映画『キャラクター』ネタバレ感想|戦慄…両角も辺見もちゃんと怖い

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2021年公開の『キャラクター』をご紹介します。PG12作品です。

菅田将暉さん、Fukaseさん(SEKAI NO OWARI)の共演でオリジナル脚本の本作品。

結論から言いますと、めちゃくちゃ面白かったです!

この記事では『キャラクター』の凄い点を以下の3つに分け、感想を書いていきます。

  • 容赦のなさが半端ない件
  • “キャラクター”の隙のなさ
  • 見立て殺人と実地経験

鑑賞済みの方向けの記事になりますので、映画未鑑賞の方はご注意ください。



あらすじ紹介

漫画家として売れることを夢見て、アシスタント生活を送る山城圭吾。ある日、一家殺人事件とその犯人を目撃してしまった山城は、警察の取り調べに「犯人の顔は見ていない」と嘘をつき、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34」を描き始める。お人好しな性格の山城に欠けていた本物の悪を描いた漫画は大ヒットし、山城は一躍売れっ子漫画家の道を歩んでいく。そんな中、「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生する。

出典:映画.com

スタッフ、キャスト

監督 永井聡
原案 長崎尚志
脚本 長崎尚志、川原杏奈、永井聡
山城圭吾 菅田将暉
両角修一 Fukase
夏美 高畑充希
真壁刑事 中村獅童
清田刑事 小栗旬
辺見敦 松田洋治

山城(菅田将暉)の描くコミックス「34」は「さんじゅうし」と読みます。
登場人物の描き込みは本当に隙がなかったので、そのあたりはこの後の感想部分でご紹介します。

山城が描く劇中漫画「34」を実際に描いていたのは江野スミさん

山城の得意とする繊細な描き込み、また殺人鬼「ダガー」を完璧に映画の世界に落とし込んでいました。

江野さんの作品は『亜獣譚』などがあります!
この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

それでは映画の感想に移ります。まず初めに、この映画の“容赦のなさ”について。

容赦のなさが半端ない

映画『キャラクター』はPG12の年齢制限がついていますが、並大抵のPG12作品を超えた、どぎつい描写が目立ちます。

主なところで言うと両角(Fukase)が行う殺人の、遺体の状況です。

様々な部分をかき切られて血を流し、ロープやベルトで何かをモチーフにしたような体勢に固められ、山城(菅田将暉)が第一発見者となった一つ目の事件・船越一家殺害事件ではその凄惨さから警察が現場状況を口外しないように通達を出します。それもあって、現場の有り様を事細かく描写した山城の漫画は疑念を持たれてしまうようになるわけですが。

船越一家の殺人事件は、2000年の世田谷一家殺人事件を参考にしていると感じました。

グロと恐怖と痛み

「グロテスク」の定義は人によって異なりますが、『キャラクター』はPG12の一見安全そうなレイティングも相まって、いわゆるグロ注意の作品だと思います。

血の多いグロ描写を行う理由。そこには恐怖の要素を掻き立てたり、異常性を顕在化させる効果だったり。ただ、作品によっては後者の“異常性”ばかりが悪目立ちするものもあります。そもそもこれほどまでに衝撃的な遺体シーンをあっさりと出してくる映画も稀かと思います。

『キャラクター』のシリアルキラー・両角(Fukase)はその殺害状況こそ描かれませんが、刺す、切る、抜くといった刃物を使った“痛み”が抜群です。『ミスミソウ』と近い感覚があるかもしれませんし、危険と恐怖が常に背中にまとわりつくようなスリリングな展開は『見えない目撃者』をも彷彿させます。

山城(菅田将暉)の理解者かつ彼を守るべき存在として描かれていた清田刑事(小栗旬)は、殺人鬼の輪郭を掴みはじめたところで、キラーその2・辺見(松田洋治)の凶刃に倒れます。

いやぁ、ここは驚きました。慄きと言っていいです。
TOHOシネマズの最後列で「ヒイッ」と声をあげたのは僕です。すみませんでした。

足をつかみ抵抗しようと、あるいは何か痕跡を残そうとする清田でしたが、辺見は容赦なく彼の背中を包丁で突き刺します。そして、最重要人物の一人(だと僕は思っていました)である小栗旬は物語から退場を余儀なくされます。

この「あっさり重要人物がいなくなってしまう」展開も『見えない目撃者』と雰囲気が似ているなと思ったんですよね

隙のないキャラクター

『キャラクター』の狂気、恐怖を増幅させた理由として、文字通り登場人物たちの描きこみに隙がなかったなという印象です。
まず辺見(松田洋治)について。

ちゃんと怖い辺見

そもそも清田刑事(小栗旬)をぶっ殺した辺見を、正直僕はなめてたんですよね。

前歴持ちのこのおっさん、ダガーこと両角(Fukase)の操り人形というか、スケープゴートというか。
要は両角にとって使い捨ての咬ませ犬だと思ってたんですよ。物語全体においても。

序盤に小栗&獅童コンビに凄まれてビビってた姿には小者臭しかしなかったのですが…

そしたら違った。全然違った。めっちゃ仕事するじゃないですか。めっちゃ怖いじゃないですか辺見。

シリアルキラーの両角に共鳴し、心酔し、まるでデスノートの敬虔なキラ信者を見ているかのようでした。

心酔する立場は元は逆だった、両角がかつての殺人犯・辺見に憧れていた、っていうプロセスも面白いですよね。

しかもそこの描写をあっさり省く。だから辺見がどれだけ本当はヤバいのか観ているこちらにはわからない。

小栗刑事と辺見

『キャラクター』では序盤にタイトルバックとともに、メインの出演者が羅列されます。

その最後に出てきたのが、清田刑事を演じた小栗旬さんです。ここで、ああこの映画は清田刑事が大きな鍵を握る存在なんだなと思わされます。

実際に、目の笑っていない清田刑事はその洞察力と行動力で、山城(菅田将暉)の抱える秘密に迫り、猟奇的殺人事件の真実へ近づいていきます。

最初の取り調べの際は、山城の気持ちに寄り添って言葉を引き出すカウンセラー的な刑事かと思いきや、結構ゴリゴリに山城のことを洗おうとします。

小栗旬さんのゴリッとした捜査ぶりは、個人的に『ミュージアム』を彷彿とさせました

物分かりの良い親身な刑事さんというよりは、しつこく粘着質で、しかも元ヤン設定らしく威圧感もある。山城からしたらうざいと思うでしょうね、それは。

けれど、一方で身の危険を感じた山城は、真実を清田に話しました。ここで清田は山城を執拗に追い回し“疑う側”から、彼の理解者・協力者・守護者になるわけです。

これもう小栗旬が主人公じゃん!と思っていたのも束の間、清田は辺見にやられます。辺見ごときにやられるはずないでしょと思っていたら、本当に殉職してしまいます。

辺見は全然小者なんかじゃなかったんですよね。この映画のキーマンをあっさりと退場させ、しかもまだ捕まらずに逃げている。

だから映画の最後に、夏美(高畑充希)の背中に迫る不穏な殺気が、たまらなく怖かったですよ。めちゃくちゃヤバい奴がこの世界にはまだ一人残ってるんですから。

両角と山城

この映画に戦慄を落とし込み、「ちゃんと怖い」点では両角ももちろん同様です。

Fukaseさんは俳優デビューだったみたいですけど、めっちゃ怖かったですよ。Fukaseっていう固有名詞は最初の数シーンでどっか飛んで行ってしまいました。

最初から最後まで疑いようのない真犯人、殺人鬼を貫いた両角。

ピンクの髪、グリーンのジャージ、黒のバックパックをトレードマークに、神出鬼没という言葉そのままに物語の中で暗躍していきました。

映画のキーカラー

映画『キャラクター』のキーカラーには、ピンク、パープル、ミントグリーン、ライムイエロー、ブラックが挙げられると思いますが、その多くは両角のイメージカラーに近いものだったのではないでしょうか。

いわゆる反対色(補色)であるミントグリーンを、パープル系の中に落とし込んだセンスが抜群です

映画内で“人間にはどうしても人を殺したい人間と、欲望を制御できる人間の2種類がいる”みたいな描写がありましたが、両角の場合は前者に近いですよね。

童心漂う(Fukaseさんの実年齢知った時は本当に驚きました)両角の、良心と理性のネジが外れた様は見事というほかありませんでした。

そんな殺人鬼=両角との“共作”で人気コミックを作り上げ、最終的には両角と表裏一体のような形に見えた山城(菅田将暉)は皆さんの目にどう映ったでしょうか?

没個性的だった山城

菅田将暉さんは作品によって“らしさ”のさじ加減を調整できる役者さんだと思っています。

今回の『キャラクター』でいうと、漫画家・山城は感情的な衝動や個性を没した人物に映りました。取り調べにも淡々と答え、編集者(中尾明慶)からの巻頭カラーの無理なお願いも二つ返事で引き受けています。

“自分はキャラクターを書くのが不得意”という前提があるのだとは思いますが、『バクマン。』の新妻エイジ(染谷将太)などと比べると、おとなしいですよね。少なくとも「鬼才」ではありません。

意味深な反転

そんなおとなしめの山城に抱く印象は、真面目、丁寧というものでした。

売れないアシスタント時代に書いていた漫画をとってもそうです。
両角が山奥で起こした殺人事件と同じ場所だった漫画の舞台設定も、山城が自分で文献を読んで導き出した彼オリジナルのものです。山城の仕事部屋にずらっと並べられた資料に、きちんと意味を持たせていました。

また自分の漫画が殺人鬼の凶行を後押ししているのではと気づいた時には、しっかりと制御を掛けることができています。

ただ、そんな山城が、両角ともみ合いになった時には漫画内とは逆に、両角の上に馬乗りになり、狂気に満ちた笑顔を見せるわけです。喰うもの、喰われるものの反転ですね。

山城に向かって発砲する真壁(中村獅童)の姿には、『デスノート』の松田刑事と月を思い出しました

饒舌な両角とは対照的に、山城の本心というのはほとんど映画内で語られません。
病院のベッドの上で静かに佇む山城の意中が、我々はわかりません。

夏美(高畑充希)が辺見らしき不審者の気配を感じる場面もそうでしたが、この映画はとにかく後味が悪いです。不穏です。

世間と山城を翻弄し続けた側の両角が、裁判所では何者でもない誰かに成り下がったように映ります。

一方で全てが解決して万事OKかというとそんな雰囲気はなく、実は山城の中にもダガーと同じ狂気が宿っていたのではと疑念が残ります。あの恐ろしい笑顔は何だったのかということに対しての答えはわからないままなんですよね。

清田刑事の似顔絵を山城が描いていたことで、彼を善だと信じたい気持ちもありますが…



見立て殺人と実地経験

最後に『キャラクター』で描かれる見立て殺人、実地経験についての感想です。

何かに見立てて犯罪を(計画的に)行なっていくのは推理モノでお馴染みですが、この映画の面白いところは創作(山城の漫画)と現実(両角の犯行)が必ずしも「創作 → (インスピレーションを受けて) → 犯行」の一方通行になっていないところです。

「犯行 → 創作 → 犯行 → 創作」とループの連鎖ですね

両角の犯行、山城の漫画ともに、“原作者”が二人いる感じでしょうか。

そもそも山城(菅田将暉)は、ホラー、サスペンスを描くに当たって、「実際に山城さん人殺したことないでしょ?」と編集(中尾明慶)に言われていました。

そりゃ無いですよね。そんな実地経験があったら怖い。

けれども創作者はやっぱり迫真を追求する必要があるわけです。だから実在の事件を取材したり、時には刑務所の犯人に接触して話を聞いたりして、リアリティを補強していくわけです。

スポーツをテーマにした作品を描くのであれば知識や経験があるに越したことはないと思いますし、ヤンキー作品であれば不良の世界に精通している方が説得力が生まれますよね。

山城の場合は、実際に船越一家の犯行現場に居合わせたことで、圧倒的な“実地”の部分を獲得します。

だから何かに取り憑かれたように、凄惨な状況を描き込む山城は、表現者としてはある意味当然なんですよね。自分がその目で見た光景の記憶は何よりも雄弁です。

一方で山城が届かなかった部分もありました。両角(Fukase)が山城に「人を殺すのって大変なんだよ」と語る場面です。表裏一体に感じられた両角と山城の間に乖離が生まれた瞬間でした。

犯行後は何日か寝込むと言っていたように、両角ほどの殺人鬼であっても消耗するんですね。

この境地に山城が(結果的に)至らなかった点は、個人的に救いに感じました。
彼が漫画の中でどれほど狂気と悪意を発現していたとしても、です。

 

スピーディーで恐怖と意外性を両立した展開。キャラクターを染め上げた役者陣の熱演、また登場人物の行動に説得力を持たせる描きこみと、サスペンス濃度が高くて隙のない傑作だと思います。

ハラハラという面では今年観た中で一番。素晴らしい作品でした。

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