14年の映画『春を背負って』を鑑賞。
木村大作監督。
出演は松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、檀ふみ。
木村大作さんは監督というよりも映像キャメラマン(Wikipediaより原文まま)で名を馳せている人であり、『北のカナリアたち』などを手がけた方。
今作は古き良き日本映画を念頭に撮ったようだ。
あらすじ紹介
立山連峰で父とともに幼少期を過ごした亨は、厳格な父に反発し、金融の世界で金が金を生み出すトレーダーとして過ごしていた。しかし父が他界し、通夜のために帰省して久々に故郷の山に触れた亨は、父の山小屋を継ぐことを決意する。当初は山での生活に苦労する亨だったが、亡き父の友人でゴロさんと呼ばれる不思議な男・多田悟郎や、山中で遭難したところを父に救われたという天真爛漫な女性・愛に囲まれ、新しい人生に向き合っていく。
スタッフ、キャスト
監督 | 木村大作 |
原作 | 笹本稜平 |
脚本 | 木村大作、瀧本智行 宮村敏正 |
長嶺亨 | 松山ケンイチ |
高澤愛 | 蒼井優 |
多田悟郎 | 豊川悦司 |
長嶺菫 | 壇ふみ |
中川聡史 | 新井浩文 |
中川ユリ | 安藤サクラ |
トヨエツの関西弁
綿密なロケーション探しによって見つけたという立山連峰。
確かに写真集を見ているかのような美しい風景は、時折CGではないかと錯覚させるほどのレベルだった。
基本的に綺麗な画しか使わないぞという監督の信念が透けて見え、視覚的には大変美しい。
トオル(松山ケンイチ)とアイ(蒼井優)をいたずらに関わらせることがなかったのも、主眼を人間模様ではなく山に置くという一貫性として良かったと思う。
全体的にトーンの薄い映画なので、これで二人の恋慕が介入してくるといよいよ収拾がめんどくさくなりそうだった。
一番よかったと思うのは豊川悦司演じるゴローさんが関西系のイントネーションを用いるところ。
ご存知の方も多いと思うが、トヨエツは大阪の出身であり、しかし僕は彼の大阪イントネーションを聞く機会があまりなかった。
その点で言えば、ともに青森出身の松山と新井浩文がこれまた少し違うイントネーションと早口言葉で喋る様も、二人の個性を表していていいなと思えた。
ただし、序盤の葬儀のシーンでは檀ふみら土着の人間が方言を多用していたが、以降はめっきり。このあたりはちょっと残念。
山小屋のシーン会話は…
冒頭で述べたように、この作品は古き良き日本映画の再評価を狙ったものであった。
しかし、節々で流れる音楽が主張しすぎではなかったかな。
シーンに即したBGMを流しているつもりだろうが、過ぎたるは及ばざるが何とやらはこのこと。作品のテンポが良いわけではないので疲れてしまう。
一番悲惨だったのはセリフの言葉遣いや会話を紡ぐリズム。
松山ケンイチや池松壮亮のセリフが学芸会に聞こえてしまうことからその稚拙さは想像していただきたい。
山小屋に客が集うシーンなどはセリフが不自然すぎて驚いた。大根監督が極めて会話的な言葉遣いを撮る監督さんだとすれば真逆である。
キャストの雰囲気づくりはよかった。
ただ、使いこなせなかったなという印象。彼らだったから見ることのできるレベルまで引き上げられたというべきか、この演出なら大根役者でも同じだったのか、それはよくわからない。
終盤にトヨエツが倒れたシーンを入れるくらいなら松ケンの山小屋主人としての奮闘を描くべきだったのではと思う。
物語の起伏が乏しくなったとしても。