映画『さんかく』を鑑賞。
主演に高岡蒼甫、恋人役に田畑智子、その妹役に小野恵令奈。
監督・脚本は『純喫茶磯辺』などを手がけた吉田恵輔。
『さんかく』のスタッフ、キャスト
監督・脚本:吉田恵輔
百瀬:高岡蒼甫
佳代:田畑智子
桃:小野恵令奈
佳代の友人:矢沢心
桃の彼氏:太賀
あらすじ紹介
百瀬と佳代のカップルは、お互いに説明できないわだかまりを抱えたまま、だらだらと同せい生活を続けていた。そんなある日、佳代の中学生の妹・桃が夏休みの間を利用して2人の家に転がり込んでくる。桃の大人びた素振りに動揺する百瀬に対し、佳代は日に日に不信感を募らせていく。
映画のネタバレ感想
以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
素晴らしき男女のリアル
素晴らしい。何が素晴らしいって、市井の男女生活をこれほどまで如実に表した映画は初めて見た。
主人公の高岡蒼甫はだらしなく、彼女の陰で妹に思いを寄せ、その一方で虚勢ばかり張る男。
端から見ればそれは滑稽なほど最悪な男なのだけれど、そんな彼は僕からすればものすごくリアルで、虚勢を張る気持ちがわかって、でもシンパシーを感じる自分がかっこ悪くて情けなくて……
男の格好悪い生き物という部分をこれでもかと見事に演じた高岡蒼甫は最高。
また、いつまでも先輩風を吹かされる後輩の心情や、いつもパシられる職場の同僚のさりげない反逆。
高岡演じるモモセが口ばかりの小さい男だからこそ生きるのだけど、そのような細かい描写も丁寧だった。
と、ここまでは男のダサさ、情けなさについて。
重いよ…怖いよ…この女
本作のテーマとして、恋愛感情における「重さ」というものがある。モモセ(高岡)は彼女・カヨ(田畑)の妹・モモ(小野)に思いを寄せ、それはいわゆる「義兄」に似た立場、すなわちそう簡単に切れることのない関係を利用してというのも頭に入れながらアプローチを図る。
また、モモは作品の序盤で中学時代の先輩を追いかける。
そしてカヨは……別れを告げられ、頭ではわかっていても気持ちのコントロールがつかなくなってしまう。
様々なものが交錯し絡み合い、カヨは豹変した。
このヒステリーぶりもまた、田畑が上手に演じている。極めて男性的な見方と前置きさせてもらえるならば、カヨの起こすヒステリーもまた、実感できる男性は多いと思う。
キーパーソンとなる小野恵令奈の演技力にもびっくりした。
掠れて遅れ気味に出てくる声、中学生の無垢な腕や太ももの露出。色っぽいというのとは違うかもしれないけど、モモセが色めき立つ理由もなんとなく分かる。
ラストシーンの余韻に
まとめてしまえば、男女における究極のリアルを抽出した作品といってもいい。かといって、そのようなテーマの歌詞が多い湘南乃風がテーマソングを歌ったらしっくりくるとも思わない。
市井の生活から元気を生み出そうというよりも、男女の愚かな部分に気づかされる作品。ただ、ラストシーンは最高。一瞬えっ、と絶句したけど、あの余韻はたまらない。
本当に新しい衝撃を与えてくれた作品。オススメします。
何度見てもたまらない。