突然の訃報
俳優の大杉漣さんが急性心不全で21日に急逝されました。66歳でした。
2018年2月現在も多くの番組に出演しており、テレビ東京のドラマ「バイプレイヤーズ」にも出演中の訃報。
出身の徳島県をホームタウンに持つ徳島ヴォルティスをはじめとしてサッカーが好きで、その意味でも個人的にショックのとても大きなニュースでした。
90年代から本格的に邦画の役者として活躍してきた大杉さんは、いろんな表情を持つ俳優でした。
優しい笑顔だったり、無愛想だったり、無表情だったり、狡猾だったり。
近年は「お父さん」役が多かったと思いますが、その演じ分けも作品によって全く違いました。早すぎる別れは悲しく、寂しいですが、いくつかの出演作品を通じて想いを馳せたいと思います。
『アウトレイジ』
昨年公開された「アウトレイジ 最終章」が映画作品の最後の出演になってしまいました。
1993年の『ソナチネ』に始まり、北野作品で欠かせぬ存在感を発揮してきた大杉さんはこの作品で敵役に回り、主演級のパフォーマンス。もっともっと、観ていたかったと改めて思える映画でした。
『ポストマン・ブルース』
SABU監督が監督を務めた『弾丸ランナー』に続く第2弾。『弾丸ランナー』にも大杉さんは出演していましたが、本作ではよりキーパーソンとしなる「殺し屋ジョー」なる役柄を演じています。
97年の映画なのでやはりめちゃめちゃ若さを感じますし、ストーリーの構成も小気味良くて素晴らしい作品。
若かりし主演の堤真一や寺島進と合わせて、是非ともご覧になっていただきたい映画ですね。
『弾丸ランナー』『UNLUCKY MONKEY』にも出演されていました。
『おにいちゃんのハナビ』
北野武監督の『HANA-BI』では助演男優賞など脚光を浴びた大杉さんですが、こちらは新潟の片貝という町の花火大会にまつわる実話をもとにした作品。
高良健吾と谷村美月の兄妹が軸になるなか、大杉さんは宮崎美子と一緒に2人の両親役として出演しています。
『おにいちゃんのハナビ』は、決して軽くないテーマを良くも悪くも真っ直ぐに突っ走った映画。その一直線を盛り上げたのが大杉さんたちの夫妻でした。熱量たっぷり。愛情たっぷり。感情が前面に出たお父さんの漣さん。家族の強さと大切さをダイレクトに伝えてくれる映画でした。
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『箱入り息子の恋』
2013年の映画。星野源演じる35歳の男が、目の不自由な女性(夏帆)に恋をするという物語です。大杉さんは夏帆の父親役を演じています。
大杉さん演じる父親は、目の見えない娘を愛するあまりに過保護になってしまいます。作り手が一つのテーマにしていた、障がいを持つ人の家族からの逆差別を我々に提示してくれました。
正直、良い人の役ではないものの、僕たちがどのようにして他者と関わるべきかを考えさせてくれる演技でした。
人を信じることの勇気とはどれほどのものなのか。それをこの作品の大杉さんから僕は学んだような気がします。
『ツレがうつになりまして』
宮崎あおいと堺雅人が夫婦を演じた2011年の映画。大杉さんは余貴美子とともに、宮崎あおい(ハルコ)の両親役を演じています。
理髪店で現役理容師として働く父親の大杉さんは、離れた場所で暮らす娘に対して言葉は少ないながら愛情がにじみ出る演技を披露しています。
東京で漫画家として頑張るハルコの漫画を毎号買って、アンケートハガキに感想を書いて送るお父さん。奥さん(余貴美子)にもっと若い子が書かないとダメよとたしなめられ、「今風に丸文字で書いた方が良かったかな」と本気でつぶやくお父さん。
朴訥とした大杉さんの魅力が短いシーンながらも伝わってきます。こちらは頑固親父というよりも少し柔軟なお父さん。
この他にも数えきれない作品に出演し、ドラマやバラエティーでもまさにバイプレイヤーとして活躍された大杉さん。訃報から2日が経ちましたが、まだ実感として受け入れることができません。
これからも役者道とサッカー界を見守ってくれると信じて、お悔やみ申し上げるとともに、ご冥福をお祈りします。