映画『きょうのできごと a day on the planet』〜流暢な関西弁と矢井田瞳〜

妻夫木主演の『きょうのできごと』を先日鑑賞。03年、行定勲監督。

原作は柴崎友香の単行本デビュー作。

本当に単なる「a day」

本作は、『ロボコン』を観た次の日に見た。
ロボコンの衝撃が凄かったために少し色褪せて見えるのかなと補正を意識しつつ鑑賞したが、こちらもどっこい素晴らしい映画である。

恐らく物語の起伏はもっと緩い。
単純にその日の出来事をいくつかピックアップして前後関係を説明しているだけである。

こういう市井というか日常を究極的に切り取った映画はともすれば退屈になるのだけど、僕にダレることを許さなかった要因がいくつかあった。

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時系列の調整

映画は高槻のSAで中沢(妻夫木聡)がトイレから出てきて缶コーヒーを買う夜の場面から始まる。
そこに、けいと(伊藤歩)が現れて自分も缶コーヒーを買ってもらい、ごちゃごちゃと話しながら車の方へ向かって二人は歩く。

車内には田中麗奈演じる真紀が寝ており、彼女は体を起こして静かに二人を見つめて、彼らがドアを開けるとまた目を閉じて横になる。

このシーンだけで、観ている人たちにはいくつかの選択肢ができるはずだ。

口調から推測される中沢と、けいとの関係。
話の内容から推測される中沢と真紀、けいとがそれまで何をしていたかという事。
真紀が二人を見つめて再び目を閉じたことから推測される彼女の想い。

ただし、これは「きょうのできごと」の始まりではなくて、中盤、いや結構後半の出来事である。

巻き戻しながら物語は進み、開始点のシーンを経て「きょう」の終わり、すなわち「あした」へと繋がっていく。
これを織り成すのが三つのエピソード。
一見関係がなさそうで、でも少し繋がりそうで、でもでもやっぱり関係があまりない三つの「きょう」なのである。

耳に心地よい関西弁

舞台は大阪・堺と京都。
妻夫木も田中麗奈も伊藤歩も大倉孝二も津田寛治も柏原収史も池脇千鶴もみーんな関西弁で喋るが、関西ネイティブは意外と少ない。

そして大阪生まれの松尾敏伸が演じるカワチという気弱なヤサ男が唯一関西弁を話さないという面白さ。(東京に住んでいた事があるということ設定のよう)

僕は関東の生まれ育ちだが、知人に関西ネイティブが何人かいるのである程度関西弁に対して(京言葉除く)耳が慣れている。
その僕が、と言うのも何だが、本作の関西弁はイントネーションが非常に洗練されており、伊藤歩などは彼女の出身(東京)を見てびっくりしたほどだった。

違和感のない方言を聞いていると自然とその土地に身を委ねている感覚になる。

作中で鴨川を眺めながら淀川につながっていくという話をするシーンがあるが、行った事がなくても鴨川と淀川の繋がりを感じさせてくれる説得性が本作の話し言葉にはあると思う。

そして主題歌は矢井田瞳。流れ完璧ですわな。

「the day」じゃなくて「a day」

1日を切り取った時によくありがちなのが、その1日が特別な1日であることだ。
でも本作の三つの出来事は確かに特別なニュース性のあるものがあったにせよ、そこまで珍しいものでもないし、主人公たちはそのニュースを「ふーん」程度でしか消費しない。

「きょうのできごと」は、その日、ではなくてあくまでも、ある日、なのだ。

今日とある町で起こった出来事は確かにびっくりしたけれど、一週間経ったらきっと忘れ去られる程度のもので、だからこそ今日は単なる一日で終わり、また日付が変わればある日の今日が始まるのである。

明日になっちゃったね、というセリフから、いや、もう今日だよ。と返すシーンがある。
それは美しい響きだと思う。

あくまでも流れていく月日の中の一日として今日を置き、今日の些細な出来事を全力で切り取った一作。

『ロボコン』とはまた全然違った角度から感動した。

★★★★★。

感情移入の対象は色々あると思うが僕はカワチに一番共感した。
どういうキャラクターかはご覧になってみてください。

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