映画『アリーキャット』ネタバレ感想〜降谷建志の演技はいかに?〜

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

2017年の映画『アリーキャット』を鑑賞しました。

窪塚洋介とDragon Ashの降谷建志(kjがダブル主演を務め、作品のキーを握る女性役には市川由衣を抜擢。

2000年代初頭に窪塚が出演していたIWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズや、Dragon Ashのヒット曲で育った人にはなかなか感慨深い作品となっています。

『アリーキャット』の窪塚も彼っぽいゆったりとした口調と、ちょっとワルそうな雰囲気が特徴的。
IWGPのキングを彷彿とさせるキャラクターに仕上げてきました。

一方の降谷建志は、これが映画初主演。
Dragon Ashのボーカルとして見せる顔とはまた異なる、ヤンチャなキャラとして窪塚の相棒を務めています。

 
監督は『捨てがたき人々』などの榊英雄監督。

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映画『捨てがたき人々』〜大森南朋の暴力性に耐えられますか?〜

2015年3月12日

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



『アリーキャット』のスタッフ、キャスト

監督:榊英雄
脚本:清水匡
マル(朝秀晃):窪塚洋介
リリィ(梅津郁巳):降谷建志
土屋冴子:市川由衣
玉木敏郎:品川祐
柿沢美智也:三浦誠己
南雲壮介:高川裕也
倉持洋一:森岡豊
橋本賢吾:馬場良馬
田口直樹:川瀬陽太
多田瑞希:柳英里紗
羽柴康夫:火野正平

マルリリィというのは、朝(窪塚)と梅津(降谷)お互いの呼び名。

朝の可愛がっていた野良猫・マルが失踪し、保健所でその猫を引き取った梅津が猫をリリィと命名しました。

一匹の猫を「マルだ!」「リリィちゃんだ!」と主張し合っているうちに、お互いのことも「マル」「リリィ」と呼び合っていきます。

高川裕也が演じた南雲壮介は与党幹部の政治家。彼の手先(SP)として森岡豊馬場良馬が黒服姿でマル、リリィの前に何度も立ちふさがっていきます。
登場シーンが多いのでこの役者さんが好きな人は是非ご覧になってみてください。

 

あらすじ紹介

ボクシングの東洋チャンピオンだった朝秀晃ことマル(窪塚洋介)。彼は試合中に頭部に負ったけがの後遺症に苦しみながら、警備会社でアルバイトをしていた。野良猫が行方不明になったのと同じころ、自動車整備工場勤務の梅津郁巳ことリリィ(降谷建志)に出会う。ひょんなことからシングルマザーのボディーガードを頼まれたマルと、女をストーカーする男を殴ってしまったリリィは、女を守るために東京へ向かう。

出典:シネマトゥデイ

このあらすじに書いてあるシングルマザーの「女」は冴子市川由衣が演じています。
もともとグラビア出身の女優さんということもありますが、市川由衣の体当たり演技には注目です。

とある理由で追われる身となった彼女を、マルとリリィが守りながら生きる道を探していくストーリーです。

ちなみにタイトルの「アリーキャット」というのは「野良猫」の意味。

この野良猫という単語は作品の終盤でも出てくるキーワードです。
「野良猫」とは誰?という点を考えながら鑑賞するのがオススメです。

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

まほろ駅前シリーズと似ている?

ワケあり物件の主人公が「人助け」のもとに、自由奔放な相棒と一緒に危険な挑戦をする構図は、瑛太と松田龍平のコンビで人気を博した『まほろ駅前』シリーズに少し似ています。

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映画『まほろ駅前狂想曲』感想〜瑛太の多田の安定感〜

2016年1月9日

『まほろ駅前狂騒曲』で吉村刑事を演じた三浦誠己がキーパーソンとして出演している点も見逃せません。

元ボクサーのフリーター・マル(窪塚洋介)と、瓶コーラが大好きなヤンチャ坊主・リリィ(降谷建志)がコンビを組む冒険譚。

ヤンチャ坊主と書いてはみたものの、二人とも「若者」と呼ぶには明らかに歳をとっているので、30オーバーのかっこいいフリーターのおじさんが後先考えないで突っ走ってみようか的なスタイルです。

FILMAGAさんの記事では、そんな二人を「コドナ」と表現しています。

「大人でも子供でもない」という観点からつけたフレーズは抜群のセンスです。是非ご一読を。

紫のスタジャンのリリィと切り替えのジャケットを着るマル。
作品通じてほぼ二人の服装が一貫していたのは良かったと思います。
(スカウトマンに絡んだ時の変装グッズはいったいどこへ?)

『まほろ駅前』でも(特に瑛太の多田は)同じ服装でキャラクターを明確なアイコン化していたのが印象に残りました。

展開説明は物足りない

映画の肝となっているのは追われる冴子(市川由衣)

幼い息子とともにシングルマザーとして生きている彼女は、マルとリリィに出会うまでに様々な形で男の恨みを買っていました。

ストーカーの元彼・玉木(品川祐)はさておき、政治家・南雲(高川裕也)にハニートラップを仕掛けて逆恨みされる姿はまあ当たり前かなという気がします。

マルも相当やってきたことはえげつない男でしたが、それ以上に冴子はいわくつきのワケあり物件という印象。
彼女と関わることによってマルとリリィは生死を脅かされ、瑞希(柳英里紗)は殺されてしまいます。もらい事故というほかありません。

この追われる冴子に対する描写、また彼女のあくどい部分が描ききれなかったのは映画の残念な部分でした。

物語の終盤でマルは冴子に全部スキャンダラス写真をばらまいて、息子と逃げればいいと提言します。

最初からなぜそうしなかったのか。
なぜ東京に行ったら柿沢(三浦誠己)は自分を助けてくれると思ったのか。

冴子の行動や心理については「なぜ?」が広がるばかりでした。

敵役がはっきりしていただけに、冴子にはもう少しミステリアスな一面が、マルとリリィをハメようとしているのでは?という恐ろしさが欲しかったですね。
あれじゃあただのかわいそうなシングルマザーです。

とりあえず悪役が死んで解決という終盤の展開も、あまり好きではありませんでした。

品川祐の演技がすごい

独特のゆったりとした口調でいつも通り喚き散らす窪塚洋介や、気持ち悪さを前面に出した悪徳経営コンサルタントの三浦誠己の演技が光った本作品。

南雲のSPを務めた森岡豊と馬場良馬のハンター感も目を見張るものでした。
 

その中で最も輝きを放っていたのは、ストーカーとして冴子を付け狙う玉木を演じた品川祐です。

気持ち悪い言葉を並べ立てて冴子に迫り、リリィに殴られて邪魔をされた玉木。

序盤は未練たらしく冴子に「一緒に帰ろう」と迫るただの気持ち悪い男でしたが、映画が進むにつれて彼は「気づけばそこにいる」という見る者にとって最も恐ろしい存在になっていきます。

マルとリリィ以上に窮地に何度も追い込まれながらもことごとく逃亡を果たし、ゾンビのように生還を果たす玉木。不死身かよ。

オドオドした様子や口元のニヤニヤは、時間が経つにつれて皆無に。
逃げても逃げても新しい敵が出現する中で、SPたちの必死さとか、柿沢の余裕とか、そういったものを超越する恐ろしさが品川の玉木にはありました。

何より極悪非道ですね。彼が一番。

喧嘩が強いわけでも頭がキレるわけでもなく、執念(しかもそんなに描かれていない)だけで主人公たちと渡り合う玉木の普通な恐ろしさが怖かったです。
あんなのが子供の保育園に来たら間違いなくトラウマになります。

結論・降谷建志の演技を愛でよう

最後に映画初主演となったkjについてです。

青春時代の毎日をDragon Ashの音楽とともに過ごした世代にとっては、もはや演技をしている降谷建志を観られるだけで幸せでした。

kjってこんな風に笑ったり叫んだり、走ったりするんだ、って。

中学生がそのまま歳をとったようなリリィ(降谷)はヤンチャで、でも可愛らしくて優しくて。
臆病な本心を隠しつつ、明らかに悪そうなマルに必死でついていこうとするリリィ。

タトゥーが入りまくったあの風貌で醸し出す小物感に、大いにギャップを感じた方も多いと思います。
ベーコンじゃなくてウインナーのナポリタン、飲み物は瓶コーラ。超キッズ嗜好!

上でも紹介したFILMAGAさんのインタビューでは、ザ・降谷建志という感じのエッジの効いた言葉でkjが語っています。ぜひどうぞ!

降谷建志とリリィ

演技面で言うと、いつもの窪塚ワールドで進むマルや、これでもかという悪役ぶりを披露する面々に比べて降谷建志は一生懸命言葉を発している印象を受けました。

自分の居場所を見つけるために遠巻きに吠えてみたり一足遅いタイミングで援護射撃に加わってみたり。

マルが世間からドロップアウトした野良猫だとしたら、リリィは迷子の子猫という感じでしょうか。

リリィの繰り出すパンチが総じて猫パンチだったのも笑えました。

そんな必死なリリィが、柿沢の元に冴子を送った後に黙りこくり、助手席のマルがしびれを切らしたように一人語りを喚く車中のシーンは、幼いリリィとスカしているマルの二人の立場が逆転したかのよう。
見るからに一番やばい羽柴(火野正平)に食ってかかるリリィを見て、彼の成長を感じられた人は決して少なくないでしょう。

冴子を息子の元に送り届けた後のリリィの消息は描かれていません。
猫がマルの元に戻り、マルが「お前何回生まれ変わるんだよ。お前もやっぱりリリィでいいや」と、「相棒」として猫をリリィと呼んでいることから、リリィがもうマルたちの町(豊橋)にいないことがなんとなくわかります。

リリィも結果的に殺人犯の一人になったわけですから、逃げたか、消されたか、捕まったか、そのような予想ができます。
個人的にはリリィだけが狙われてマルがのほほんとしているのは考えにくいので、出頭したのかな、なんて。
 

最後に、梅津の呼び名、そして猫の名となっていた「リリィ」について。
降谷建志=リリィのキャスティングは、キャラクターが決まり、マルを窪塚に当てた後に決まったものでしたが、この縁についてはなかなか感慨深いものがあります。

ご存知の方は多いかもしれませんが、Dragon Ashの象徴は「Lily」(百合の花)。

このあたりも運命的なものを感じて嬉しかったです。
最初に降谷が「この猫?リリィ」と言葉を発した時には、思わず巻き戻しました。

カリスマ降谷建志の演技を楽しみにして鑑賞した人は、十分楽しめたのではないでしょうか。

ストーリーの拙さと女性軽視の映し方もあり、映画としては凡作だと思いましたが、役者・降谷建志をたっぷりと堪能できたのは幸せでした。

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