映画『君は月夜に光り輝く』ネタバレ感想|甘く見てたらラスト15分がやばすぎた

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2019年の映画『君は月夜に光り輝く』をご紹介します。

監督・脚本は『君の膵臓をたべたい』、『センセイ君主』などの月川翔監督。主演に永野芽郁さん北村匠海さん

難病により余命わずかと宣告されたクラスメイトの少女・まみず(永野芽郁)に、卓也(北村匠海)が関わっていくお話です。

月川翔監督と北村匠海さんといえば、『君の膵臓をたべたい』でも一緒に仕事をした間柄ですよね。
キミスイと似ているポイントもありました。そんなところも含めて感想を書いていきます。

本編が約96分の作品だったのでサッカーの試合風に例えると、後半ラスト10分+アディショナルタイムでぐわっとぶちのめされた、そんな感じでした。

あらすじ紹介

高校生の岡田卓也が出会った同級生の渡良瀬まみずは、不治の病である発光病で入院生活を送っていた。細胞の異常によって皮膚が発光するその病気は、死が近づくにつれて光が強くなり、成人するまで生存した者はいない。卓也は、病院から外出が許されないまみずに代わり、彼女の願いを実行し、その感想を彼女に伝える「代行体験」を始め、まみずは卓也との代行体験を通し、人生の楽しみを覚える。次第に2人の距離は縮まっていくが、卓也とまみずは避けることができない死の恐怖に襲われる。

出典:映画.com

スタッフ、キャスト

監督・脚本 月川翔
原作 佐野徹夜
渡良瀬まみず 永野芽郁
岡田卓也 北村匠海
まみずの母 生田智子
まみずの父 及川光博
卓也の母 長谷川京子
卓也の姉 松本穂香
香山彰 甲斐翔真
岡崎 優香
平林リコ 今田美桜

皮膚が発光する「発光病」と闘病する主人公・まみずを演じたのは永野芽郁さん。透明感とキュートなあざとさを兼ね備えた女子高生です。

個人的には卓球映画『ミックス。』が印象的でした!

松本穂香さん甲斐翔真さんは、『君が世界のはじまり』でも共演していました。

加えて、卓也のバイト先の同僚(先輩)・リコを演じる今田美桜さんがめちゃくちゃ可愛かったです。まみず(永野芽郁)が写真を見て嫉妬まじりに「可愛い子だね」と言っていましたけど、いやはや、段違いに美しかったです。

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



難病と闘う少女の設定

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

発光病。
有効な治療手段はなく、患者は臨床研究の対象となる。最大の特徴は細胞異常により、皮膚が発光することにある。
発光病は大人になるまで生存できない。

序盤で卓也(北村匠海)が説明する、「発光病」の症状です。
『君は月夜に光り輝く』のヒロイン・渡良瀬まみず(永野芽郁)が発症している病気で、タイトルの「光り輝く」は発光病の症状にもかけていることがわかります。

ちなみに「発光病」は架空の病気です。
観終わってから調べて知りましたが、少し心が軽くなりました。

いきなり個人的な趣向で申し訳ないんですが、病気をファクターとした作品って苦手なんですよね。ハードルを高くしてしまうといってもいいかもしれません。

この人は余命が短いから、最後に少々の無茶も叶えてあげたい、っていうのがきついんですよ。当事者にとってはいいかもしれないけど、保護者だったり、その人を見守る大切な人からしたら、それは本当に望んでいることなの?と思うんですね。

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2019年9月16日

『君は月夜に光り輝く』では、まみずが「叶えられない願い」を卓也に代行してもらうという形で、物語は進みます。当然まみずのお母さん(生田智子)はあまりいい顔をしません。

やりたいことの代行作業

罪滅ぼしをさせてほしい。

本当に何でもしてくれるの?

僕にできることなら。

まみずが大事にしていたスノードームを壊してしまったことで、卓也は贖罪として彼女の願いを聞いてあげることにします。

まみずがいたずらっぽく「本当に何でもしてくれるの?」と訊くくだりはキミスイの「真実か挑戦か」を彷彿とさせる雰囲気でしたし、彼女がやりたいことリストを作って卓也が答えてあげていく作業は『10万分の1』(2020年公開)で同じく難病を宣告された主人公(平祐奈)が「やりたいこと」をノートに書いたシーンにも似ていました。

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2020年12月4日
『君の膵臓をたべたい』の桜良と「僕」の関係も思い出しました。

お一人様としまえん(耳付き)にひとりパフェ、ひとり徹夜並び、ひとりヴィーナスフォート、ひとりバンジージャンプと、まみずの代わりにやりたいことを「代行」してあげる卓也。スマホのビデオ通話画面を回しながら。

遊園地ってあんなにカップルばっかりじゃないよねという無粋なツッコミはさておき、彼はまみずの目となり体となり、彼女に疑似体験をさせていきました。

雑誌でまみずが物欲しげに眺めていた赤い靴を、サプライズで買ってきた卓也には驚きました。

サマンサタバサのサンダルですよ?多分2万弱くらいしますよ?
高校生にとってはかなりデカいプレゼントになります。卓也くん素敵。惚れるわ。

メイドカフェでバイトしてるとはいえ凄い!

軽口を叩きながら足のサイズや誕生日を聞き出すあたりも、経験値高めで凄かったです。指輪のサイズとかもお昼寝中とかにさりげなく測っちゃうタイプのやり手でしょうね。彼は。

繰り返される最後のお願い

そんな卓也まみずに代行体験談を話しているうちに、二人の距離はだんだんと縮まっていきました。

「卓也くんってたまに優しいね」
「たまには余計だよ」

同じやり取りを繰り返したことで、二人の関係の居心地の良さが伝わります!

卓也はまみずのお願いを聞くことに、罪滅ぼしの感覚はもうなかったはずです。
次のお願いはなんだろう、僕が彼女にしてあげられることは他に何があるだろうと思いながら、過ごしていたと思います。

キミスイの時と同じように病院への忍び込みを繰り返す北村匠海。
さらに今回は看護師・岡崎さん(優香)という心強い理解者(共犯者といってもいいかもしれません)もいました。

けれどやはり余命がわずかの少女にかかるダメージ、刺激は親御さんから見て気になります。残酷な言い方になりますが、難病の研究対象としてのまみずの体は、もはや彼女だけのものではありませんでした。

まみずも、卓也との楽しい代行関係がいつまでも続くわけじゃないことをわかっていました。

あのね、お願いがあるんだけど。
もうこないでほしいの。今までありがとう。
もう2度と会いにこないでほしい。
これが最後のお願いだよ。

卓也くんのせいで、私生きたくてしょうがなくなっちゃった。

これが私と卓也くんの最後の代行だよ。
生きてくの。私の代わりに。

最後のお願い。聞いてくれる?

繰り返される「最後のお願い」。またか、ではなく、「生きたくてしょうがなくなっちゃった」に代表されるように、まみずの生への名残惜しさが、にじみ出ます。

そして彼女は旅立ちます。本当に最後の「最後のお願い」を遺して。

「事後」が上手すぎる件

正直なところラスト15分までは、観ていてそうでもなかったんですよ。

まみず(永野芽郁)が亡くなった時も、卓也(北村匠海)に感情移入することもそれほどなかったですし、傍観していました。

けれど、彼女の告別式で、他人事のように観ていた心はぐらぐらと揺さぶられました。

まみずは、この世界に残された卓也に、自分の分まで生きていく卓也に、最期のお願いを遺していました。

私にはまだいくつかやってほしいことが残っているんです。
お葬式に出てほしい。

彼女だったとみんなに言ってほしい。
大人にもなれずに死んでしまった子にも、素敵な彼氏がいたんだって見せびらかしたいから。

残された時間、君と過ごすことを自分で選んだの。

ねえ卓也くん、これが正真正銘最後のお願いです。幸せになってね。愛してます。愛してる。

ここは…やばかったですね……。
観ていて「あぉぉっ…」という情けないため息が漏れ、涙ぽろぽろ。

特に「彼女だったとみんなに言ってほしい」があまりにも強烈でした。

自慢の彼氏だったんですよ。代行という名のデートによって何回も共通の世界を体験した卓也くんは、まみずにとって彼氏だったんです。

「岡田、渡良瀬さんと仲良かったの?」という級友の問いに、「彼女だったよ」とさらりと答える卓也くん。
ああ。
優勝です。

彼を見遣る岡崎さんの表情もまた、たまらなかったですね…

思い返せば、『君の膵臓をたべたい』で泣いたのも、北村匠海が桜良(浜辺美波)の死後に、彼女の家を訪れたときでした。

月川監督は「事後」の描き方が本当に凄い。

大切な人を失った喪失感ではなく、大切な人を忘れずに噛みしめる想いにより、感動を与えることができる監督だと思います。悲劇的じゃないんですよね。

卓也がまみずのお父さん(及川光博)と悪くない関係性を築いていたのも上手いなぁと思いました。

親公認というには言い過ぎかもしれませんが、まみずの両親にとっても、卓也くんというまみずが本気で愛した相手がいることは、きっと大切なことです。
お父さんにとって、お母さんにとって、岡田卓也という青年は娘がこの世界で素敵な時間を過ごした証でもあるわけです。

自分が歳を取ったからか、親御さんが介在する恋愛は感情にグサグサくるんですよね…



見慣れた北村匠海の「僕」

最後に、キミスイに続いて月川監督とタッグを組んだ北村匠海さんについての感想です。

『サヨナラまでの30分』(2020年)の感想でも少し触れたのですが、北村匠海さんという役者は一人称「僕」を使わせたら無敵だと個人的に思っています。

『君の膵臓をたべたい』でも彼の演じた主人公は名前を明示せず、「僕」でひたすら物語が進みました。

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2020年1月31日

『君は月夜に光り輝く』の岡田卓也も、基本的に一人称は「僕」です。
斜に構えたとまでは言わないまでも、どこか陰のある部分を漂わせ、他人と自分に明確な一線を引いています。

まみずへクラス全員で送った色紙の寄せ書きには「早く病気が治るといいですね 岡田卓也」。
他人事みたいな定型句。笑

その色紙を病院へ渡しに行ったときも、卓也は基本仏頂面でした。

「ごめん、つまんないよね」 (まみず)
「…楽しいよ」 (卓也)

全然楽しそうじゃないんですが…

けれど、そんな他人事の卓也がだんだんとまみずのペースに引き寄せられ、それをまんざらでもないと思うようになっていくんですよね。
これはキミスイの前例があるからかもしれませんが、卓也にとってのまみずが「関係ないただのクラスメイト」から「特別な関係の彼女」になっていく変化を表現するのは、さすが北村匠海さんだなという感じがしました。

ちなみにこの作品で一番好きだった卓也のセリフは、まみずのお母さんに「関わらないでほしいの」と言われた後の「はい?」です。

単に驚いたのかもしれませんけど、あれは度胸がありましたね。笑

やっぱり北村匠海さんには「僕」がとっても似合います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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本記事で何度も引き合いに出しましたが、『君は月夜に光り輝く』とあわせて観ると、共通点を見つけることができるはずです。マジでボロ泣きしました。

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