映画『タイヨウのうた』ネタバレ感想〜響け。届け。YUIの名曲〜

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

様々な映画を観ていると、時々「王道」スタイルの映画が新鮮に映ることがあります。

少女と少年が出会い、恋に落ち、夢を叶えるために頑張って。
でもそこには何かしらの障壁だとか、動かしがたい運命のいたずらがあって。

特にテレビ局が絡んだ邦画ではよくありがちなものですが、その「ベタ」なところに安心することもまた事実です。

今回はAmazon Primeで鑑賞した2006年の映画『タイヨウのうた』についてご紹介していきます。

太陽光に当たることができない難病を抱えた少女が、爽やかな少年と出会い、恋をしました。
自らの大好きな「歌」を、周囲に支えられながら歌い、一つの名曲が生まれていく。

年月が経っても色褪せない、爽やかな王道のラブストーリーです。




『タイヨウのうた』のスタッフ、キャスト

監督:小泉徳宏
原作・脚本:坂東賢治
雨音薫:YUI
藤代孝治:塚本高史
雨音謙:岸谷五朗
雨音由紀:麻木久仁子
松前美咲:遠山愛里
大西雄太:小柳友
加藤晴男:田中聡元
路上ライブバンド:LACCO TOWER

監督は『ちはやふる』シリーズの小泉徳宏。

『ロボコン』などで熱演した塚本高史とともに、演技初挑戦となったYUIがヒロインの雨音薫を見事に演じています。

シンガーソングライター・YUI

主演を務めたYUIについて簡単にまとめてみます。

福岡の路上で弾き語りをしていたYUI、2004年にソニーミュージックグループのオーディションに応募。
翌2005年に「Feel my soul」でメジャーデビューを果たしました。

以降順調にシングル、アルバムをリリースし、2006年に本作『タイヨウのうた』に出演。
この映画の主題歌となった「Good-bye days」はオリコン週間シングルチャートで初登場3位にランクインし、翌年リリースされた「CHE.R.RY」とともにYUIを代表するヒット曲となりました。

現在30歳前後ぐらいの人には、とても馴染みのあるアーティストではないでしょうか。

その後は活動休止などを経て、現在はロックバンド「FLOWER FLOWER」のボーカルとして活動しています。

あらすじ紹介

太陽の光にあたれない“XP(色素性乾皮症)”という病気の薫(YUI)は、学校にも通えず、唯一の生きがいは夜の駅前広場で路上ライブをすることだった。そんなある日、彼女は孝治(塚本高史)という青年と出会い、急速に親しくなっていく。しかし、孝治に病気のことを知られてしまった薫は、初恋も歌もあきらめてしまう。

出典:シネマトゥデイ

XPという病気の描き方については賛否両論あるようですが、現実に存在する難病を題材とした以上、ある程度は仕方ない部分もあります。

また『タイヨウのうた』は公開翌月の2006年7月から沢尻エリカ山田孝之を主演に据えたテレビドラマとしても放送されていました。
沢尻が「Kaoru Amane」名義で歌った「タイヨウのうた」が印象に残っている人も多いかもしれません。

2018年にはハリウッド・リメイク作である『ミッドナイト・サン〜タイヨウのうた〜』が公開されました。

映画『タイヨウのうた』のネタバレあらすじは、MIHOシネマさんの記事でも読むことができます。
こちらも興味がある方はご覧ください。

 

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

難病を抱える少女。その周囲は?

薫(YUI)の抱えるXPという病気は生まれつきのもの。
けれどこの作品はその危険性を前面に出した作品ではありません。
乱暴な言い方をしてしまえば、悲劇を売りにした作品ではないということです。

これはとっても大事なことで、とりわけ薫を取り巻く周囲の人々の温かさが感動を誘います。

父親(岸谷五朗)母親(麻木久仁子)も親友の美咲(遠山愛里)も、病気の危なさを理解した上で、それでも薫のやりたいことを後押しする、そんな明るくて優しい空気が一貫して映画には流れていました。

両親がカフェを営む仕事柄、雨音家の冷蔵庫にはたくさんの食料が入っているのですが、お母さんが「美咲ちゃん、あんまり冷蔵庫のもの食べないでね(笑)」と釘をさすシーンや、それにもめげずに食料を調達して薫の部屋で頬張る美咲も。

チャラそうに見える孝治(塚本高史)が、素直な部分をお父さんや美咲に認められていくところも。

学校に行きたくないと言っていた美咲が、薫の頼みで校内の孝治を偵察(盗撮?)して、学校に対しての考え方が変わっていくところも。

深夜に街を見回る警官(小林隆)が路上でギターケースを開ける薫に声をかけようとした同僚に「あの子はいいんだ」と諭すシーンもそうです。

色々な人が薫の置かれた立場を把握し、その上で彼女の生活を支えている。
言葉にすると簡単ですが、実際にはすごく勇気のいる温かさです。

海辺のシーンが泣けます

敵役が出てこないのも、この作品のポイント。
厳密には薫が闘う難病がそうなのかもしれませんが、登場人物たちはみんな、彼女の病気を理解してXPとともに歩んでいる。そんな印象を受けました。

苦しそうに病気と闘う姿を映して御涙頂戴に走る部分は皆無と言っていいと思います。

そんな中で唯一といっていい、製作側が狙いにいったであろうシーンがありました。

薫が日光を遮る防護服を身にまとい、車椅子に乗って砂浜から海を眺めるシーンです。

娘を思うが故に時として過保護な頑固親父になっていたお父さんは、膝をついて薫の視線に並ぶと、こう語りかけました。

「もうめんどくさいから………そんなもん脱いじゃおっか」

「えっ」と驚くお母さんを横目にお父さんは続けます。

「脱いじゃえ脱いじゃえ、Tシャツにでもなってそのへん駆け回れ!」

この後薫は静かに「嫌だよ。そんなことしたら死んじゃうじゃん。私、死ぬまで生きるって決めたんだから」と返すわけですが、この「嫌だよ」には「ありがとう」の意味が込められています。

これまで必死に薫を日光から守り続けてきたお父さんが葛藤の中絞り出した、決断に対してのありがとうです。

「生きて生きて生きまくるんだから」と笑う薫を見つめるお父さん、そして「もうお父さんったら…バカなんだから」とお母さんが笑いかけたところで涙腺は決壊しました。

それまでお父さん、お母さんのキャラクターを丹念に描いてきたことの結果でしょう。ホームドラマ史上最高級のご両親といっていいと思います。

ラブストーリーであると同時に、それ以上に、孝治や美咲を含めた家族の温かさ、絆を丁寧に表現したドラマだと思います。

そして流れる「Good-bye days」。

この曲が薫にとっての大切な人たちに届く時。温かく優しい世界と、本物の歌声。

もう十分でしょう。
王道の感動映画の完成です。

サーフィンを楽しむ若者たちを迎える相模湾。

急勾配の坂道。高台にある雨音家。江ノ電。海の香りが漂う町。

陽に焼けた岸谷五朗と塚本高史。海がある生活を表現した彼らの服装。

横浜ビブレとそこに集うストリートミュージシャン。向かいには懐かしきキムラヤ。

夜22時の静かなみなとみらい。帆船日本丸。中華街。

メイン舞台は鎌倉、藤沢かと想像しますが、神奈川の魅力を随所に生かした映画だとも思います。

約15年前の作品ではあるものの、ちょっとレトロな真っ直ぐさ、無邪気さがぎゅっと詰まっていました。
YUIの歌声とともに、色褪せない作品です。

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