映画『シュウカツ』ネタバレ感想〜スカッとしない論破〜

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16年の映画『シュウカツ』を鑑賞しました。

千葉誠治監督。面接室を題材に、選考に挑む学生たちを刺激的に描いた作品です。

本編は73分と短く、4本のオムニバスで構成されています。

タイトルにある「ブラック企業」は、4本の会社全てに当てはまるわけではないという印象。かなり独特な面接であることは確かですが。

『シュウカツ』のスタッフ、キャスト

監督・脚本:千葉誠治
就活生:桜田通
就活生:渡部秀
就活生:廣瀬智紀
就活生:横浜流星
就活生:戸谷公人
面接官:肘井美佳

あらすじ紹介

カメラとテレビモニターを相手に面接に臨むことになった学生は……(『見えない相手』)。内定を辞退させないと脅された就活生が、違法な誓約書へのサインを迫られる(『拡散』)。就職を希望する会社に身辺調査をされた学生が、最終面接で際どい質問をぶつけられ……(『生き残り』)。就活生が面接の控え室で出会ったライバルに揺さぶりをかけられ、さらにわなまで……(『控え室』)。

出典:シネマトゥデイ

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

圧迫面接に立ち向かえ

戸谷公人が就活生を演じる第1話(第1次面接とありますが設定は終盤の面接のようです)は、顔の見えない面接官とカメラ越しに話す設定。

ネット事業を手がけ、ユーザーにサービスを提供するだけでなく、ユーザーによってコンテンツを拡大させていきたいという方針の会社側の不気味な演出です。

逃げ場のない密室空間での緊張状態に追い打ちをかけるかのような、理不尽な面接。

困惑し、圧に屈しそうになりながらも戸谷は主導権を取り返し、顔の見えない面接官に痛烈な一言を浴びせて黙らせます。

これが痛快なのか生意気なのかは人によって評価が分かれるところではあると思うけど、横浜流星が主演の第2章でもこのスーパーヒーローの勧善懲悪の流れは続きました。

圧迫面接官を論破せよ

横浜流星の場合は、面接官が高圧的かつ傲慢で、なおかつ学生から内定辞退の損害賠償をふんだくろうかという完全にブラックな面接。

面接官は部屋に入ってもずっとスマホを見ていて、就活生を無視するふりをする嫌な奴でした。

そんな不条理に負けじと、毅然とした態度で論破する横浜流星。少し裏返った緊張がちな高い声が徐々に落ち着いていくのがかっこいいですね。

「スマホを持っていない左手を上にあげてください」
ホールドアップ!命令!

こんな強気な学生いるのか?って思ったけど、最近の子たちはたくましいようです。

実際に僕の働く会社でアルバイトをしている四年生の男の子は有名企業の役員面接で詰問し、面接官を泣かせたそうで……

現代の就活戦線においては学生側がイニシアチブを持って企業側を見定めることができてるみたいですね。もちろん人によると思うけど。

あなたの行動を監視しました

第3章と第4章は少し毛色が異なり、身辺調査をする企業の執拗な質問とそれを論破する廣瀬智紀。そして最終面接の控え室で向き合う就活生の二人(渡部秀、桜田通)を描いたものです。

どちらも不利な状況を会話で打開していく形ですが、前出の二話と違って会社側に落ち度が見られません。

肘井美佳が演じる面接官はリサーチを元に前回面接の後に廣瀬がとった行動をチェックし、その理由を詰問します。

最初は動揺していた廣瀬ですが、話し出すとずいぶんあっさり順応。このあたりがどうも人間離れしてるんですよね……普通そんな尾行調査されてるって聞いたら「えっ!?︎なんで!?」ってなりませんか?

この章も面接官がやや揚げ足をとる質問をしていましたが、ベースとして社員を家族のように大事にしたいという理念があるようなのでブラック企業には見えません。

むしろ書店が併設されたカフェでブラックコーヒーをたしなみ、電車で老婆の手荷物の中身を注視していた就活生側が、出る杭は何とやらに見えました。総合的には採用側、される側両者にとって良い話。

シューカツの情報収集

第4章は控え室で最終面接を待つ渡部秀が、同じく最終面接を待つ桜田通のかく乱に遭います。

緊張感に満ちた控え室は本来とても静かなもので、志望者がおいそれと雑談をするものではないはずなのだけど、桜田通は自分が内定を持っていないだとか最終面接はディベート形式だとか、ひっきりなしに喋り渡部の平静をかき乱していきます。


桜田通
謎の就活生を演じる桜田通。ひとりごちた後に急に大声を出したり、危険な類の人間。
そもそも前髪が長すぎますね。

まだ内定を持っていないと話した渡部の嘘を見破り、気持ち悪いほどの情報収集から渡部の個人的な秘密や弱みを握ろうとする桜田。

執拗な叱責をかいくぐり、最終的には渡部も自らの持つ情報網で論破します。僕から見ればそんな渡部もまた気持ちが悪い。

学生側からか企業側からか

第4章に限らず情報化社会のキーワードがいくつも出てくる本作品。勧善懲悪がはっきりしているので少し現実味としては薄いですが、ブラック企業の面接と銘打ちながらも実際は様々な交渉カードを持つ就活生の権力や脅威を描いたようにもとれます。

僕自身が就活していたころはもっと前時代的なものだった気がするけど…歳をとったなあと実感。

物怖じしない姿勢に比べて本作の就活生は嘘っぽいことを言います。

針小棒大は確かに就活の基本ではあるんですが、いま就職している身としては、ペラペラとまやかしを述べる学生は少し怖いですね。

そこまで考えて製作側が作っているならば大したもの。
基本的にストーリーはそんななくてイケメンの就活生たちの論破を楽しむ作品だと思います。

でも上で述べた通り、その論破はあまりにも綺麗事と嘘っぽさが透けて見えるからそんなに胸がスカッとすることもありませんでした。

出演俳優が好きな人は是非どうぞ。

就職活動をテーマにした映画は、『何者』もおすすめです。

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2019年4月23日