先日、下高井戸シネマにて大根仁監督の『恋の渦』という作品を鑑賞しました。
大根監督といえば『モテキ』のスマッシュヒットが印象的ですが、
昨年末に観た『かしこい狗は、吠えずに笑う』で流れた予告編に「ゲスで、エロくて、DQN」とのコピーに、撮影期間わずか4日、超低予算作品が異例のロングラン!と出ていたので、一月公開を楽しみにして友達と行ってきました。
『恋の渦』のスタッフ、キャスト
監督:大根仁
原作・脚本:三浦大輔
コウジ:新倉健太
トモコ:若井尚子
カオリ:柴田千紘
ユウタ:松澤匠
ユウコ:後藤ユウミ
ナオキ:上田祐揮
サトミ:國武綾
タカシ:澤村大輔
オサム:圓谷健太
男:松下貞治
キャストは全員ワークショップで選ばれたということも話題になりましたが、総勢10名です。
この10人で映画が完結します。
あらすじ紹介
とある“部屋コン”に集合した男女9人。やって来た1人の女の子のビジュアルに男たちは全員がっかりする。何とか場を盛り上げようと頑張るも全くうまくいかず、微妙な空気を引きずったままコンパは終了した。しかしその夜から、恋心と下心、本音とうそが入り乱れる恋愛模様が展開していき……。
はいはい、DQN映画でしょう?!
連日ほぼ満員らしく、17時から整理券を配布。18時近くに行ったけど既に20番台後半でした。
正直、予告編を観た印象はDQN(というよりヤンキーか?)が部屋で合コンして、男女がそのあとヤリまくって、って感じだったんだけども
Twitterを観るとどうも悪い評判を全く聞かない!
どうしたものだろう。
観てわかりました。
こ れ は………
面白い。とても面白い。すっっっごく面白い。
マジで友達におすすめできる、というか、むしろ色々な人を巻き込んであーだこーだと感想を論じたい。
この昂揚感、満足感を誰かにも教えてあげたい。
なんだこれ。
絶妙なあるある感を体感しよう
フライヤーにはこう書いてあります。
チャラ男とギャルたちの軽薄で些細な恋愛模様。浮気、別れ、裏切り…。
本来ならまったく感情移入できない、傍観・冷笑するしかないどうでもいい世界に、次第に「これ思い当たる」「こういうのあるある」と感情が動き出し、いつの間にか観客自分自身の物語になっていってしまう。
さらに観終わった後には、無性に誰かとこの映画について語り合いたくなる。
まさにこれ。
生活感とか、自分に引き寄せて観ることのできる距離感とか。
それはいわゆる観客にとっての「あるある感」であって、この『恋の渦』はさじ加減が絶妙でした。
本日発売のメンズナックルになんと「恋の渦」のメンズたちが登場してます!大根監督のインタビューも見れますよ!そう、「恋の渦」の男の子たちの衣装はすべてメンナクを参考にしたんです!あのメンナクにみんなで出るなんて!ありがとうございます! pic.twitter.com/3c8kr0410R
— シネマ☆インパクト (@cinema_impact) June 24, 2013
冒頭の部屋コンの段階では確かに、ヒョウ柄着てるし、変なベルトしてるしこいつら本当にDQN(色々と存在がイタい)だな、どうせこの後やるんだろお前ら、と思ってました。そこにあるのは圧倒的な嫌悪感です。
うるせえし、誰が誰かわからないし、下品だし。
ところが、です。
抱いていたはずの強烈な嫌悪はどこかに消えていきます。あっさりと消えていきます。
随所に散りばめられた笑いとともにそれぞれのキャラクターにすんなりと引き込まれ、僕は男なので男のキャラクターに感情移入。
コウジ(新倉健太さん)の理不尽な恫喝に恥ずかしさを感じ
ナオキ(上田祐揮さん)の二枚舌におののき
ユウタ(松澤匠さん)の意外な甘えん坊ぶりに自分を重ねて赤面し
タカシ(澤村大輔さん)のうざさにまた自分を重ね
オサム(圓谷健太さん)の自分勝手な男性本位にも少し気持ちがわかる自分がいてまた恥ずかしくなる。
上映後にキャストの皆さんとダイノジの大谷さんによるトークショーがあって、
大谷さんは「非日常を少しだけ混ぜることによって構成される、あるある感」みたいなことをおっしゃっていて、なるほどなと感心しました。
その非日常が何なのかはネタバレになるでしょうし、観た人によって違うだろうから触れないけど、傍観と主観の境界線がすごーく緩い作品だと思います。
何と愛すべきDQNたちよ!
あと今回僕がキャラ設定に引き込まれた要因の一つに彼らの登場の仕方がありました。
男女9人が全員揃うのは冒頭の部屋コンをやっているわずか数分間で、その後は電話を主にしてやりとり。
知っている俳優さんじゃないので、その中の会話を通して、ナオキって、ユウタって、あっ、なるほどこいつとこいつがこういう関係か、とかっていうのを主体的に探らざるをえませんでした。
電話や他人との会話で名前を出すことによって、僕は脳内でその人物の一致作業を行うので登場人物の距離感とかも重要だったかなと。
ま、これは僕の頭が悪いだけかもしれませんが。
コウジの部屋はともかくとして、ユウタとタカシの部屋やオサムの部屋はほとんど一つの角度からしかとっていません。それでも冗長感ゼロ。
沈黙も冗長感ゼロ。
そこに、僕らにとって90パーセントくらいの既視感で構成されたリアルがあるから。
シネマインパクト事務所に立ち寄ってくれた『恋の渦』のカオリ。何気にチュッパチャップス舐め始めてウケました!そのままやないか笑 pic.twitter.com/EY6bzWS2WP
— シネマ☆インパクト (@cinema_impact) November 28, 2013
ただのエロ映画でも、ただのDQN映画でも、ただのあるある映画でもない、色々なものが複雑に混じり合って構成された、ほんのちょびっとだけ異世界の作品。
本当に!本当に!おすすめします!!
エロいの嫌いでも、DQNが嫌いでも、ヒョウ柄が嫌いでも、いや、逆にそういう人にも見てもらいたい。
何と愛すべきDQNたちよ!
トークショーが終わって23時くらいだったんだけど、同行の友達と2時くらいまで感想を言い合ってました。お酒入っててあんまり覚えてないけど。
一人で観ても面白いし、誰かと観に行ったらきっともっと面白い。
でも恋人はおすすめしません。何か変な所がリアルだから。
最高でした。
この映画が好きな人とは、きっとすぐに仲良くなれると思います。