映画『もらとりあむタマ子』〜前田敦子の超絶傑作〜

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2013年公開の映画『もらとりあむタマ子』を鑑賞。前田敦子主演。

監督は『天然コケッコー』、『マイ・バック・ページ』の山下敦弘。

大学を卒業して甲府の実家に戻り、就職活動もせず食っちゃ寝アンド漫画のニート生活を送る坂井タマ子さん(前田敦子)。
父親(康すおん)との二人暮らしを四季に分けて撮ったものである。



もらとりあむ敦子

モラトリアムという言葉は就職など新たな門出への充電期間という意味であるが、それにしても怠惰な前田敦子。
家にいる時の彼女は、ご飯を食べている時以外ほぼ全て寝っ転がっているか足を投げ出して漫画を読んでいるか、である。

(またこの読んでいる漫画が『天然コケッコー』だったりして面白い)

彼女が一念発起モードに突入した一瞬、履歴書を書いたわけだが、趣味はカメラ(その描写は、ない)、特技はしばし考えた後に「人間観察」。

後半部分でよくお父さんのことを観察しているなというシーンがあるのでまあ納得なのだけど、この作品はとにかく前田敦子が演じるタマ子を我々が観察していく、そんな映画だと思う。

撮影では長回しを多用してお喋りと沈黙に生活感を出すことに成功。

そして何と言っても前田敦子イコール坂井タマ子の完成。アイドルらしさ、元AKBらしさはゼロ。

演じているというよりは、もう本当にもらとりあむ敦子になっていて、個人的には前田敦子の演じるタマ子ではなく、タマ子は前田敦子の顔をしている女の子という風にしか見えなかった。

僕は恋と部活に忙しいんだ

撮影のタイミング(元々エムオンの特別ドラマから派生)だと思うけど、タマ子の髪は長め→ボブ→また元の長さに戻る。

ただ、このボブの後に髪の長い状態でお団子ヘアを長い時間挟むことによって違和感は感じなかった。

生活感で言えばお父さんが仕事中は前髪を上げ、食卓では下ろし、ほろ酔いの帰宅では顔を赤らめて頬が緩んだ状態にしていたのが印象的。

食卓の「いただきます」の変遷やタマ子が何故一時期、レンジで温めた野菜ばかりを食べていたのか、食事中の生活音にも注目してもらいたい。

もう一人、甲府にて孤独なタマ子の唯一の友達兼パシリの中学生男子が出てくるのだけど、どうやら劇中で声変わりしたようでそれもまた奇跡。
そして彼のセリフがいちいち面白く…一つだけ抽出すると

「僕は恋と部活に忙しいんだ。誰かと違って」

レビューでこういう表現を使うのは抵抗がありますがあえて使うと…

wwwwwwwwwwwwwww

中二病かな??でも真理を射ているぞ、と。

話すあっちゃんも、怒るタマ子も、自転車にまたがるタマ子も、ロールキャベツを貪るタマ子も、ぐうたらするあっちゃんも、タオルケットにくるまるあっちゃんも全てが愛おしく、前田敦子=坂井タマ子としてそこにいる。

高評価の理由がわかったどころか、僕はこの作品に満点以外をつけることができない。

好みを撃ち抜いた一作。

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