映画『怒り』感想|強調すべきところってそこ?

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李相日監督の『怒り』を見に行ってきました。
渡辺謙、妻夫木聡ら。

原作は吉田修一。

あらすじ紹介

八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。

出典:シネマトゥデイ

スタッフ、キャスト

監督・脚本 李相日
原作 吉田修一
槙洋平 渡辺謙
田中信吾 森山未來
田代哲也 松山ケンイチ
大西直人 綾野剛
藤田優馬 妻夫木聡
小宮山泉 広瀬すず
知念辰哉 佐久本宝
槙愛子 宮﨑あおい

李相日監督と妻夫木聡と吉田修一と言えば2010年公開の『悪人』。もう6年前になりますね。

今回の『怒り』も予告の段階で感情が揺さぶられ、キャストも豪華ときた。

吉田修一さんの作品は未読のものでも必ず原作を読んでから映画を見るという順番を取っている。
好きな作家だし、原作の世界観を大事にしたいから。

今回は8月に小説を読み、映画館へと向かいました。



映画のネタバレ感想

豪華キャストは渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、池脇千鶴、綾野剛、妻夫木聡、森山未來、広瀬すずといった面々。

愛子を演じた宮崎あおいは役作りで太った、とはいえ、やはり可愛いあおいちゃん。
しかしドタドタとした歩き方や口を尖らせた時の頬骨、むき出しの肩など、どことなくふくよかさというか、体格の良さは感じさせてくれた。

父親役の渡辺謙はイメージ通りである。臆病な一面も顔を見せる洋平を上手に演じていた。

妻夫木と綾野に関しては後述。
広瀬すずは、辰哉役で抜擢された佐久本宝とともによく頑張っていたと思う。
映画で見るのは初めてだったが、凛とした表情を生かして「笑わない泉」を再現できていた。

佐久本宝は言葉遣いに硬さが見られたもののイントネーションと表情で満点。
森山未來と松山ケンイチは、いつもの彼らって感じだった。らしさを持っている俳優ってやっぱり強い。
森山未來の時々見せる笑っていない目と言ったら…。

狂気を増幅させ恐怖を棄てた

正直なところ上下巻に跨った小説の再現度は低く、何を省略して何を伝えたいか、という部分は僕が原作を読んで感じたものと乖離していた。

その一つとして挙げたいのが妻夫木と綾野剛の同性愛。
予告で男たちとビーチパーティーに興じる妻夫木をご覧になった方も多いと思うが、ゲイの二人に対しての描写に執着心を感じた。

ゲイのカップルは確かに作品内において大事な要素だった。
ただし、原作では優馬(妻夫木)の兄と兄嫁というノンケの外野を介在させることで、彼ら二人がゲイであることのマイノリティだったり危うさを描き出していた。

しかし、映画において兄と兄嫁は登場しない。これではただの男好きのお兄ちゃんである。
妻夫木の演技が素晴らしかっただけにもったいない。

外野の介在という点では洋平の姪・明日香を演じた池脇千鶴と、渡辺謙の関係性が希薄だったところも言及しておきたい。

結局この作品の幹は、身近に潜んでいるかもしれない凶悪犯、信じつつも怯える登場人物たち。
また、見ている我々も犯人は一体誰なんだ?容疑者とみられる三人以外にも真犯人がいるのか?と慄くところだと思う。

宮崎あおいが泣き叫ぶシーンはまさに慟哭という言葉がふさわしく秀逸だった。ただ、決定的にこの作品にはサスペンスとしての怖さが欠落している。
警察官の二人もあんな描き方じゃもったいない。

原作から印象深いディテールを抽出し、再現するのはもちろん正しい。
でも、『怒り』の根本に流れる犯人探しのスリルを削ってしまったのではないかなと感じた。

こんな映画もおすすめ

悪人

九州を舞台とした吉田修一原作のミステリー。妻夫木聡と深津絵里、そして岡田将生の演技に注目してみましょう。

さよなら渓谷

こちらも吉田修一原作の映画。大西信満と真木よう子が演じる夫婦は、ある秘密の過去を隠していました。「赦す」ことについて考えさせられる作品です。

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