映画『怒り』〜ゲイカップルへの執着〜

ケーブルテレビを解約してしまったのでなかなか映画を見ない状況になってしまいました。

半月ほど前にはなってしまいますが、李相日監督の『怒り』を見に行ってきました。
渡辺謙、妻夫木聡ら。

原作は吉田修一。

李相日×妻夫木聡×吉田修一

李相日監督と妻夫木聡と吉田修一と言えば2010年公開の『悪人』

僕がまだ鑑賞録をろくにつけていない頃です。もう6年前になりますね。

原作ともども、とても好きな作品だったので三回劇場で見たのかな。

今回の『怒り』も予告の段階で感情が揺さぶられ、キャストも豪華ときた。
吉田修一さんの作品は未読のものでも必ず原作を読んでから映画を見るという順番を取っている。
好きな作家だし、原作の世界観を大事にしたいから。
8月に小説を読み、映画館へと向かった。

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キャストの評価

豪華キャストは渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、池脇千鶴、綾野剛、妻夫木聡、森山未來、広瀬すずといった面々。

愛子を演じた宮崎あおいは役作りで太った、とはいえ、やはり可愛いあおいちゃん。
しかしドタドタとした歩き方や口を尖らせた時の頬骨、むき出しの肩など、どことなくふくよかさというか、体格の良さは感じさせてくれた。

父親役の渡辺謙はイメージ通りである。臆病な一面も顔を見せる洋平を上手に演じていた。

▲重量系の宮崎あおいと、お父ちゃんを演じる渡辺謙。  (C)2016 映画「怒り」製作委員会

妻夫木と綾野に関しては後述。
広瀬すずは、辰哉役で抜擢された佐久本宝とともによく頑張っていたと思う。
映画で見るのは初めてだったが、凛とした表情を生かして「笑わない泉」を再現できていた。

佐久本宝は言葉遣いに硬さが見られたもののイントネーションと表情で満点。
森山未來と松山ケンイチは、まあ普段の彼らって感じだった。及第点。

狂気を増幅させ恐怖を棄てた

映画全体の評価としては、決して高くはない。
上下巻に跨った小説の再現度は低く、何を省略して何を伝えたいか、という部分は僕が原作を読んで感じたものと乖離していた。

その一つとして挙げたいのが妻夫木と綾野剛の同性愛。
予告で男たちとビーチパーティーに興じる妻夫木をご覧になった方も多いと思うが、ゲイの二人に対しての描写に執着心を感じた。

▲かなり象徴的に描かれていた綾野剛と妻夫木の同性愛。原作ではノンケを介在させていたが…  (C)2016 映画「怒り」製作委員会

作品内において大事な要素。
ただし、原作では優馬(妻夫木)の兄と兄嫁というノンケの外野を介在させることで彼ら二人がゲイであることのマイノリティだったり危うさを描き出していた。

しかし、映画において兄と兄嫁は登場しない。これではただの男好きのお兄ちゃんである。
妻夫木の演技が素晴らしかっただけにもったいない。

外野の介在という点では洋平の姪・明日香を演じた池脇千鶴と、渡辺謙の関係性が希薄だったところも言及しておきたい。

結局この作品の幹は、身近に潜んでいるかもしれない凶悪犯、信じつつも怯える登場人物たち。
また、見ている我々も犯人は一体誰なんだ?容疑者とみられる三人以外にも真犯人がいるのか?と慄くところだと思う。

▲松山ケンイチは何か十字架を背負っていそうな雰囲気。  (C)2016 映画「怒り」製作委員会

▲森山未來は時折見せる笑っていない目が怖い。  (C)2016 映画「怒り」製作委員会

宮崎あおいが泣き叫ぶシーンはまさに慟哭という言葉がふさわしく秀逸だった。ただ、決定的にこの作品にはサスペンスとしての怖さが欠落している。
警察官の二人もあんな描き方じゃもったいない。

原作から印象深いディテールを抽出し、再現するのはもちろん正しい。
でも、『怒り』の根本に流れる犯人探しのスリルを削ってしまったのではないかなと感じた。

評価は★★★☆☆。

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