映画『さよなら、クロ』感想〜用務員の井川比佐志が名演です〜

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2003年公開、『さよなら、クロ』を鑑賞した。松岡錠司監督、妻夫木聡。

あらすじ紹介

60年代の松本市。飼い主の女の子に愛されながらも捨てられた一匹の犬が、学園祭で賑わう秋津高校に迷い込んだ。クロと名付けられたその犬は、以来、用務員室に住みつくと、校内を自由に闊歩し、夜になると守衛さんの夜警に付き添い、時には職員会議にまで参加し、人の気持ちが分かる番犬として愛されるようになる。

出典:映画.com

スタッフ、キャスト

監督 松岡錠司
原作 藤岡改造
木村亮介 妻夫木聡
五十嵐雪子 伊藤歩
神戸孝二 新井浩文
森下賢治 金井勇太
斎藤守 佐藤隆太
大河内徳次郎 井川比佐志



物語の流れはとても良い

犬をテーマにした作品はこれまで『ロック〜わんこの島』や『パートナーズ』あたりを見てきた。

『さよなら、クロ』は動物との長い年月を描く作品に付きものの寿命という観点をやはり描いていたが、そこはお涙ちょうだいになり過ぎず良い構成をしていたと思う。
学校の用務員さんとして登場していた井川比佐志の演技がまた素晴らしい。

主演の妻夫木はクロと出会い、また10年後に獣医となってクロの手術に立ち合う。
獣医となる過程は描かれていないが、潔さを感じさせた。

主演をフィーチャーしすぎない展開は、前述のクロの寿命の描き方と合わせて上手だったと思う。

メリハリがもう一歩

惜しむらくはクロが高校の一員として、シンボルとして存在することへの説得力が弱いこと。

生徒や職員のターニングポイントにクロが関わっていた、それが後日談では弱い。

佐藤隆太演じる守は犬が苦手だったが、クロのおかげで克服したと言う。しかし、その描写がなさすぎる。

塩見三省が10年前、そして現在を知る教師としてクロに対する変化を上手に表現しているだけに勿体無い。
新井浩文が演じる孝二の死は確かに必要な出来事だったのだろう。

しかし、彼についてのシーンよりもこの作品ではクロのキャラクターをじっくり見る者に示す方が重要だったんじゃないかな。

作品にメリハリがついていないから妻夫木と伊藤歩のラストシーンも少し唐突に映る。

クロの描写がもう少ししっかりしていれば、伊藤歩にとってクロが、そしてクロを助けた妻夫木がどんな存在なのか意味が出てきたと思う。

塩見に加えて、余貴美子や若かりし田辺誠一といった教職員は非常に見応えがあった。
だからこそ、犬という動物の根本的な可愛さに依存した作り方がもったいなかった。

良い映画だと思う。惜しいというのが正直なところ。
財津和夫の主題歌も良かった。

犬に感情移入しやすい人ならば、もう少し高評価になるかもしれない。

妻夫木と金井勇太は同年の『ジョゼと虎と魚たち』でも共演していましたね。

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