映画『コンセント』〜心理学と人類学〜

2002年の映画『コンセント』を鑑賞しました。中原俊監督。原作は田口ランディ。主演には市川実和子を据えています。

フリーライターのユキ(市川実和子)は仕事仲間の木村(村上淳)とホテルを訪れている最中に、兄・タカ(木下ほうか)の死を知らされます。

定職にもつかず父親と折り合いの悪かった兄でしたが、最後は一人暮らしのアパートの自室で死んでいました。ユキが訪れた現場には床を人型に染め抜いた血だまりと、それに湧くウジ虫が大量に発生していました。

腐臭の中たたずむユキ。彼女はそこから死に関する匂いをかぎわけるようになります。

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そこにあるのは欲か、施しか

題名にもなっているコンセント。
英語に「concent」という言葉はなく、典型的な和製英語の一つです。「同意」という意味で同音の「consent」がありますが、この作品では単純にプラグを差し込む形の電源という意味で用いられています。

兄が死ぬ前にしきりに気にしていた単語として、ユキはその言葉を追い続けました。

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コンセントを抜く、差す(入れる)というのはスイッチを切る、入れるとほぼ同義です。

本作ではある種のトランス状態や幽体離脱状態のように自らの魂を抜き差しする特異なタイプの人間として描かれていました。

もちろん本当に身体にコンセントが繋がれているわけではなく、概念的なものです。

ユキから見た兄はそのコンセントの抜き差しで精神的な部分での自我が崩壊し、最終的には餓死に至ったとの見解でした。作中でも触れられていますが、特殊能力なんですよね。トランス状態に自らを持っていけるってことは。

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面白かったのが、ユキのコンセントは自我の忘却ではなく性の解放だったこと。
コンセントを挿れる。その言葉やニュアンスをストレートに性行為に転化しているあたり、この作品はやはりR-15だなと思いました。市川実和子も上半身を露わにして演じていましたし、描き方が容赦なかったです。

恋愛感情のない男に対しても股を開く女だとユキは自覚こそしていますが、貞操観念が色々独特です。友人とバーに行って、その友人の友人の男(小市慢太郎)とあっさり寝てしまう。性欲が特に旺盛という描き方もされていないだけに衝撃的でした。
そこに男があったから。そんな一言で済まされそうなあっさり感です。

中盤までは兄の幻影が付きまとうホラーの要素も強調されていて、観る人によっては結構辛い映画かもしれません。

回想シーンは全てユキが主眼となって描かれていました。物語を通じて精神の混乱と発狂と開放を見せた彼女だけに、回想の過去は事実なのか彼女の作り出した幻想なのかが僕にはよくわかりません。

律子を演じたつみきみほの棒演技や、市川実和子の独特の表情もまた、この映画のミステリアスさを補強していた気がします。個人的に律子というキャラクターは全く意味がわかりませんでした。

本作とは違い二重人格がテーマですが、北川景子と深田恭子が共演した『ルームメイト』も怖さという点では負けていません。こちらも興味のある方はどうぞ。

評価は★★★☆☆。

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