浦和レッズの映画
レッズサポーターはもちろん、Jリーグをある程度追っている人ならば、昨年レッズのスタジアムで何が起きて、終盤でどうなったのかということは知っていると思う。
差別的な横断幕掲示による無観客試合処分と、ラスト3試合の屈辱的な失速により優勝をさらわれたこと。
サポーターズグループの解散、太鼓の自粛、大旗、横断幕、ゲートフラッグ(二本の棒を両手で持って掲げるメッセージフラッグ)の禁止。
浦和レッズを浦和レッズたらしめていたアイデンティティは見えなくなった。
ここまで知っている人だったらレッズサポーターじゃなくても、この映画で映されていることの意味が完全に理解できるだろうし、また上で言った無観客試合処分と終盤の失速を知っている層でも9割方は内容が理解できると思う。
裏を返せば、Jリーグを知らない人たちにはよくわからない内容だと思う。まず選手がわからないだろうし、レッズの失速という前提を知らなければ理解はできないだろう。ナレーションもないし。
現状公開している劇場が浦和美園とパルコ浦和(こちらは今週いっぱい)だけなので内容には詳細に触れる。
選手、スタッフのホンネ
阿部勇樹、柏木陽介、森脇良太、鈴木啓太、興梠慎三、梅崎司。
また槙野智章、関根貴大、原口元気、宇賀神友弥、李忠成もよく出てきており、関根と原口は映画の主人公の一人になっている。
阿部、啓太、梅崎は淡々といかにもインタビューというような形。
一方で興梠と陽介からは浦和の内部を抉るような言葉も出てきた。
興梠は差別的な横断幕を掲示した人物たちに対して彼なりの思いを述べているし、ミハイロ・ペトロビッチ監督(ミシャ)に対しての思いも吐露している。
「監督がいたから僕は獲ってもらったようなものだし、監督がいなくなったら、ちょっとどうしていいかわからないです」
一方で陽介は(少し綺麗事が多かった感もあるがそれも彼らしい)冷静にシーズンを振り返る一方で、レッズに来た当初はとんでもないチームに来てしまった、という心情も語っている。
興梠は関根について「頭を使わない勢いだけの選手は僕好きじゃない」と笑いながら語り、陽介も元気に対して「前は仲良かったけど……試合の中では通じ合うものがあると思う」という意味深なコメント。
僕たちサポーターから見れば選手みんなが好き(もちろんその中で順序はあれ)だけど、選手たちも人間なんだから仲の良し悪しはあるんでしょう。
特に宇賀神、原口と仲が良い様子。
純情きらり、宇賀神友弥
宇賀神は、レッズサポーターから見てこの作品のある意味主役であると思う。
「太鼓があった方がいいですよね!やっぱ」と悔しそうに言う。阿部は別になくても応援してくれてることには変わりない(柏木もかな)というスタンスだったが、納得のいっていない様子の宇賀神に僕は感動した。
スタンドのサポーターの雰囲気まで大事にしてくれているんだと。
鳥栖に引き分けた後のネガティブな発言も加えて、彼のありのままの姿がスクリーンに映されている。
チームスタッフの水上さんが語った、優勝を前にして「メンタルをやられて胃腸炎になってしまう選手、また妙にハイテンションになってしまう選手」という言葉にも重みがあった。
マリノスに関根のゴールで勝って浮き足立っていたのは選手たちだけじゃなくてサポーターもだけど。
試合概要をアナウンスする女性の朝井さんとスタメン紹介や得点者をアナウンスする男性の岩沢さん。
埼スタに来たことのある人なら「ああ、あの人たちね」とわかると思うし、他クラブのサポーターも自分のクラブのスタジアムDJと比べて見れて面白いと思う。
この二人が語ってくれているのは本当に貴重で、他クラブのサポーターにも特に見てもらいたい場面である。
映像技術も凄い
スタジアムで手を繋ぎ威風堂々を歌うサポーターに始まり、コマ送りやフォーカスを駆使して素晴らしい映像を提供してくれている。
試合後もピッチ脇(カメラマンが撮っているところね)からのアングルで選手の熱気と興奮が直に伝わるような編集をしているし、座席にいながら高ぶりが抑えられなかった。
去年の応援はトーンダウンしている試合が多かったのでね。まぁもしそうならば外から音を録ればあれだけ一体感のある声量があるのだとわかっていいけれど。
ただし、昨年の状況では難しかったと思うし、尺を考えれば濃密な内容だった。
上映後に拍手をしていた人がいたが、多分みんな(浦和上映ということを考えれば多くがレッズサポーターだろう)見終わった直後にWe are REDSを高らかに言いたかっただろう。
悔しくて情けなかった昨年を直視するのは辛かった。でも僕たちサポーターができるのはやっぱり、これからもスタジアムに行って応援すること。
少し綺麗ごとに映るかもしれないが他のサポーターにも観てもらいたい作品だった。
みんな、ミンナ、minna。