映画『ソロモンの偽証 前篇・後篇』〜藤野涼子の笑顔の意味〜

15年の成島出監督作品、『ソロモンの偽証』を一気に観ました。

前篇が2時間1分、後篇は2時間26分。
原作は宮部みゆきの同名小説。

誰かが嘘をついている

前篇と後篇を続けざまに、4時間半をぶっ続けで鑑賞した。
前篇の振り返りをあまりやらなかったので結果的に観方としては良かったと思う。

前篇は「事件」というサブタイトルが付いていたが、冒頭から事件が起こる。
湊かなえさんの作品などにもありがちな展開だが、事件が起きました、死んだ人間と容疑者の人間と周りの人間と、過去を整理しながら考えていきましょうという形。後篇は「裁判」というサブタイトルだ。

過去を描写しながら進んでいく様は『白ゆき姫殺人事件』に似ている。

提示されたシチュエーションには嘘があり、それを証言から暴いていくのも、また疑われた人間がバッシングを受けるのも『白ゆき姫殺人事件』によく似ていた。

ただしトリックによってこちらの予想を綺麗に裏切ることはない。
ミステリーとしては一段落ちるかなという印象だった。

藤野涼子の衝撃

設定は1990年、91年の江東区にある中学校。
セピアをかけた撮り方としてはしょうがないのかもしれないが、少し画面が暗い。

生徒のセリフも大人が考える紋切り型のものだったし教員も高木先生(安藤玉恵)のそれはかなり学芸会染みたものだった。

多感な14歳は毎日顔を突き合わせているクラスメートを「○○さん/くん」で呼ぶものだろうか。野次馬のマスコミに容疑者のことをべらべらしゃべる割に、あんなにハキハキと挨拶したり校歌を真面目に歌ったりするだろうか。
江東区立第三中学校の世界観は僕が通っていた中学校と明らかに違う。

干支が一回り違うからといってしまえばそれまでかもしれないけれど。

しかし、そのよそよそしい設定を忘れるほどに良かったのが中学生を演じた俳優陣。
主演の藤野涼子はこの作品が実質のデビュー作品で、役名がそのまま芸名になった。2000年の早生まれなので14年の撮影時はちょうど中3である。ジャスト。

演技経験の乏しさを感じさせない凛とした態度と少し下がり気味の眉が、当時の優等生キャラクターを身近なものにしてくれた。

彼女はあまり、というかほとんど学校のシーンで笑わない。

ラストシーンに賛否は分かれるかもしれないが、僕は藤野涼子が笑顔を見せたことに意味があると思う。

リアルな中学生は演者の力

藤野の周りの生徒も演技経験の有無を問わずオーディションで選ばれたそうだが、実年齢が中学生とマッチングしている。

神原和彦を演じたのは撮影当時、中2の板垣瑞生
疑いをかけられている大出俊次の清水尋也は当時中3。ヤンキー風情もあり大人びていたのでびっくり。

悲劇の浅井松子は富田望生。彼女も当時中3。
柏木卓也の望月歩、涼子の親友役・倉田まり子を演じた西畑澪花はともに当時中2。
疑惑の三宅樹理にはE-girlsの石井杏奈、涼子とともに柏木の死体を発見した野田健一の前田航基はいずれも当時16歳だが十分に許容範囲である。

個人的に好きなキャラクターは、学校内裁判で判事を務めたクラス1の秀才くん・井上康夫。
彼を演じた西村成忠は98年生まれとあるので撮影当時16歳(※)。

基本的に彼も表情を変えないが、委員会の準備段階から自分を判事と呼べだとか、判事を引き受けるときのプライドのにじませ方だとか、とっても青くてよろしい。

後ろの髪の毛がぴょこんと跳ねてたり、裁判中の「静かにしてくださいッ」「静粛にッ」と叫ぶときに微妙に声が通っていないのも可愛い。

触れておきたい塚地の凄さ

余貴美子が語るように、学校内裁判は伝説と呼ばれておかしくないレベルのものだった。
真面目な中学生たちが犯人探しではなく真実を知るために準備から審理まで自分たちでやり通し、尋問をかけていく。

真の意味での悪役がいなかったのも好印象だった。

また、保護者役として塚地武雅の熱演と前時代的な永作博美の儚い美しさには触れておこうと思う。塚地の演技力はやっぱり凄い。佐々木蔵之介も夏川結衣も永作も完全に食われていた。

前後篇の映画というよりは連続ドラマを見ている感覚。

主役となる中学生たちをしっかりとフィーチャーしたのが良かった。

ミステリーとしては疑問が残るものの、青い生徒たちが素敵でした。

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