映画『きらきらひかる』〜90年代前半の恋愛模様〜

タイトル画像
※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

92年の映画『きらきらひかる』を鑑賞しました。薬師丸ひろ子、豊川悦司、筒井道隆が出演。監督は松岡錠司。

江國香織の原作小説は未読。

アルコール依存症の笑子(薬師丸)と、同性愛者の睦月(豊川)、睦月のパートナーの紺(筒井)の三角関係を描いた作品。

時代が時代なのだけども、トヨエツは凄く若くてバブル期の男性とはこうだったのだなとうかがい知れる。

現在の骨太な感じは一切なく、すらっとした色白の優男という感覚だった。



同性愛をふんわりと

同性愛というアンタッチャブルな領域に踏み込んだ映画だが、どこかふんわりとしているのは江國作品の宿命か。
愛情表現を見せない夫に対しても気丈にふるまう薬師丸ひろ子の演技は健気だった。

フジテレビジョン制作だからか、ドラマのようなシーンの回し方も印象的。
筒井道隆も加わって三人で織り成す短い時間の共同生活は奇妙なバランスで、それでいて時に笑いをもたらしてくれた。
紺が笑子にオレンジの種類をとうとうと語ったり妙に具体的な描写をするシーンがあったけど、あれは恐らく江國さんの原作にそういうシーンがあるのだろう。
小説では全体を覆う緩やかな江國ワールドがあるので生きてくるのだけど、映画だと少し唐突に感じた。
江國さんの描く、日常の些事に色彩をもたらすやり方は映像化するときっと難しい。

シャツインのファッションやファミレス、井の頭線、タクシー料金、空き地に張り巡らされた金網に掛かった看板に至るまで、まぁ当然なんだけど今から22年前であることを再確認できる。

そう考えるとトヨエツは僕の父親によく似ていた。

江國さんはどのように原作を文字で表現したのか非常に気になる。
情報が簡単に抜けてしまう現代では、このようなテーマで描こうとしても、もっと修羅場化してしまうんだろうな。