映画『君が落とした青空』ネタバレ感想|キラキラ傑作へのリスペクト

タイトル画像

こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2022年公開の映画『君が落とした青空』をご紹介します。

櫻いいよさんの同名小説を映画化。主演は福本莉子さん松田元太さん。福本さんは2022年からTOHOシネマズの幕間映像「シネマチャンネル」のナビゲーターを務めています。

高校生の恋愛を描き、タイトルからも想起できるように定番の青春作品でした。
こういう映画は得てしてキラキラ映画とカテゴライズされ、時には揶揄されることもあるわけですが、『君が落とした青空』はまごうことなきキラキラ映画でした。

その一方でツッコミどころが色々あって面白かったです。
感動とか切なさよりも一番に来るのは笑いです。面白かったです。笑

過去の作品を想像させ、あるいは直接的に引用する潔さも印象的でした。笑

この記事ではそんな『君が落とした青空』の感想を書いていきたいと思います。



あらすじ紹介

交際してから2年になる、高校生の実結(福本莉子)と修弥(松田元太)。何があっても毎月1日は必ず一緒に映画を観に行くことを約束にしていた彼らは、その日も映画館に向かう予定だったが、修弥は急用があるとキャンセルする。実結は不安めいたものを感じ、「もう一度話したい」という修弥からの連絡を受けて会うことにするが、彼女の目の前で修弥が交通事故に遭う。混乱する実結だったが、目を覚ますと事故当日に戻っていた。実結はタイムリープを利用し、事故を回避しようとする。

出典:シネマトゥデイ

スタッフ、キャスト

監督 Yuki Saito
原作 櫻いいよ
脚本 鹿目けい子
水野実結 福本莉子
篠原修弥 松田元太
本山佑人 板垣瑞生
西村トモカ 横田真悠
丸井佐喜子 莉子

佐喜子(莉子)は主人公の親友、佑人(板垣瑞生)は、気の置けない男友達という位置づけです。よくあるパターンです。笑

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

 

傘の画像

(出典:Pixabay)

主人公の実結(福本莉子)修弥(松田元太)が初めて出会ったのは、高校受験の日。
試験を終えて外へ出ると雨が降りつける中で(空明るかったですけどねw)、修弥は実結に傘を貸してくれました。

当時のことを実結は、「あの瞬間、私の心に青空があふれた」と表現しています。

そんな二人は1年生の冬に付き合うことになり、もうすぐ交際2年を迎える時期に。
毎月1日のファーストデーは必ず二人で映画を観に行くという記念日デートを行なっていました。

「2年も付き合ってるなんて、なかなかないよ」(佐喜子)
「映画観て感想言い合って、ただの映画鑑賞会だよ」(実結)

けれど修弥が匂わせる何か隠したような雰囲気に、実結は不安を感じていました。

物語の大部分となる「11月1日」は、そんな日のことでした。

キミスイの引用

1年生の冬・12月1日に二人が付き合うきっかけとなったのは、観たいと思っていた映画が一致したことでした。

昼休み前の掃除中でしょうか。実結のことが気になっていた修弥は、彼女の観たい映画を訊き、お互い言おうよと提案します。

「せーの、キミスイ!!」

!!!?

何という偶然、何という運命。
ってかそれ以前に『君の膵臓をたべたい』(実写)を直接引用する潔さよ。いいのか?確かキミスイは夏の公開だったはずですが、そこは置いておきましょう。

彼らの2倍近く歳食った私もボロ泣きしたキミスイをチョイスした実結と修弥に感情移入が止まりません。いい映画ですよね。映画感想会にご一緒したい。

ここでキミスイを引き合いに出したことにより、この映画が(時にキラキラ映画とも言われる)青春映画を肯定していることがわかります。
映画好きが好むジャンルや深さは色々ありますが、高校生を描いた邦画の大衆向け作品を提示することで、実結と修弥がどのあたりの“映画好き”に位置しているかを示していると思うんですよね。

福本莉子さんが出演していた『思い、思われ、ふり、ふられ』の和臣(赤楚衛二)みたいなレベルの映画好きとは違います。

陽キャの象徴のような修弥は、他の生徒がいる前で実結に公開告白。強い。

付き合った二人は、先述したように、毎月1日のファーストデーには一緒に映画を観に行くことになります。1ヶ月記念、2ヶ月記念、半年記念…と二人の記念日でもありますよね。

月曜も火曜も水曜も木曜も金曜も土曜も日曜も、毎月二人は映画館へ通うわけですよ。凄いです。映画館行きましょうね、の圧が凄い。笑

付き合った日を起点に「1ヶ月記念」「2ヶ月記念」「半年記念」…と二人で記念日を祝うことはよくありますが、必ず一緒に過ごせるかといえば難しくて、メッセージ送ったりメールしたり電話したり手紙を書いたり、で代用してきた人も多いはずです。二人とも帰宅部じゃないと無理ですよね?

ぼく明日の引用

『君が落とした青空』の過去作引用はキミスイだけにとどまりません。

告白から1年と11ヶ月後、3年生の11月1日が物語の中心となる中、二人はお約束の映画デートで、ここでも青春作品を鑑賞しようとしています。

『明日から彼女との恋は雨模様』

これはwww

字面だけだと本作品『君が落とした青空』と同じような天気をモチーフにしたようなタイトルですが、この映画、ポスターが『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』にそっくりなんですよね…!笑
タイトルも5・7・5(字余り)で同じです。

監督のツイートにあるポスターの画像のとおり、ダブル主演の俳優名、監督名も『ぼく明日』の3人(福士蒼汰さん、小松菜奈さん、三木孝浩監督)に寄せています。笑
いやぁこれは笑いました。

「キミスイ」とか「ぼく明日」とか「きみあお」風に四文字略称でいうと「明日カノ」とかになるんですかね?

自分の嗜好で申し訳ないんですが、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は私にとってベストムービーとも言える作品です。観たことない人は観てほしいマジで。実結ちゃんの株ダダ上がりです。

実際この「キミスイ」「ぼく明日」の2作品の引用にあたって、確かスペシャルサンクスという表現だったと思うんですけど、月川翔監督と三木孝浩監督の名前がクレジットされていました。

ちなみに『明日から彼女との恋は雨模様』を二人が観ようとしていた映画館はイオンシネマを模した「AOI CINEMA」で、ロケ地はイオンシネマ多摩センターがクレジットされていました。
一方で最後に実結の部屋に飾ってあった映画の半券は、TOHOシネマズのものでした。福本さんがTOHO幕間ナビゲーターを務めているだけに色々な事情を感じますね…笑

orangeの想起

『キミスイ』と『ぼく明日』が直接的に引用された一方で、『君が落とした青空』のストーリー面を追っていくと、別の作品を思い出しました。

『orange オレンジ』(2015年公開)です。

これも素晴らしい作品なので未見の方はぜひ…!

『きみあお』は11月1日、修弥に訪れてしまう未来を回避しようと、実結がタイムリープによって“同じ日”を繰り返す物語ですよね。

実結だけが未来を知っている状況で、何度も彼女は11月1日をやり直します。全ては修弥を救うため、彼が事故に遭わないようにするためです。

修弥の事故が実結と私たち観客に提示されることで、あらかじめ“ハッピーな終わり方”(=修弥が事故に遭わない未来)は確定しています。
そのゴールに向かって、実結は自分だけが知っている未来を変えられるのか、それとも運命に抗うことはできないのか、それを探っていく作業になります。このあたりは『orange』とよく似ています。『僕だけがいない街』とも近いですね。

『orange』と比べて『きみあお』が特徴的なのは同じ一日を何度もやり直すところですよね。
同じ11月1日の朝の食卓、通学路、英語テスト、放課後を繰り返していくため(全部で4回だったかな?)、当然マンネリ感は出てくる中で、さすがに繰り返しの3回目くらいからはスピーディーに進行していきます。

例えばゲームをやっていて、ステージがクリアできずにゲームオーバーになった時、初めからリセットされますよね。で、次はクリアできなかった局面を学習して、クリアしていくわけです。
この映画の実結には何度もリセットを押す機会、コンティニューする権利が与えられています。

一つ一つ、「前回はこれでダメだったからこう!」と挑戦していく彼女とともに焼き直しの11月1日を観ていく映画でしたが、それでもやっぱり結末で修弥の身に起こることは防げませんでした。未来の運命は確定されていました。残酷なくらいに。

キラキラ映画の楽しみ方

キラキラ映画の魅力ってなんだろうと考えたとき、キュンとするような恋だったり、充実した学園生活だったり、ハッピーエンドだったり色々な要素があるはずです。
それの多くは観る人たちが経験する実生活からは少し離れた眩しい世界のもので、非日常の輝きを与えてくれます。

と同時に、いやいや現実じゃこんなのありえないよね(笑)と、突っ込みを入れながら鑑賞するのも魅力だと思うんですよね。
あるいはキラキラ系映画のテンプレートみたいな設定・展開に突っ込みを入れたり。

その意味で『君が落とした青空』はお約束を外すことのない、ど真ん中のキラキラ映画だったと思います。
観ていて楽しかったです。笑

キラキラ系親友

例えば青春映画に欠かすことのできない親友の存在ですね。

主人公の実結(福本莉子)には佐喜子(莉子)という親友がいて、また佑人(板垣瑞生)という男友達がいます。
佑人は修弥(松田元太)とも仲が良く、二人の関係を案じつつ、実結が辛そうな表情を見せると彼女に寄り添おうとします。その奥にはもちろん美優に対しての好意があります。

『orange』の須和と近いものがありますね…笑

佐喜子は佐喜子で実結が悩みを打ち明けられる唯一の存在であり、こちらも献身的に寄り添ってくれます。登場してから数シーンでこの人良い人確定演出がなされます。実結が何度も11月1日のミッションに挑戦していく中で、攻略のとっかかりとなるヒントを与えてくれるのも佐喜子でした。

恋に悩む主人公。それを支える同性の友人と異性の友人。王道のテンプレですよね。
佐喜子と佑人が裏切るなんて可能性は微塵も感じません。超良いやつポジションであることが約束されています。だから安心して私たちは実結と修弥の二人にフォーカスしてストーリーに没頭できます。笑

裏切らないといえば、佑人のキャラクター描写にも「王道」っぽさは出ていて、制服の下にイエローの派手なパーカーを挟み足元はNIKEのバッシュ(ダンクだったかな?)。追試の常連という勉強の出来なさを匂わす一方で、昼食は購買でパンとコーヒー牛乳という、いかにもなお調子者系男子です。

購買で買い食いしている男子ってかっこいいですよね。自分は弁当持参だったので…

制服の下にパーカーを着る男子=ヤンチャっぽさがあってカッコいい、という風潮は多分『ごくせん』シリーズからだと思うんですけど、『きみあお』はそこを絶対に外しませんでした。

キラキラ系彼氏とライバル

キラキラ感で言えば、高校生とは思えないほどにメイクをバチバチに決めてくる恋敵・トモカ(横田真悠)も言及しないわけにはいきません。校則あんのかなこの学校。

「私ならもっと大切にできる」とか言って修弥への想いと実結への対抗心を隠そうとしないこのトモカちゃん。可愛いんですが結構怖い。修弥に振られたあの後大丈夫だったのか心配してしまうレベルです。

彼女は自らのお誕生日会を(都会のおしゃれな)カフェで開くと言って修弥をインバイトします。私の高校時代、カースト上層の女子生徒はフリータイムのカラオケにお菓子を持ち寄り誕生日会を開いていたらしいですが、レベルが違いますね。可能にするだけの財力もバイトで蓄えています。

ってか「私の誕生パーティーやるから来て!」ってなかなか誘えなくないですか?

中心に座るトモカちゃんの両横には男子生徒。強い。笑

そんなトモカちゃん生誕祭が行われているカフェを、すなわち、約束をドタキャンした修弥の行き先であるカフェを実結は突き止めて、外からうかがいます。どうやって分かったんでしょうね。名探偵水野実結の爆誕です。

一方で実結の存在に店内のトモカは気づき、「今日は修弥は私のもの」とばかりに好戦的な態度で、お店の外に隠れる実結のもとへ向かいました。こちらも凄い嗅覚。凄い自信。笑

圧倒的センターポジションのトモカちゃんにロックオンされた修弥。彼も彼でキザっぽいというか高い立ち位置をとっている描写がいくつかありました。
廊下で窓のレールに手をもたれ掛け、実結の頭をポンポンなんてなかなか誰にでもできることではありません。それをしても許される存在なんですよね。修弥は。

ただしカッコつけで実結との約束も理由を言わずにドタキャンしたりと、疑問符がつくような振る舞いだった修弥も、真意が明らかになっていくにつれて彼の真っ直ぐさや優しさが伝わってきました。

やっぱりちゃんと言葉に出して伝えないとダメなんですよね。

悲劇の王道

こういう恋愛系青春映画は前向きな結末が用意されていることがほとんどです。観客もそれを期待して観ている部分が当然あります。

ハッピーエンド(という言い方が相応しいかはわかりませんが)の完成に向けては障壁が必要で、それは恋敵の存在だったりすれ違いだったり、降りかかる不幸な出来事だったりします。

『君が落とした青空』で言えば、障壁の部分は修弥が事故に遭ってしまうという、実結だけが知っている未来についてのもので、この悲劇をどうにかして回避しましょうねというストーリーだったと思います。

けれどこの悲劇は、回避できない確定未来だったんですよね。
残酷な運命が再び実結と修弥を襲います。

これは意外でした。結局事故るんかい。

実結が何度も11月1日をやり直したにも関わらず、修弥の身に起こることは変えられませんでした。というか、実結が繰り返した11月1日は夢の中の出来事だったわけですよね。やり直したことに意味はあったのかとも思ってしまいます。

ただし実結が夢の中でやり直した11月1日に意味がなかったかと言えば多分違って、彼女は繰り返される日々の中で修弥を知り、自分のマインドを変えることに成功。
雨空のようにどんよりとした世界は、自分次第で晴れやかなものに変えられる。悲劇を回避させなかった一方、その上で実結と修弥の愛はより強固なものになる。相手を知るって、自分の心の持ち方って、大事ですねって話でした。多分ですけど。

で、このままだと単に実結が「世界を変えられる」っていう心構えに気づいただけのバッドエンドですよね。重体となった修弥は目を覚ます必要があります。
お望み通り修弥は復活してくるわけですけど、急にピンピンで出てきて草。全快になる前にも会うことできたでしょと思ったのは内緒です。笑

 

散々「笑」を使ってきたように『君が落とした青空』は楽しい作品でした。

主人公の二人は一生懸命に互いと向き合って「好き」を確認する映画だとは思うんですが、それ以上にツッコミどころがありすぎて面白かったです。「設定が荒唐無稽!」とかじゃなくて、「そう来たか(笑)」と突っ込みながら観れる映画でした。突っ込みを誘ってんじゃないかとすら思います。

個人的に大好きな青春映画を(直接的だったり間接的だったり)引き合いに出してくれたのは嬉しかったです。
『サマーフィルムにのって』(2021)とはまた違う、キラキラ映画への肯定を感じられました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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