨てたシーンと似ている。

▲「しん゛せい゛かまってぢゃんとかちゃ゛んと聞ぐがらぁ(号泣)」 (C)2011映画「モテキ」製作委員会

やっぱり重ね合わせてしまうわけです。

『モテキ』ではTwitterがメッセージのやり取りに象徴的に使われていたけど、本作はLINEとInstagram。

あかりのインスタ投稿に対する「いいね!」が(あの業界にしては)微妙に少ないところが現実的で良い……

▲お泊り帰り。幸世くんじゃこんなバカップルにはなれませんな… (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

『恋の渦』との共通点

愛すべきDQNの人間模様(恋愛模様では決してない)を描いた『恋の渦』ともリンクする点があった。

▲吉住(右)は独占欲と幼児性にあふれている。ただし、仕事はできる。 新井浩文と安藤サクラが出ていると『百円の恋』を思い出します。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

コーロキに取られたことを知り、あかりを電話で恫喝する吉住。その後、彼は猫ちゃんのように豹変して「ヤダ!別れたくない」と駄々をこねる。

なーんか見たことある光景。

『恋の渦』でユウタ(松澤匠)がやってましたね?これ。

▲君を守ると豪語するコーロキ。まあ完全な嘘ではないんですが。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

束縛彼氏をこき下ろし「俺だったら絶対にあかりちゃんにそんな思いさせない」と豪語しつつも、連絡が途絶えた途端にLINEを送りまくるコーロキ。

『恋の渦』ではオサム(圓谷健太)が留守電に同じことをやっており、また自分がウザいことにハッと気づくコーロキは『恋の渦』のタカシ(澤村大輔)に似ている。

極め付けはキスホリックの2人がチューをし、絡み合ったままドアを開けて靴を脱ぎ、部屋に転がり込むシーン。

これオサムとユウコ(後藤ユウミ)や!
あの名シーンが四年の時を経て再現や!
と僕はむちゃくちゃ興奮しておりました。

多分大根監督も気に入ってる演出なんだろうなと。

あかりがコーロキに「カレシ」と言うところもカオリ(柴田千紘)とタカシのシーンにそっくりだったり、『恋の渦』の非DQN版みたいなノリで楽しめた。

ちょいちょい人間のゲスい部分が垣間見える。

あとは吉そば。

『恋の渦』の「富士そばにしよっか。24時間開いてるし」よりも圧倒的に存在感がある吉そばの使い方。

観終わったら立ち食いそばが食いたくなりました。

大根テイスト全開。ファンは是非

最後に役者について。

妻夫木聡は普段通り、役に染まれる良さが出ていた。

顔をくしゃくしゃにして笑うのも妻夫木ならではの持ち味。

▲笑うコーロキ。このパーカーとニットキャップはよく着用してましたね。 (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

水原希子はスキニーパンツのお尻を突き出し、下着姿を何度も披露し、よく頑張りました。
前述した通り、そこまで万人ウケする可愛さではないところがキャラ付けに一役買っていたと思う。

▲男からしたら最低の役柄ですが(褒めてます)水原希子の下着姿は必見! (C)2017「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」製作委員会

もう一人、美上というエッセイストを演じた安藤サクラは完璧。

目を合わせないで早口でワタワタ喋るあの様は完全にオタク。

ブンデスリーガの放送だとか、内田篤人にBL妄想をしたりだとか、猫にドログバと名前をつけたりだとか色々気持ち悪い。

うんうん、よくわかる。僕もオタクだから。

そんな難しい役柄を演じ切った安藤サクラには心より賞賛を送りたいと思います。

 

作品全体の評価は奥田民生に詳しくなかったことと、最後の四角関係のところで減点で★★★★☆。

ただ、過去の作品を想起させるところが個人的に相当ハマったので大根さんらしさとしては満点でした。

エンドロールは意外にもあっさり!

スポンサーリンク