映画『青空エール』ネタバレ感想|天理と拓大紅陵の名曲が!高校野球ファン必聴!

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

皆さんは、高校野球は好きですか?
高校野球の熱戦を彩る、ブラスバンドの応援は好きですか?

今回ご紹介する作品は、2016年の『青空エール』です。
土屋太鳳さん竹内涼真さんが共演、監督は三木孝浩監督

甲子園を目指す野球部と、それをスタンドから応援する吹奏楽部
目標に向かって真っ直ぐに突き進む高校生、そしてブラスバンドの野球応援が何よりも素晴らしい映画でした!

竹内涼真が演じる球児・大介の応援歌を始め、選曲が良いんですよね…!!

高校野球ファンならきっと満足できる応援曲ばかりだと思います。

今回は、映画の中で使われた曲の紹介を中心に、感想を書いていきます。



あらすじ紹介

北海道・札幌。野球と吹奏楽の名門・白翔高校に入学した小野つばさは、野球部のトロフィーを眺めていた野球部員の山田大介と出会う。吹奏楽部に憧れるつばさは、「甲子園で戦う大介をスタンドで応援する」と約束を交わし、その約束を実現させるため、2人は互いに惹かれあいながらも、それぞれの部活動に邁進していく。

出典:映画.com

モデルは実在の吹奏楽名門

主人公たちが通う札幌白翔(しらと)高校には、札幌白石高校という実在のモデルがあります。

札幌白石の吹奏楽は北海道屈指の名門で、過去には全国大会で5年連続金賞を受賞したことも。
学生野球のブラスバンド記事で著名なライター・梅津有希子さんの出身校でもあります。

野球部は全国大会に出場するほどの強豪ではないものの、2018年に支部予選を突破し、全道大会に出場しました。

支部予選と全道大会って何?という点は後ほど感想部分で紹介します

スタッフ、キャスト

監督 三木孝浩
原作 河原和音
脚本 持地佑季子
小野つばさ 土屋太鳳
山田大介 竹内涼真
水島亜希 葉山奨之
城戸保志 堀井新太
脇田陽万里 松井愛莉
春日先輩 小島藤子
森先輩 志田未来
杉村先生 上野樹里

つばさ(土屋太鳳)が所属する吹奏楽部は、同期に葉山奨之松本穂香、2個上の先輩に志田未来小島藤子といった面々です。顧問の杉村先生役に『のだめカンタービレ』の上野樹里

野球部ではキャッチャーの大介役を竹内涼真、ピッチャーの城戸役に堀井新太、2個上の先輩に山田裕貴、2個下のマネージャーを平祐奈が務めています。

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



使われた応援曲の一覧

『青空エール』は高校野球が好きな人にぜひ観ていただきたいんですけども、臨場感あふれるブラバンの応援が凄く良いです!

作品内で使われた応援曲を紹介していきます。

威風堂々

札幌白翔高校の応援で使われました。エドワード・エルガー作曲の行進曲です。高まりますね。

実際の高校野球では過去に履正社や敦賀気比が使っていたのを見たことがありますが、サッカー・浦和レッズの応援でも使われたりしています。

夏祭り

JITTERIN’JINNの曲をWhiteberryが2000年にカバーしてリリースしたことで大人気に。映画内では札幌白翔の応援曲として使われていました。

ヤクルトスワローズの応援歌としても有名です

高校野球応援の定番の一つなので検索すればたくさん演奏が出てくると思います。ここでは美爆音で有名な習志野高校の応援をご紹介。前奏部分のアカペラも素晴らしいですよね。

狙いうち

山本リンダのヒット曲にして、おそらく高校野球界で一番有名であろう応援曲「狙いうち」。映画では札幌白翔の応援曲として使われています。

「お前が打たなきゃ誰が打つ」の後にも「狙いうち」につながっていく演奏が入り、その後また最初に戻るので「かっとばせー〇〇!」までが長い曲ですよね。

さくらんぼ

大塚愛の代表曲「さくらんぼ」は、札幌白翔の対戦相手・青雲第一高校の応援歌として登場。高校野球応援の定番の一つで、稀に「もう一回!」部分を再現している応援団も見ます。笑

日本でのリリースは2003年末ですが、にゃんこスターやJYJのキム・ジュンスの影響で、最近は韓国で大きく注目を集めているみたいですね。

Sunny Day Sunday

センチメンタル・バスが1999年に発表。「39度のとろけそうな日」が印象的な曲です。ポカリのCMで使われ、CDジャケットには保土ヶ谷球場(神奈川)が使われています。

39度の炎天下にもかかわらず、せーの!で走り出す超絶パワフルな歌詞なんですけども、こちらは2004年春のセンバツで初出場初優勝を果たした済美高校(愛媛)が用いたことで一気に有名になりました。
2004年春・東北高校との準々決勝では、9回裏「Sunny Day Sunday」の応援歌が響く中、済美高校の高橋選手が逆転サヨナラ3ランホームランを放っています。

『青空エール』では青雲第一高校の応援曲として使われています。

個人的にはこの選曲によってめちゃくちゃ映画への好感度上がりましたね…!

Xが1989年にリリース。高校野球界の人気曲です。
前奏ありのバージョン、合いの手のバリエーションなど、学校によって様々なパターンがあります。映画内では青雲第一の応援曲として使用。

今回は履正社高校の動画をご紹介させていただきました。

チャンス紅陵

『青空エール』で札幌白翔のチャンステーマとして使われたのは「チャンス紅陵」
チャンステーマというのは、個人の応援歌とは別に、ランナーが二塁や三塁にいるなど、得点チャンスで使われる応援曲になります。

この「チャンス紅陵」は千葉県の拓大紅陵高校がオリジナル。千葉県内では圧倒的な使用率を誇り、また、浦和学院(埼玉)が「怪物マーチ」として使っているのを聞いたことがある人も多いかと思います。

高校野球の千葉大会を観ているとマジで色んな学校が(吹奏楽がなくても)やっています。それくらいの浸透度です。

千葉県の野球応援は全体的にレベルが高いです。高校野球応援が好きな人はぜひご覧になってみてくださいね!

で、この本家の拓大紅陵なんですけども『青空エール』で使われた録音演奏には、拓大紅陵と、洗足ウインド・シンフォニー / 池上政人教授(洗足音楽大学)がクレジットされているんですね。
撮影で使われた球場は柏の葉公園野球場。千葉県の高校野球ファンの方にはとても馴染みのある映画だったのではないでしょうか?

大介くんの応援曲は?

札幌白翔の大介(竹内涼真)の応援歌が気になった方もいるかと思います。
つばさ(土屋太鳳)が前奏を吹くあの曲です。

これの原曲はアメリカ民謡の「Our Boys Will Shine Tonight」という曲。
高校野球では奈良の強豪・天理高校が使用しています。

天理の応援

天理高校の応援って本当に独特なんです

普通は1番バッターから9番バッターまで各々に応援歌があったり、年ごとに使う応援曲が変わったりするわけですが、天理高校は基本的に「オーラ・リー」「オブラディ・オブラダ」、そして「Our Boys Will Shine Tonight」の3曲だけで(チャンステーマを除く)応援を進めます。
「オーラ・リー」は「ラブ・ミー・テンダー」、「Our Boys Will Shine Tonight」は「セントポール」と表記されることも多いですね。

これは異端です。定番曲も流行曲も関係ありません。
その代わりにこの3曲を聞けば、「ああ天理か」と想起するくらいには高校野球ファンの中に刷り込まれています。

それくらいに大介くんの応援曲は高校野球界にとって象徴的な曲なんですね。

セントポールとの違い

先ほど書いたように、「Our Boys Will Shine Tonight」は「セントポール」という表記をされることがあります。
この「セントポール」っていうのは立教大学の通称で、立教大学が「Our Boys Will Shine Tonight」を元に、第二応援歌「St.Paul’s will shine tonight」として採用したんですね。

高校野球でいうと横浜高校(応援歌名は「B2」)などが、またプロ野球では阪神タイガースが野手の汎用応援歌(その掛け声から「アイヤ」と呼ばれることもある)として使用していますが、これらはともに立教大学の応援歌「セントポール」から生まれたものです。

一方で天理の「Our Boys Will Shine Tonight」は「セントポール」とは別物です。

天理はこの応援曲を原曲のアメリカ民謡から直接採用していて、立教発の「セントポール」とは関係がないんですね。
経緯については『青空エール』の札幌白翔高校のモデルとなった、札幌白石高校の卒業生・梅津有希子さんの公式サイトでも詳しく書かれています。

めちゃくちゃ読み応えあるので天理の応援が好きな方は必読です!

 

拓大紅陵、天理の象徴的な応援曲を映画に取り入れた『青空エール』はやっぱり凄かったです。
他にもヒット時に「智辯ファンファーレ」が流れたり、製作陣に高校野球ガチ勢がいるのでは?と思えるほどの贅沢なラインナップでした。

そんな神曲を拓大紅陵と洗足ウインド・シンフォニーが素晴らしい演奏で彩ってくれるわけです。高校野球ファンの方、演奏シーンはマジで必聴です。



高校野球映画としての感想

続いて高校野球映画としての感想です。

基本ツッコミどころ多しです。すみません

北海道の予選形式

全域を対象に1回戦、2回戦、3回戦…と進んでいく他の都府県予選と違い、広い北海道では地域ごとにブロック予選を行い、各ブロックの勝者が決勝トーナメントのような形で南(北)北海道大会に進出します。

今回の札幌白翔高校は札幌地区に所属。
札幌は校数が多いため、(2020年の大会を例にすると)9つのブロックに分けられます。2回か3回勝つと南北海道大会に進出決定。
他には函館地区ブロック、小樽地区ブロック、室蘭地区ブロックがあり、各ブロックの勝利校が南北海道大会に駒を進めます。

2020年大会の場合、札幌地区×9校、函館地区×3校、小樽地区×1校、室蘭地区×3校という形ですね。
その16校が甲子園を懸け、南北海道大会をトーナメント形式で戦います。映画の中で部室に貼られていたトーナメント表は、この南北海道大会(本大会)の部分。でも実はその前に2試合か3試合ブロック予選を戦っているはずなんですよね。

いきなり決勝?

青雲第一という高校と、3年連続同じカードの決勝となった札幌白翔。

けれど毎年、甲子園を懸けた決勝戦しか彼らの夏は描かれないんですよね。それまでにブロック予選を2,3試合、本大会を1回戦、準々決勝、準決勝と勝ち上がっているはずなのに、決勝戦になって初めて吹部が応援に駆けつけるんです。

まあ全国レベルの強豪校では確かに地区予選の終盤までブラバンが来ないとかもありますし、全校応援を解禁するのはある程度トーナメントが進んでからという高校もあります。

ただ札幌白翔が北海道内の名門とはいえ、準決勝まで応援なしっていうのは少々寂しいかと、思ってしまうわけです。

重箱の隅をつつくと…

さらに細かいことを言えば、北海道は南北代表ともに7月上旬には甲子園代表校が決まります。これは沖縄とかと並んでとても早い方に入ります。
ブロック予選は6月中旬〜下旬から始まっています。

映画内で予選の幕開けを告げる頃にセミが鳴いている描写がありましたけど、まだ早いんじゃないでしょうか。

加えて南北海道大会のトーナメント表(大介たちが3年時)に、知床とか旭川の高校が書いてありましたが、その地域は北北海道大会のエリアです。笑
原作を知らないので何ともですが。

キャッチャー竹内涼真が最高

ここまで高校野球好き目線から設定面に無粋なツッコミをしてきましたが、この映画、野球自体の描写はとても良いです。

ざっくり言うと竹内涼真選手のキャッチャー姿が最高です

ご存知の方も多いと思いますが、竹内涼真はヴェルディのユースに所属していた元サッカー選手です。
でありながら、この『青空エール』でマスクをかぶり、キャッチャーミットを構える大介(竹内涼真)の振る舞いは、何ら違和感がありませんでした。

そもそもの姿勢が綺麗ですよね、姿勢が

「俺、今は野球に集中したい。だから小野とは付き合えない。」
これもド正論。大会終わるまでは恋愛封印。部活生のあるあるですね。

個人的に一番好きなのは練習で大介が一塁送球をするシーン。綺麗な腕の振り、足の運び方。
同じシーンで後輩役の子が送球していますが、結構差があります。

1年時の大介が、最後悪送球をしてしまってサヨナラ負け、という設定もよかったですね。残酷な結末ですが、高校野球ではよくあることです。
エラーってボールをこぼしたり逸らしたりするよりも、悪送球の方が多いんじゃないんですかね?

敗戦の責任を感じる大介に対して碓井先輩(山田裕貴)が言った「自分のせいで負けたとか図々しいこと思ってんなよ?」も響きました。いい先輩ですねぇ…。

制服を着ていると高校生に見えないガタイの良さも、ユニフォームを着れば全国レベルの逸材へと変貌。いや、まじでサイズに恵まれた強豪校の選手みたいでした。
キャッチャーという大事なポジションに、プレーヤーとしての再現度が高い竹内涼真を配したのはこの映画の勝利だと思います。はい。

ちなみに通称『もしドラ』も、野球描写はかなりツッコミどころが多かったんですが、キャッチャー役の池松壮亮によって引き締められています。

池松さんは実際に野球経験者ですけども、たたずまいからして段違いでしたね…

これからも良い友達でいてあげて!

正直、主人公・つばさ(土屋太鳳)の行動には、えっ?と思うところが多かったんです。
1年時の試合負けた後のソロ演奏なんてあんなの失礼以前の話だし、自分の思いに素直すぎなのも結構重いなこの子と思いました。

リハビリを頑張る大介くん(竹内涼真)のために「みんなの演奏を聴かせたい人がいます」って提案した時に松本穂香をはじめとした反対派から「自分勝手」「わがまま」と言われたのも確かになって話です。
そしたら他の部員だって「演奏で元気付けたい誰か」はいるでしょうからね。

でも、そんな暴走気味なつばさを支える周囲、特に吹部の同期・水島くん(葉山奨之)と友達の陽万里ちゃん(松井愛莉)が最高でした。いや、マジで高校卒業しても一生友達でいてあげてほしいですよ。

さらに言えば森先輩(志田未来)がふさぎこんだ時に一緒に押しかけたモブ先輩たちもめっちゃ良い人たちでしたね…!良い人多すぎ白翔高校!

水島くん

葉山奨之が演じた水島くんは、言葉に感情がこもってるんですよね。全然笑わないし、怒った顔をするわけでもないポーカーフェイスだから、なおさら言葉に宿る温度が際立ちます。

つばさ(土屋太鳳)が初心者だった1年時の頃から、小野さん足手まといだから辞めてくれない?だけじゃない彼なりの激励をしていましたし、つばさが演奏会で吹き真似をしたことに対してひどく落胆したのも彼なりの感情が伝わってきました。

こういうキャラクターって単なる嫌味な奴になってしまうこともあると思うんですけど、水島くんの厳しいセリフの裏には「こうした方がいいよ」の提案があります。言葉を選んでポツポツと喋る感じもすごく良いです。

部長になった3年時には、天才1年生だった頃からの伸び悩みも見て取れましたし、その一方でつばさを「3年間初心者から頑張ってきてさ、それでも1年にメンバー食われてさ」と評価するわけです。

これ僕がつばさだったら家帰ってむせび泣いてますよ。

野球部最後の夏大なんて、水島くんにとってつばさは一番信頼できる同志になってます。卒業してもつばさと仲良くしてあげてください。本当に。

陽万里ちゃん

入学早々のシーンでつばさとは対照的に、ハキハキと自己紹介をした陽万里ちゃん(松井愛莉)

つばさとは中学が同じでしたが、入学当時の絡みを見ると結構距離感を感じましたよね。中学の時は同じグループではなかったんでしょう。

そんな彼女が、つま先ばっかり見ているような引っ込み思案のつばさとは対極にありそうな陽キャの陽万里ちゃんは、つばさを最初から最後まで褒め、肯定します。
つばさにとって一番大事な友達になっていきます。

大介くんへのつばさの恋心にもいち早く気づき、城戸を引き寄せて鮮やかに2対2のシチュエーションを作り出す心配りよ。

あれだけ良い人だと何か裏があるんじゃないかと僕みたいなひねくれ者は勘ぐってしまうんですけど、裏、ないんですよね……!

友人の成長や成功をやっかむことなく、全部称賛して肯定できる、純粋に超良い人です。超希少人種です。
陽万里ちゃんもつばさとは一生友達でいてあげてほしいなと願わずにはいられないキャラクターでした!

合わせて観たい、あの映画

最後に『青空エール』と合わせて観たい作品についてご紹介します。

『アルプススタンドのはしの方』(2020年公開)です。


(画像からAmazon プライム・ビデオの取り扱い画面に遷移します)

こちらは高校野球の応援席の「端っこ」に佇むような生徒たちを切り取った映画。
つばさ(土屋太鳳)や水島(葉山奨之)のような吹奏楽部の部員は、対照的に「真ん中」側の登場人物として扱われており、『青空エール』の裏返しのような世界観です。

この映画でも「ルパン」や「狙いうち」などブラバンの応援曲がいくつも使われていて、シエロウインドシンフォニーさんの素晴らしい演奏によって臨場感たっぷりに再現されています。

アルプススタンドのはしの方タイトル画像

映画『アルプススタンドのはしの方』ネタバレ感想|ブラバンの名曲が彩る外角高めの青春ストライク

2020年7月29日

2020年急激に変化した生活様式により、そう簡単にスポーツの応援を楽しめない日々が続いています。高校野球も例に漏れず、ブラスバンドに彩られた応援を楽しむことは現状できていません。

そんな中で『青空エール』、『アルプススタンドのはしの方』はやっぱり応援っていいな、ということを再認識させてくれる映画だと思っています。

青春作品として楽しむほかにも、高校野球ファンにとっては心に響く作品になったのではないでしょうか。

 

今回は高校野球好きの目線多めに映画『青空エール』を紹介しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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