こんにちは。織田です。
2017年に公開された韓国の映画『LUCK-KEY ラッキー』をAmazonプライム・ビデオで鑑賞してみました。
結論から言うと、とっても面白い映画でした。
原案は、2012年公開の邦画『鍵泥棒のメソッド』(内田けんじ監督)。
元々この映画が好きだったこともありますが、『LUCK-KEY』はこちらのオリジナル版とまた違ったアプローチで楽しめる作品です。
原案を忠実に再現してスタートしながらも、単純なリメーク、二番煎じではない爽快なストーリーでした。
この記事ではオリジナル版の『鍵泥棒のメソッド』と韓国版『LUCK-KEY』の共通点、違うところ、またオススメできるポイントはどこなのか、ご紹介していきたいと思います。
まだどちらも見たことがない人はぜひ!
順番としては原案となった『鍵泥棒のメソッド』から先にご覧になるとわかりやすいかと思います。
『鍵泥棒のメソッド』の作品情報
まずは二つの映画の基本的な情報についてご説明していきます。
先に『鍵泥棒のメソッド』から。
あらすじ、キャスト
35歳でオンボロアパート暮らしの売れない役者・桜井は、銭湯で出会った羽振りのよい男・コンドウが転倒して記憶を失ってしまったことから、出来心で自分とコンドウの荷物をすり替え、そのままコンドウになりすます。
監督・脚本:内田けんじ
桜井武史:堺雅人
コンドウ/山崎信一郎:香川照之
水嶋香苗:広末涼子
銭湯で転倒して記憶を失う、実質的な主人公を演じるのは香川照之。
香川と入れ替わって成り済ます売れない役者・桜井役は堺雅人が演じています。
作品のヒロインは一人。堅物の編集職・香苗を広末涼子が演じました。
見どころポイント
- 香川照之の表情、演技が最高!
- 予想を次々とひっくり返す!爽快な伏線回収の連続!
- 婚活女子・広末涼子を巡る笑いのタネ
『鍵泥棒のメソッド』は、主人公の香川照之がもう最高に面白いです。
自分が何者なのかわからない、売れない役者であるらしい35歳(には見えませんね?)のオッサン。そんな香川照之が一生懸命に手探りで人生の鍵を探し求めていく姿を、客観的に眺めて笑うことのできる映画です。
脚本も『LUCK-KEY』に比べて緻密に練られています。
こちらの予想を次々とひっくり返す意外性や笑いの小ネタという点では、オリジナル版が上回っています。
構成が本当に丁寧なので「面白い映画を観たい!」という人には、満足していただけると思います。
普段邦画をあまり観ない方でもきっと楽しめる作品です。
『LUCK-KEY』の作品情報
続いて『LUCK-KEY』の作品情報も簡単にご説明していきます。
あらすじ、キャスト
どんな依頼も成功させる殺し屋ヒョヌク(ユ・ヘジン)。彼は、仕事を終えて立ち寄った銭湯でせっけんを踏んで転び、頭を床に打って記憶喪失に陥る。その一部始終を目にした売れない俳優ジェソンは、ヒョヌクの荷物が入ったロッカーの鍵を自分のものとすり替える。それを機にジェソンは殺し屋ヒョヌクとして、ヒョヌクは何もわからぬまま俳優ジェソンとして生きていくことに。
殺し屋が銭湯で頭を打ち記憶喪失になり、売れない役者に“自分”を乗っ取られてしまう構成は『鍵泥棒のメソッド』と同じですね。
監督:イ・ゲビョク
原案:内田けんじ
脚本:チャン・ヨンミ
ヒョヌク:ユ・へジン
ジェソン:イ・ジュン
リナ:チョ・ユニ
ウンジュ:イム・ジヨン
"Luck.Key" Yoo Hae-jin, "Is it that funny that I am only 32-years-old?" https://t.co/Cl0JIH5cmv pic.twitter.com/JVivAoSOxa
— HanCinema (@hancinema) October 18, 2016
主演の殺し屋を演じたのは、バイプレイヤーとして名高いユ・へジン。
オリジナル版の香川照之に該当する役回りですが、香川同様におっさん感がほとばしっていて非常に良いです。
オリジナル版の堺雅人に当たる「ジェソン」を演じるのはイ・ジュン。
またヒロイン役はチョ・ユニが務めました。
加えて、イム・ジヨンが演じるウンジュという女性が、殺し屋となったジェソンの人生に影響を及ぼしていきます。
ヒロインを演じたチョ・ユニが抜群に美人です。
少し世間とずれたところのあるオリジナル版の香苗(広末涼子)に比べて、非の打ちどころがない素敵な女性でした。
見どころポイント
- オリジナル版よりわかりやすい一直線なラブコメ!
- 有能なユ・へジンの冒険物語を楽しもう!
- 韓国映画ならではの家族愛が素敵
『LUCK-KEY』の魅力は、ヒョヌクを演じるユ・へジンの有能ぶり。
『鍵泥棒のメソッド』の香川照之も有能だったのですが、こちらはユ・へジンが役者として成長していく部分にフォーカスを当てており、より彼の成長物語としての側面が強くなっています。
ユ・へジンがメキメキと実力をつけていく過程を一緒に楽しめる作品ですね!
展開がストレートで気持ちの良い映画なので、「ハッピーエンドの映画を観たい」という方にもおすすめです!
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この先は、『鍵泥棒のメソッド』と『LUCK-KEY』をともに観た方向けに、両作品の共通点、異なる点を、感想を含めて書いていきます。
作品の展開や設定に触れる箇所があります。
ネタバレの部分もありますので未見の方はご注意ください。
両作品の比較・ネタバレ感想
ここからは『鍵泥棒のメソッド』と『LUCK-KEY ラッキー』を両方鑑賞した上での感想を部分ごとに比較しながら書いていきます。
繰り返しになりますが、どちらも本当に面白い映画でした!
※役名で表記するとややこしくなりそうなので、キャスト名にて表記させていただきます。
導入部分〜人物の入れ替わりまで
物語の序盤はほぼ同じでしたね。
殺し屋らしき男(香川照之/ユ・へジン)が雨ガッパを着て仕事を遂行する冒頭のシーンから、銭湯に行って転倒し頭を打つシーンまで『LUCK-KEY』はオリジナル版の『鍵泥棒』を忠実に再現しています。
堺雅人とイ・ジュンが暮らすボロアパートの乱雑ぶりもよく似ています。
一方、広末涼子が婚活女子を演じていた『鍵泥棒』と違い、『LUCK-KEY』のヒロインであるチョ・ユニには婚活に励む設定はありません。職業も編集者ではなく救急隊員です。
彼女がユ・へジンに関わるようになったのはユ・へジンを病院まで運び、彼の入院費を立て替えてあげたことがきっかけでしたが、その分を実家のお店で働いて返してね、という設定はとても上手でした。
(金額を聞いて「え、そんなに?」となったチョ・ユニも可愛かったですね)
『鍵泥棒』では香川照之が「必要なもの:お金」と理解していながらも、なかなか稼ぐ手段が見つからずにひたすら慎ましく生きる姿を眺める形でしたが、『LUCK-KEY』のユ・へジンは少し違いました。
ヒモ男とアルバイト
『鍵泥棒のメソッド』の香川照之は退院後も働き口を見つけることができずに、ひたすら「自分とは何か?」を問い続けます。
自分(=桜井武志)という男がどのように構成され、何を好きなのかを丁寧に自己分析する一方で、広末涼子にご飯を作ってもらったり、撮影という名のタダメシに同行させてもらったりもします。
簡単に言えばヒモ男です。
『LUCK-KEY』ではその辺りがシビアで、「働かざる者食うべからず」とでも言うべく、ユ・へジンはチョ・ユニの実家が営む料理店で雇われることになりました。
圧倒的な包丁さばきでお店の人気者となったユ・へジン。もはや才能のカタマリです。
社会的な日の当たる場所に上り詰めるスピードが香川照之とは段違いです。そりゃチョ・ユニも彼をすごいなって思うわけです。すごいなの羨望がハートマークになるのも無理ありません。
チョ・ユニの家族と仲良くなる過程も丁寧に描かれています。
家族を大事にする韓国っぽさが出ていて良いですよね。
役者へ。いや、人気出すぎだろ
“自分”がどうやら役者であるらしいことに気づいた香川照之&ユ・へジンは、エキストラを募集していたドラマのロケ地に向かいました。
ともに人相の悪さを生かした悪の用心棒みたいな役ですよね。
『鍵泥棒』内でのロケバス集合地は相模鉄道いずみ野駅。これまたコアなところを選んできました。
香川照之はドンパチシーンの悲壮感たっぷりな表情が、監督から高評価を受けます。
僕は『鍵泥棒』で演技をする香川照之を、図書館で本を借りてきて演技の勉強をする香川照之を見て、本当に実直なキャラクターだなと気持ち良くなりました。
確かに気持ちよくなったはずなのですが。
『LUCK-KEY』のユ・へジンは、それをあっさりと超えてきました。
上手に敵役を作りつつ、それを実力と人気であっさりと乗り越えていく爽快感。圧倒的です。
どんだけ人気でてんねんこのオッサン!
と笑ってしまうくらい真っ直ぐにユ・へジンはスターダムの道を駆け上っていきます。
香川照之も確かに有能なキャラとして描かれているんですが、サクセスストーリーの度合いが桁違いでしたね!!
料理人としてのサクセスストーリー。それにも増して、役者としてのサクセスストーリー。
人生を見失ったはずの、負け組に突如転落してしまったはずのオッサンの奮闘劇という点では『LUCK-KEY』に軍配が上がると思います。
ヒロインはどちらが好み?
『鍵泥棒』のヒロイン・広末涼子は真面目な雑誌編集長で、少し世間ズレしたユーモアも感じさせる面白いキャラクターでした。
婚活中というシチュエーションを使いながら、恋愛とは何か?結婚とは何か?を自問し、自らの最愛の人を探しているといっても過言ではありません。
『LUCK-KEY』のチョ・ユニはというと、こちらは正義感が強く、凛とした典型的なヒロインですね。
人生の迷子になってしまったユ・へジンの世話を焼き、役者界隈で奮闘を続ける彼を時にマネージャーのような立場から全力でサポートします。
この女、何か裏に別の顔があるんじゃないか?とこちらが勘ぐるような要素が全くありません。まぎれもないヒロインです。
また『LUCK-KEY』ではイム・ジヨンが演じる女性(ターゲット(顧客)の一人)が、イ・ジュンと関わっていきますが、彼女は『鍵泥棒』の綾子(森口瑤子)に相当する役柄です。
悪い人たちに追われていて、仕事人と一芝居打って助けてもらう役柄です。
彼女のことを助けたいと思うイ・ジュンは、ストーカーまがいの「また会いましたね」で関わろうとしていくわけですが、これはイ・ジュンのルックスだからできたのではないでしょうか。
丸亀製麺で偶然を装い声をかける不審者。なお、顔が良い件。
堺雅人が森口瑤子にあんな感じで遭遇していたら間違いなく怪しい奴です。
香川照之とユ・へジンはともにオッサン色の強いキャラクターで一致していましたが、堺雅人とイ・ジュンは少し毛色が異なりました。
イ・ジュンはそこまでダメ男な部分が見えてきませんでしたし、どこか自分に(根拠のない)自信があるようにも見受けられました。
見ていてイライラしないのは多分『LUCK-KEY』の方でしょうね。
結末もイ・ジュンの方がハッピーエンドでした。
ヒロインを実質的に2人用意したことからも、『LUCK-KEY』は二人の男両方に程度の差はあれど、サクセスストーリーを持たせる作りだったと思います。
『鍵泥棒』では堺雅人がほぼ何もできないダメ男のまま終わりましたからね。
ハラハラか、ワクワクか
「芝居を打って、窮地を脱しよう」
元役者と現役者のプライドを込めた一世一代の大仕事が物語の山場になったのは『鍵泥棒』、『LUCK-KEY』ともに同じでした。
ただ、そこに至る経緯や「芝居」を打った後の展開は大きく変わっていきました。
『LUCK-KEY』ではチョ・ユニが闖入者となってしまいましたし、『鍵泥棒』ではそもそも計画自体が失敗に終わります。
どちらがわかりやすいかと聞かれれば『LUCK-KEY』だと僕は答えますし、
どちらがどんでん返し感が強いかと聞かれたら『鍵泥棒のメソッド』だと僕は答えると思います。
『鍵泥棒』は登場人物たちをある程度客観的な目線で見て、丁寧なプロットの中で彼らがどのようにして動いていくのかを見守るタイプの映画だと思います。
「この後どうなっていくのかな?大丈夫?」というハラハラ感が強い印象です。
その緊張感の一方で、キャラクターの設定も非常に細かく描かれているのでそこには笑いもありますし、伏線回収が何度も繰り返されていくため非常に頭を使いながら観ることができる映画です。
鑑賞後の感想としては「面白い映画。よくできたストーリー」という感じでしょうか。
それに対して『LUCK-KEY』は、(主にユ・へジンの)サクセスストーリーを「楽しむ」映画だと思います。
ストーリーの中で障壁や危ういところも出てくるものの、軸となっているのはユ・へジンとチョ・ユニの微笑ましい物語です。
『鍵泥棒』が観察眼的に楽しむ映画だとすれば、『LUCK-KEY』はサクセスストーリーを歩む主人公を応援して楽しむ種類の映画ではないでしょうか。
ユ・へジンの魅力に気づき彼を抜擢するドラマの監督。ユ・へジンに魅せられて「ドラマの筋書きを変えて!」と叫ぶ世論。
僕も気づけば彼らと同じように、ユ・へジンをもっともっと観たい!という衝動を抑えられなくなっていました。これはもはや傍観ではなくて応援です。
鑑賞後の感想は「楽しい映画。いいストーリー」という感じでした。
オリジナル版の『鍵泥棒のメソッド』は、個人的に人生ベスト10に入る勢いで好きな映画です。
そんな傑作を上手にリメークし、原案とはまた違ったアプローチで楽しませてくれた『LUCK-KEY』も本当に素晴らしい映画だと思います。
一方で、「また違ったアプローチ」であることに気づかせてくれたオリジナル版の存在、それはやっぱりとっても大事だと再確認できました。
名作のリメークが名作である。
そんな幸せを感じさせてくれる2つの映画でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。