二週間ほど前に見た映画です。
2013年、前田司郎監督の『ジ、エクストリーム、スキヤキ』。
窪塚洋介、井浦新の『ピンポン』コンビを抜擢した作品。
事後か、事前か
エクストリーム《extreme》は極端な、とか最高の、とか常軌を逸したというような意味だけども何がエクストリームなスキヤキなのかを読者が見つける必要も向こうが提示してくれることもない。
妙にカタカナ発音っぽい「ジ」というtheをつける一方でextremeはイクストリームではないのか?という無駄な突っ込みをこちらにさせるようなキャッチーな題名である。
内容は、幾つかの評論を見て思ったけど、やっぱり洞口(井浦新)が崖から転落した(自殺未遂?)ことの時系列を物語の前と捉えるか後と捉えるかでだいぶ異なってくる。
ちなみに僕は後という風に捉えていたが、どうやら前というのが辻褄が合いそうである。
井浦新に窪塚洋介、そして途中から倉科カナ、市川実日子を加えたいい年した四人の男女のとある週末のドライブ。
中身はとても抽象的で、セリフもまた哲学的というか馬鹿というか…な掛け合いである。
窪塚洋介はあくまでも窪塚洋介
この作品のいいところは、おそらく35歳近い彼らが、その年代としては幼稚な部類に入るような描かれ方をしているにもかかわらず、こちらに感情移入をさせないほどキャラが立っていたところである。
大川という役は窪塚でしかなしえないし、井浦の洞口も、窪塚の彼女役の倉科カナも、京子という役を演じた市川実日子もまたそうだった。
キャラというよりも役者の個性やイメージがかなり高い度合いで落とし込まれていたと言うべきか。
僕は『もらとりあむタマ子』で主役が前田敦子の顔をした女の子にしか見えない、それほど前田敦子がタマ子になりきっていた、と書いたが、同じ最適役という意味でも真逆である。
前田敦子が前田敦子という看板を外してタマ子になりきったのに対し、大川はあくまでも窪塚洋介であり、作り手側も恐らくは多少役者の個性にアジャストしたと思う。
だから感情移入するわけでもなく、彼らの人間模様を観察するわけでもなく、かといって決して四人は僕らから遠すぎる世界の人間ではなかった。
それを可能にするのはセリフの数々と井浦新からほとばしる対人関係への微妙な恐怖心だったりする。
倉科カナの人間味が良い…!
個人的に一番良かったのは倉科カナ。彼女は姉御肌なキャラクターくらいがちょうどよく、その一方で同級生のコミュニティーという点では大川、洞口、京子の三人とは異なり孤立している。
彼氏とその(元)友人の男女とクルマで2日間を過ごすのだからそれなりに気苦労もあるだろう。
京子との八百屋のシーン、また後部座席で窓の外を眺めるシーンなどはとても自然だった。
高良健吾が究極のちょい役で出演しており、内田慈も見られて満足。
いろいろ深く考察しようと思えばできそうな映画だが、単純にエクストリームな四人を楽しむのが大事かも。