早稲田松竹にて『ほとりの朔子』を鑑賞。
14年、監督・脚本・編集、深田晃司。プロデューサーの杉野希妃はメインキャラクターの一人としても出演していた。
あらすじ紹介
大学受験の浪人中、叔母の海希江から誘われて海と山のほとりの避暑地を訪れた朔子は、そこで海希江の幼なじみの兎吉と、その甥で福島から避難してきている同年代の孝史と出会う。朔子と孝史は何度か会ううちに次第にひかれあっていくが……。海と山のほとり、そして大人と子どものほとりで揺れ動く18歳の朔子の淡い恋心を描く。
スタッフ、キャスト
監督・脚本 | 深田晃司 |
朔子 | 二階堂ふみ |
海希江(朔子の叔母) | 鶴田真由 |
兎吉 | 古舘寛治 |
孝史(兎吉のおい) | 太賀 |
大学講師・西田 | 大竹直 |
辰子(兎吉の娘) | 杉野希妃 |
知佳(孝史の同級生) | 小篠恵奈 |
日米合作ということで、英語の字幕が下に表示される体裁。
主演の二階堂ふみ演じる朔子(浪人生)が海辺の町に夏休みを利用してやってくるのだが、同伴は叔母であり、その宿泊先もまた叔母であり…
序盤は互いに紹介をする際、「niece」「nephew」といった言葉がよく出てきた。
しかし、普段英語字幕の映画を見ない上に日本語を耳で聞いて英訳を見ていると、英語にはこんな表現があり、また日本語のこの言葉に対応する表現はないのだと、勉強になる。
映画の感想
大学受験に失敗した浪人生の朔子(二階堂ふみ)が、叔母・海希江(鶴田真由)と叔母の知人たちに囲まれて過ごす夏休みのひととき。
翻訳の仕事をしてキラキラ輝いている鶴田真由も、彼女の幼馴染みで優しくしてくれる古舘寛治も、爽やかな非常勤講師の大竹直も、みんなどこかにオトナとしての嫌な一面を隠し持っており、それが時に露わになる様を“外”の人間である朔子と我々は覗き見ていく。
また太賀が演じる孝史は、福島の原発事故の影響で叔父の古舘寛治が住むこの町に疎開しており、震災後の世界を伝えてくれる映画にもなっている。男の建前と本音とか、原発問題への一人歩きする反対運動とか、シーンごとに色々な描きたいものがあっただろうと推定できる展開。
日めくりで時間が流れていくのんびりした流れながらも、人の思惑を垣間見ているような感じで全く飽きなかった。
二階堂ふみに夢中になろう
『地獄でなぜ悪い』、『ヒミズ』といった園子温チームでの印象が強かった二階堂ふみ。
前述の2作品では確かに振り切れていたキャラだったが、この作品でも彼女の持つフィルターは健在である。本作も二階堂ふみの強めのキャラクターはそのままだと思う。
やはりこの作品は二階堂ふみを、アクの強い演技面以上にビジュアルで見せている。
大学受験に失敗して幾らかの絶望感をその心に抱えながら、大人と子供の狭間で揺れ動きながら、朔子は周りのオトナたちの包容力と醜悪なゴシップを観察する。顎をつんと上げて少しネットリとした口調で、ニコニコしながら、時に傍観的な冷めた目線で、無言の反抗を試みる。あれ、オトナってそんなもんなのか。
太賀くんの孝史は朔子よりも年下の設定であるわけだが、周りのオトナたちからコドモと見られる朔子を大人びた存在として惹かれていく。この太賀の魅了されっぷりと、彼がそりゃ魅了されるよねっていう朔子の全体的なフォルムがまた上手い。
赤いワンピースに水着、ショートパンツ。田舎の海辺の町に映える彼女の肌と鮮やかな服。無防備というか危ういというか、無垢というか。年齢は大して変わらないはずなのに、美しく大人っぽく映る朔子さん。強い。二階堂ふみの持つ誘引力はあまりにも強い。太賀と鼓動がシンクロするのではないかってくらいドキッとした。ドキドキじゃなくて、ドキッと。
『さんかく』の小野恵令奈で感じたものと少し似ているかもしれない。服装も含めて視覚的に刺激を受ける感じ。そういえば『さんかく』にも太賀くんは出演していた。
鶴田真由や杉野希妃ら年上の女性が男と関わっていく中で、映画を観ている人は多分、二階堂ふみに夢中になると思う。
抱き合わせで観た映画だったが、想像以上に良かった。女性目線が多いので女性の感想を聞きたいところ。