映画『共喰い』〜男性目線からの男性批判〜

13年公開『共喰い』を鑑賞。青山真治監督、主演は菅田将暉。原作は田中慎弥の同名小説。昭和末期の北九州が舞台である。

女に対して手を上げるということ

原作について一切の事前情報を入れぬまま見始めたが、共喰いとはどういうことだったのか。それを考えながらの鑑賞になった。
手を上げながら女を犯す父親・円(光石研)の血に遠馬(菅田将暉)が抗えないということなのか、父親と同じ女性を求めてしまったがゆえのものなのか。

遠馬が何度も「俺はあの父親の子やぞ!」と声を荒げるように、個人的には血は争えないという前者のトーンかと思う。やりたい盛りのティーンを描いた作品は数あれど、理性を失い暴力的に女性を押し倒していくものはなかなか無い。
しかもそれが憎むべき父親の女に対する暴力の再現であり、自分自身が血の繋がりだから仕方ないと認識した上での暴走。

▲血には抗えないのだろうか。それともその血を求めているのだろうか。菅田将暉演じる遠馬は確かな認識のもとに女たちを押し倒していく… (C)田中慎弥/集英社・2012「共喰い」製作委員会

女性を殴るということがどれほど醜いことかは遠馬も、そして視聴者もよくわかっているはずだが、その征服感や高揚感に父・円は傾倒していた。

そんな父親を近くで見ていたからこそ遠馬は千種(木下美咲)の首に手をかけることができたのだろうし、父親に殴られる琴子と寝てみたいと思ったのだろう。

血統的な、遺伝的なものよりも後天的、環境的な暴力の刷り込みである。遠馬自身は円に殴られたことがないので、もちろんそこに恐怖はない。

では、僕らは彼を見て仕方ないことだと諦めたり、あるいは馬鹿な奴だと嗤うだろうか。
僕はどちらもできなかった。彼に感情移入することも彼を全く別世界の者として捉えることもできなかった。残ったのは単純に暴力的な男への批判である。

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木下美咲が可愛くて

遠馬の彼女・千種を演じたのは木下美咲。恐らく初めて見る女優さんだったが、眼の力が強く、美しかった。
髪型も相まって上戸彩によく似ている。

菅田将暉演じる遠馬のキーポイントが眼光にあり、彼の実母・仁子(田中裕子)から度々指摘を受けているが、基本的には暗い目つきである。
その濁った遠馬を見透かすかのような強い目線。心も強く、ラストシーンに救われたと思ったのは僕だけではないはずだ。

菅田将暉に関しては、今まで想像してきた彼のキャラクターとは違う一面が見れたと思う。
デビュー当時の印象だが、こういった陰のある人物を演じる時にもう少し「俺が菅田将暉だ」という意識が前面に出てくる俳優だったが、今作の遠馬にそれは見えない。
円も同様にキャラクターありきの光石研になっているため、父子二人の演技は相当良かった。

▲菅田将暉は良い意味で菅田将暉感がなかった。瞳に光が見えないのは撮り方としても上手い (C)田中慎弥/集英社・2012「共喰い」製作委員会

鬱屈した川辺地区の表現だろうが、登場するコミュニティの限定された雰囲気はやや勿体なかった。それでも、極めて男性的な目線から、上手にその男性目線を批判した作品だったと思う。

★★★★☆。

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