映画『ぼくたちの家族』~長塚京三に涙した~

二週間ほど前に見た『ぼくたちの家族』(14年)。

石井裕也監督、主演に妻夫木聡。原作は早見和真。

安心の池松壮亮ブランド

呆け始めた母親に脳腫瘍が発覚し、父親(長塚京三)、長男・浩介(妻夫木)、次男・俊平(池松壮亮)の男三人が奮闘するお話。

池松壮亮に関しては『横道世之介』『愛の渦』などで高評価している通り、安心して見られる俳優の一人。
奔放で行動力のある次男を演じた彼もよかったが、妻夫木が実に良かった。

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▲お母さんに語りかける妻夫木。家族の中で一番まともで、かつ責任を感じていた一家の大黒柱だ。 (C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会

浩介は恐らく一番家族でまともでありながらも、一番十字架を背負わなければいけなくなってしまった人間である。
父親は頼りないし借金まみれだし、弟は自分勝手な子供だし、婚約者との時間もなかなか取れないし…で責任感に押しつぶされそうな長男を演じる妻夫木。

基本的に感情を押し殺すようにして落ち着いている雰囲気が素晴らしかったが、病室で付き添っている父親が夜遅くから明け方にかけてひっきりなしに電話をかけてくるシーンでは(浩介は翌朝から仕事である)さすがにストレスを隠せなかったようであった。
お母さんより長男が危ないのではと心配になるくらいの心労が妻夫木の表情に刻まれていた。
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▲奔放な次男の俊平(池松・左)と妻夫木が演じる浩平のコントラストも見どころ。 (C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会

それにしても石井作品の『舟を編む』よりもさらに好きな一本である。
病気でネジが外れかけたお母さんがしきりに「家族だから」と帰るべき場所の家族を強調するが、作品全体としては意外と家族の絆の押し付けがましさはなかったのも好印象。

若菜家のシーンが主に暗がりや自然光の中で撮られ、浩介の同棲先のシーンは明るい蛍光灯の下で白く映っているコントラストも良かった。
お金に対しての白さを投影したのかな。

お父さん、頑張って!

一番良かったのは実は長塚京三。
あんなにだらしなくて情けない父親を、しかも長塚京三が演じていることで作品にリアリティが上積みされた。
本当に我々からしたらこの親父(おふくろも)だめだな…と思うわけだけれど、妻夫木も池松も家族だから受け入れて付き合っていくしかないのである。
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▲うだつの上がらない親父を、長塚京三が演じているのがたまりません…! (C)2013「ぼくたちの家族」製作委員会

人物に色々とバックボーンの描写はなされているが、潔く回想シーンはなし。
前に、前に、前に。進むしかない。

精度の高い脚本、演出に、役者の悲壮感が混じり合った素晴らしい作品だった。

文句無しに満点。
★★★★★。

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