こんにちは。織田です。
今回は2015年公開の映画『ビリギャル』をご紹介します。
主演は有村架純さん。監督は『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督。
原作は坪田信貴さんの著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』です。
高2の夏から猛勉強をして難関大学に合格する主人公・さやか(有村架純)のサクセスストーリー。自分自身の大学受験当時も思い出しながら、めっちゃ感情移入しながら鑑賞しました。良い映画でした!
この記事では下記の部分に注目して感想を書いていきます。よろしければご覧ください。
- 時代設定は?
- 教育へのコスト
- 受験あるある
- 有村架純と野村周平
あらすじ紹介
名古屋の女子高に通うお気楽女子高生のさやか(有村架純)は全く勉強せず、毎日友人たちと遊んで暮らしていた。今の状態では大学への内部進学すらままならないと案じた母は、さやかに塾に通うよう言いつける。彼女は金髪パーマにピアス、厚化粧にミニスカートのへそ出しルックで渋々入塾面接に行き、教師の坪田と出会う。
映画『ビリギャル』が公開45日目にして遂に200万人を突破致しました!!
皆様、本当にありがとうございます!!ロングラン上映中です!是非ご覧ください!!⇒birigal-movie.jp pic.twitter.com/ZXG9I5WqPo— 映画『ビリギャル』 (@birigal_movie) June 15, 2015
スタッフ、キャスト
監督 | 土井裕泰 |
原作 | 坪田信貴 |
脚本 | 橋本裕志 |
工藤さやか | 有村架純 |
あーちゃん(母) | 吉田羊 |
工藤徹(父) | 田中哲司 |
龍太(弟) | 大内田悠平 |
まゆみ(妹) | 奥田こころ |
坪田 | 伊藤淳史 |
塾長 | あがた森魚 |
本田美果 | 松井愛莉 |
森玲司 | 野村周平 |
西村(担任) | 安田顕 |
名古屋を舞台にしている作品なので名古屋弁がキャラクターによっては頻繁に出てきます。具体的にはさやかたち女子高生と、特にさやかのお父さんですね。
お父さんは「たわけ」という表現をよく使っています。実際の名古屋ネイティブ話者があそこまでコテコテかどうかは微妙なところ。笑
時代設定は?
以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
冒頭にも述べた通り、この映画の原作は坪田信貴さんのノンフィクション作品『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』。
そこで描かれる主人公・さやかさんは、2006年に慶應義塾大学に合格しています。
実際のさやかさんと私自身がおそらく同じ学年ということもあり、時代設定はいつなのかなと思って見ていましたが、なかなか興味深いものでした。
2014年度入学試験
劇中の工藤さやか(有村架純)や森玲司(野村周平)は、2014年度の大学入学試験を受けています。1995年生まれ世代ですね。
さやかが解いている慶應の過去問も2013年の“赤本”。
映画が製作された年に近いものにアップデートされています。
ヘビロテ、PSP、モウリーニョ
また、あまり携帯電話が出てこない作品ではありますが、さやかたちが使っているのはスマホ。さやかたちがカラオケで歌っているのも2010年代を代表するAKB48の「ヘビーローテーション」で、坪田先生(伊藤淳史)もAKBの神7という単語を引き合いに出して生徒のモチベーションを上げていました。
坪田先生の話術では、幽遊白書やマリオのようなものもありましたが、サッカーのジョゼ・モウリーニョ監督の「電気や蒸気の力よりも強い唯一の原動力は、意志の力」という言葉を使っていたことからも2010年代っぽさが漂ってきます。あの言葉は2011年にモウリーニョが言ったセリフ。
一方で玲司が入塾面接時に傾倒していたのはPSP(モンハン?)で、さやかやお母さんが使っていたのはコンパクトデジカメ、またさやかの部屋にはセシルマクビーの黒いショッピングバッグがありました。懐い。あれに体操着入れて持ってきてる女子めっちゃいました。
さやかたちギャル軍団のファッションや玲司の服装含め、2010年代中盤といわれればそのような気もしますが、その10年前といわれてもおかしくないようなノスタルジーを感じました。
時代設定に関してはわりとニュートラルな印象を受けます。
教育へのコスト
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『ビリギャル』で好きだったのは、工藤3きょうだいの「教育」にかかるコストが可視化されていたことです。
自分に対して親がどれくらいお金をかけてくれているのか。それをさやか(有村架純)も、弟の龍太(大内田悠平)も、妹のまゆみ(奥田こころ)も、多少なりとも把握しています。そしてそれは時にプレッシャーにもなるし、頑張る原動力にもなります。
さやかの場合
長女・さやかの場合は、母親・あーちゃん(吉田羊)の熱心なバックアップがありました。
小学校で馴染めず、怪我を負った娘に対して学校が言った「長いものには巻かれてください」(笑)という言葉に幻滅したあーちゃんは、「それがこの学校の教育方針なんですか?」と憤り、転校させることを決意します。
その後さやかが「あの制服可愛い…」と口にしたエスカレーター型の中高一貫女子校への受験を決定。「好きなことだけしていればいいの」という魔法の言葉をかけ、さやかのやりたい放題な女子校生活がスタートします。
さやかがいくらスカートの丈が短くなろうとも、化粧が濃くなろうとも、成績が悪くなろうとも、あーちゃんは咎めることなく娘の「やりたいこと」を尊重。しかし授業もまともに受けず(でも学校にはちゃんと行くんですよね笑)、教師からクズ扱いされたさやかの煙草所持がバレて停学処分になり大学進学に暗雲が立ち込めてしまいます。
そこでもあーちゃんは親父のようにさやかを見捨てたりせず、自分の稼ぎから捻出して彼女を坪田先生(伊藤淳史)の塾に通わせることを決めました。
さやかへのコスト
平成30年度に文部科学省が統計をとった「子供の学習費調査」によると、私立中学校は1年間の学習費総額が1,406,433円(公立中学の約3倍)、私立高校は969,911円(公立高校の約2倍)となっています。
仮にこの数字を中高6年間に当てはめた場合、公立の中高6年間にかかる学習費270万円に対し、私立中高は700万円を超え2.6倍の額。それに加えて塾に通わせるとなると、プラスでコストがかかります。
実際にあーちゃんは、坪田先生が言った「今のままでは、さやかちゃんは慶應義塾大学への合格に間に合いません」との言葉を受け、週6日コースという高額プランに切り替えていました。その額は100万円以上。
親父は塾に対して「一銭も出さんぞ」と無視を決め込んでいたため、さやかの教育費への追加分はあーちゃんが自分で捻出するしかありません。封筒を分厚く膨らませた塾費は、あーちゃんが佐川の夜のパートを増やして、親戚にも頭を下げて前借りして集めたものです。
「この重み、わかるよね」
坪田先生はさやかに言います。
わからないわけがないですよね。さやかはあーちゃんの思いを背負って、慶應合格へのスパートをかけていきました。
龍太の場合
さらに工藤家は、長男・龍太に対しても親父(田中哲司)が手をかけています。
さやかが芥川龍之介を「名前に龍がついてるから!」と竜党扱いしていたように、龍太と名付けた以上、この親父もドラゴンズファンなんでしょうね。名古屋らしいです。
さて、このお父さんは、自らが監督を務めるシニアで鍛え、成果を出せばお寿司をとってご褒美を与え、バットやグローブなどの道具にも投資を惜しみません。
息子がプロ野球選手になれると夢見て新品のバットをさする親父。
野球というのはバット、グローブ、スパイク、ウェアと、部活の中ではお金のかかるスポーツです。
本気で上を目指してやっていくには金銭的なバックアップが必要になります。
自分がプロ野球選手を目指して大学まで野球をやっていたこともあって、親父はそのへんも覚悟していたんでしょう。さやかが楽しく過ごすことが私の幸せという感じの母親同様、龍太の成長・成功が俺の幸せとばかりに、息子へお金を使います。さやかとまゆみがいる前でも躊躇なく特別扱いをして、娘二人と龍太を区別します。
龍太のその後
で、龍太は親父の期待通り成長して野球強豪校から誘いを受けて進学。親の熱心な投資が実を結ぶ形になります。
ただその後、地元で一番野球がうまかった少年は猛者だらけの高校野球部で壁にぶち当たり、上には上がいることを痛感してドロップアウトしてしまいました。
このくだりは見ていてきつかったですね。
親父は今までこれだけ手をかけて龍太を育ててきたのに、その時間と愛情とお金が水泡に帰してしまう。でも親父も経験者なので、龍太が感じている埋め難い実力差への苦しみも理解できる。
龍太は龍太で、どれだけ頑張ってもかなわないことへの絶望、親父の期待に応えられなかったことへの無念に打ちひしがれてしまいます。また新しい何かを見つけてみようと思っていても、ずっと野球しかしてこなかった自分には、何をしていいのかわからない。
一つのことに打ち込んできた人間が挫折してしまった時の苦しさが滲み出ています。不良とつるむ形でグレてしまった龍太に、さやかが逃げんなよみたいなこと言ってましたが、あの龍太の気持ちはすごくわかりますね。多分野球の野の字も見るのがつらいんじゃないかと。
お金が全てじゃないけれど
大学受験にしてもスポーツにしても、合格だったり勝利だったりと成功をつかむためには成長が必要です。その成長には時間と熱意と環境が必要で、特に「環境」においてはお金をちゃんと投資できるかがポイントになってきます。
これは前に高校野球の取材をしていた時に実感したんですが、強豪校の高校球児たちはことあるごとに親への感謝を口にしています。それだけ自分たちが野球に打ち込める環境をつくり、応援してくれる親御さんにマジで感謝しています。(他の競技や部活でも同様だと思いますが)
大学受験という勝負の場でも同様で、私の場合は高3の春から予備校に通わせてもらっていました。予備校代にいくらかかるのか春の段階で明示されました。また予備校には電車で通わなければならず、定期代ももらっていました。通学定期が適用にならなかったので通勤定期です。
ありがたさを感じる一方、絶対に浪人できないなというプレッシャーもありました。でも多分、何かを勝ち取るってそういうことなんですよね。
受験あるある
【本日公開!!】映画『ビリギャル』全国東宝系にてロードショーです!これは「ゼッタイ無理」に挑んだひとりの少女の物語ー。ゴールデンウィークは是非、劇場へお越しください!お待ちしております!! pic.twitter.com/tTHd6OooZM
— 映画『ビリギャル』 (@birigal_movie) May 1, 2015
『ビリギャル』では、案外授業風景はありません。東大合格を目指す『ドラゴン桜』のような受験テクニックも明示されません。
愚直に勉強量を積み重ねて学力を上げていく形です。どちらかと言えば受験への猛勉強に耐えうるためのメンタリティーを醸成する部分に主眼が置かれます。
あの塾では集団講義ではなく、テキストをひたすら解かせて、答え合わせの段階で坪田先生(伊藤淳史)から解説が入るという感じなんでしょう。
ちなみに私の通っていた予備校では、講師と進路指導の担当が分かれていました。
各科目は習熟度別のクラスでそれぞれの担当講師から講義を受けます。また「チューター」と呼ばれる指導員が生徒一人一人に対して存在していて、学習プランの設定、見直しや進路はチューターに相談しながら決めていきました。
ただ、さやかたちの塾では、学習指導、進路指導を両方とも坪田先生が引き受けます。
生徒それぞれの学習進捗も進路希望も個々の性格も全部踏まえて、坪田先生がひとりひとりに合った合格への道筋を提示していくんですね。
これは超過酷労働ですよ。生徒10人くらいいましたけど、もうあれで限界なはずです。手が回りません。玲司くんの言葉を借りれば、坪田あいつすげーよ、になります。
「ビリ」からの巻き返し
『ビリギャル』では映画冒頭、さやか(有村架純)がどんな遍歴で「ビリ」ギャルになったのかが、坪田先生のナレーションにより語られていきます。潔くてわかりやすいですね。
高2の夏、塾にやってきたさやかちゃんは偏差値30以下。
「strong」を「話が長い(ストーリーがロングの略)」と訳し、「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読み、「縄文時代の次の時代」に「少女時代」と記入するなど、破天荒な回答を繰り広げて坪田先生を唖然とさせます。
そんな彼女が目指す慶應は英語、小論文、歴史が受験科目。さやかは英語を重点的に勉強していくことになり、中学英語からやり直していきました。
自分の話で恐縮なのですが、私は受験に落ちて公立の高校に進学しました。数学、理科、歴史が絶望的にできなかったため、高校の成績も散々。高2からは文系の受験科目(英語、現代文/古文、地理)に絞って勉強を始めましたが、英語は中1の初期英語からやり直していました。
be動詞とか現在進行形とか、「なんで今さらそんなのやってるの?」と周りには笑われましたが、まずは「解ける」ものを解いていって「なぜ解けたのか」と考えられるようになったのが大きかったです。
おそらく映画のさやかも同様だと思うんですよね。初級のテキストで「わかる」部分を見つけていきながら、「何がわかるのか」、そして「何がわからないのか」を明らかにしていく作業。激ムズ問題に取り組むのではなく、成功体験を得ながら英語を構造的に学んでいったんだと思います。
人によっては高2の夏から中学英語の復習では遅いと言われるかもしれませんが、“基本の基”からやり直した経験を持つ身としては、さやかの学習法は正攻法に思えました。
歴史を漫画「日本の歴史」で学んでいくのも同じです。私も小中学生の時は漫画で日本史を覚えていきました。
逆に漫画を読んだことのない世界史や現代社会は教科書や資料集を読んでもさっぱりで、5段階評価の1を叩き出していました。笑
さやかは「先生に褒められるのが快感になって」と、学習意欲を高めていきます。できなかったことができるようになる喜びを覚えていきます。
手応えと壁
そんなさやかちゃんは高2の秋頃でしょうか。全国模試に臨むと、英語では偏差値70を記録します。
一方で第一志望の慶應への参考判定はE判定。一番低い判定となってしまい、落ち込みました。
- A判定:合格可能性80%以上
- B判定:合格可能性65%
- C判定:合格可能性50%
- D判定:合格可能性35%
- E判定:合格可能性20%以下
- G判定:科目の不足
- H判定:範囲の不足
受験をする上で模試は通らないといけないわけですが、E判定を突きつけられるのはマジで落ち込みます。私も結局第一志望の大学への判定はC判定を一回取っただけで、あとはEかDでした。
もちろん入試過去問(赤本)を解くことも大事なんですが、本番さながらの環境で行われる模試で結果を出せなければ自分は合格などできないのではないか。所詮は模擬とわかっていてもつらいものです。特に「E判定」の時は。もう下がないわけですからね。
さやかは慶應E判定の結果を受けて、もう無理だと心が折れそうになっていました。この映画においては一番の挫折です。
何がきついって、通用しないってわかっている「負け戦」に挑むことがきついんですよ。E判定には、あなたは合格する見込みないですよ、無理ですよ、くらいに突き放す残酷さがあります。今回はたまたま運が悪かった、と楽観的に捉えることのできない無力感が。
それでもさやかは諦めることをしませんでした。というか、坪田先生が諦めることを許しませんでした。
私も予備校時代、講義で間違えた時に先生から「こんなのも間違えてるようじゃ到底無理」と言われました。志望校を変えた方がいいとも言われました。50人くらいが受けている中での屈辱です。
でも、前述したチューター(指導員)は、志望のランクを下げることをさせませんでした。当時は進学実績が欲しいからっしょと思ってましたが、実際に合格した後は、E判定を受けながらも合格した人を過去にもたくさん見てきたんだろうなと実感しました。
あのチューターのことを思い出すと、坪田先生のポジティブな寄り添い方は、やっぱり受験を勝ち抜く上で必要なんだなと思い知らされます。
もちろん受験だけじゃなくて、順調に山を登っていく途中で突如どん底に突き落とされたり現実を見せられることは多々ありますよね。そのどん底っていうのは努力してきたからこそ見えるものでもあるんですが、その失意とどう向き合うか、どう乗り越えるかというのを実践的に描いているのが『ビリギャル』だと思います。
ちなみに一番好きな言葉は坪田先生が受験直前にさやかに言った、「プレッシャーがあるってことは、受かる自信があるってことだ」です。いいね1万回押したい。
これはこの先プレッシャーに押しつぶされそうになった時に、自分に言い聞かせることができる名言だと思いました。泣きましたわ。
休息と受験当日
祝日の昨日も絶賛ビリギャル撮影中!今回も実際の学校をお借りしての撮影。受験票やマークシートが配られて本物の試験会場のようでした。宣伝i pic.twitter.com/G4Dpoik29i
— 映画『ビリギャル』 (@birigal_movie) February 12, 2015
『ビリギャル』で面白かったのが、「担任公認」でさやかが高校の授業中に睡眠をとっていることです。居眠りというか睡眠時間です。
塾で勉強し、家に帰ってからも深夜勉強しているさやかには、睡眠時間がありません。だから、受験に関係ない勉強をしている高校の授業中というのが体を休める重要な休息の時間になるわけです。
授業中に睡眠をとるのは部活に忙しい子やバイトに励んでいて疲れている子たちも同様なわけですが、さやかの場合は母・あーちゃんが担任に直談判して娘の特例居眠りの許可をとっています。
「あの子はいつ寝ればいいんですか!?」
「学校しか寝る場所がないんです!」
担任の西村先生(安田顕)も呆れた笑いをこぼしていましたが、笑うしかないですよあれは。よく許可したな西村。笑
そのほかにも受験当日のあるあるとして、雪が降っていたり、坪田先生からもらった合格祈願の缶コーヒーを飲んでお腹を下したりというエピソードも懐かしさ満点でした。
私が受験した年もそうでしたが、なぜかセンター試験の日は雪が降ることが多いんですよね。さやかの場合は「近畿学院大学(関西学院の模倣と思われます)」受験日が大雪。クソ親父が唯一娘の役に立つことができましたね。笑
また、缶コーヒーイッキとか慣れないことして体調を崩すこともめっちゃ落とし穴。
私も最初に併願校として受けた私大の試験日朝にカツ丼を食べたんですが、お腹を下して受験の最中にトイレに何度も行くはめになりました。結局落ちました。笑
さやかが慶應文学部の試験を受けた講堂も空調があまり効かないで寒そうでした。受験会場がどういう教室で行われるのかも運の一つって予備校で聞きましたが、あの講堂はお腹が冷えてもおかしくなさそうに見えます。
ちなみに今思い返すと、受験に来ていくカーディガンとか試験で使うシャーペンとか消しゴムとか、暗記に使うペンの色とか、全部決めたものを使うルーティーン・願掛けみたいなものを徹底していたんですけど、そういうのってさやかちゃんにもあったんでしょうね。きっと。
有村架純と野村周平
最後に『ビリギャル』を楽しませてくれたお二方への感想です。さやか役の有村架純さんと、玲司役の野村周平さんです。
ウッスが可愛い有村架純
映画『ビリギャル』優秀主演女優賞・新人俳優賞を有村架純さん、優秀助演男優賞を伊藤淳史さん、優秀助演女優賞を吉田羊さんが受賞されました!おめでとうございます!⇒39回日本アカデミー賞 https://t.co/Yrza3tRIXd pic.twitter.com/Ly2jICW4QD
— 映画『ビリギャル』 (@birigal_movie) January 18, 2016
まずは主人公・さやかの有村架純さんです。
まず!
金髪ギャルのさやかちゃんが!
可愛い!
これに尽きます。『花束みたいな恋をした』の絹ちゃんも相当でしたが、ギャル役の有村架純さんマジ天使。ガン見しすぎじゃね?って言われてもガン見しないのが無理というものです。
名古屋を舞台にしている作品の特性上、コテコテの(あんなの使うか?)名古屋弁話者の親父など方言がそこかしこに出てくる中、さやかちゃんの場合は言葉の悪い女子高生といった向きが強い。「〜っしょ」が多くて神奈川とか北海道っぽさを醸し出します。
ああいう口の悪い人っていうのは好き嫌いが分かれると思うんですけど、個人的にはめっちゃ親近感を感じました。高校の同級生とかああいう人多かったですよ。
「〜じゃね?」「ハァ?」
見方によっては悪ぶってるという印象を拭えない演者さんも多いと思いますが、うちら無敵じゃね?を地でいくふてぶてしさが最高です。あれは教師からしたらクズ扱いしたくなるのもわかる気がします。生意気ですもん。笑
基本的にはヘラヘラしていた中で、ガチトーンで放ったのがこちらの一言。
「マジ死ねばって思うもんね」
これは亭主関白のクソ親父に向けた序盤のセリフですが、破壊力やばすぎんですよこれは。お母さん聞いたら泣くよ。まあ息子以外の家族を全く顧みない親父のクソ偏愛ぶりは、確かにそう言われてもやむを得ない感もありますが。それにしても痛烈でした。
こうやって乱暴な言葉を使う子って、周囲から見放されて自己肯定できない自分を守る鎧みたいな感じで使っている向きもあると思うんですよね。さやかの場合はそれが父親と学校です。
なお坪田先生とのやりとりで使うさやかちゃんの「ウッス(押忍)」はあまりにも秀逸。「キッズ・ウォー」シリーズの茜(井上真央)を彷彿とさせる力強いウッスでした!
モブ化が可愛い野村周平
名古屋大学を目指す玲司を担当した野村周平さんの熱演も見逃せません。もっと言えば、製作陣の玲司くんの使い方に舌を巻きました。
さやかが金髪・ギャルファッションで入塾した一方、玲司くんも派手な金髪に黄色いTシャツというオラオラな感じで塾に現れます。
母親に連れられてきた初日は塾の入り口で大暴れ。「何あれ?(笑)」と好奇心を隠さないさやかちゃん同様、私も玲司くんは動物園の檻に入れられるケダモノのように映りました。
そんな粗暴な少年が坪田マジックにかかり勉強にやる気を出すと、今度はさやかに対して淡い恋心を秘めていきました。
それを隠せずに「お前が頑張ってるから俺も頑張れる、ありがとな」と口に出す玲司くん。
と思いきや、さやかは「玲司クン。そういうのキモいからやめてくんね?」と一蹴しました。それを聞いた玲司の表情よ。
このあたりから玲司くんの立ち位置がどうも雑になっていきます。笑
玲司くんはさやかが問題を解いたり、大学に合格したりして坪田先生とハイタッチ、時に抱擁を交わす中でも、蚊帳の外に位置します。自分はハイタッチをする準備も、抱きしめる準備もできているのにも関わらず、です。
玲司くんはギャルを一旦休止して断髪したさやかを真似て、黒染めしてオールバック&メガネに“あえてダサく”マイナーチェンジします。「気になる子が…」云々とさやかへの恋心を匂わせて。でもそんな彼の大変身も「今の方がいいよ。前のはダサかったもん」と一笑に付されてしまいます。
玲司くんは坪田先生の机から見て一番左手前の席に座っています。右手前がさやかちゃんです。
なのでさやかが先生の教卓でマンツーマン指導されている際、彼女の表情を映す時は画面左側に玲司くんが見えていることになるんですが、そのフレームの端っこに映る玲司くんは疑いようのないモブです。サッカー大好き少年や漫画大好き少女と変わりません。
画面の端っこでぼんやりと頷いたり、笑ったりしている玲司くん。それはあくまでも他の生徒と同じ背景でしかないんですよ…。
ここまで玲司くんを軽量化して描いたことには、作品をコミカルにする意味もあったでしょうし、受験において色恋を介入させないっていう向きもあったと思います。実際受験期に新しい恋を始めるとか、なかなか難しいです。
ただそんな風に便利に(雑に)扱われながらも、観ているこちらが気になってしまうような玲司くんを演じた野村さんは上手だなと思いました。『ちはやふる』の太一とはまた違った魅力を醸し出してくれました。
自分自身の大学受験当時を思い出すと、『ビリギャル』で描かれている勉強量や考え方は決して誇張したものではなく、受験への正攻法でした。
「奇跡」という表現に横槍もあるみたいですが、何もできなかった高校生が何か(大学合格)を成し得るっていうことは、他人からの評価はどうであれ、本人の自信に繋がれば奇跡みたいな成功体験と言っていいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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